episode.0.2
「あったま……いてぇ……」
俺は自分の身体に痛みを感じ身体を起こす。
その場であぐらをかいて座り周りを見渡して見る。
自分の横にはデカい杭が転がっている。
何に使うんだこれ?
とにかく何もない場所で広がってるのはみじけぇ草ばっかり、近くにオンボロな車があるけど走れるのかあれ?
「ぬあっ!」
何か隣に銀髪の兄ちゃんが倒れとるやないかい。
「おい、死んでるのか? おい」
身体を揺らすとそいつが目を開けてこっちを睨みつけてるような目つきで見てくる。
「君、だれ?」
「いや、俺が聞きたいんだけども……ん?」
俺……誰だっけ?
「ちと待て……名前……思い出せねぇ」
自分の事なのに全く出てこねぇ。
記憶喪失ってやつか?
いや、でも自分以外の事は全部覚えてる。
「わりぃ、名前忘れてるわ」
「君もか。僕もだ」
「お前も?」
「すっぽり自分の事だけ忘れてる」
「俺もだよ。どうなってんだこりゃあ。何かポケットに入ってねぇかな?」
一つ一つポケットを探って見る。
「おっ、何か折った紙が入ってたぞ!」
「僕もだ」
開いてみると紙には文字が書かれている少し滲んで入るが読めないことはない。
『カルトー、記憶、聖なる杭にて、死徒、殺し、戻る。名はブーム以外の他人へ語るな』
「僕のは」
『ブームー、記憶、悪しき右掌にて、死徒、喰らい、戻る。名はカルト以外の他人へ語るな』
「この最初のが俺の名前か? カルトってか? なんか嫌な名前だな。杭は……これのことだよな?」
杭を手にとってみる。思ったより軽いなこれ。
クルクル回してから地面に置く。
こんなんで戦えんのか?
「ブーム……儲け物?」
「そっちの方が演技良さそうだな。そっちくれよ」
「嫌だよ。それにしても死徒を喰らいって一体……」
「俺も殺せとか物騒なこと書いてあるし」
二人共そのまま考え込み押し黙る。
先に口を開いたのはカルトだった。
「でもよ。俺達の目的は同じってわけだろ? じゃあ一緒にいたほうがよくねぇか?」
「……そうかもしれないね」
「ちと他のやつに名前言えないの不便だけどな」
「そうだね」
「あそこに車あるんだけどさぁ? あれお前の?」
「僕のでは……ないと思うな。車は嫌いな……ような気がする」
「何だそりゃあ?」
「運転はしたくないってこと」
「じゃあ俺はバリバリ運転したいからそこは大丈夫そうだな! じゃあこれからよろしくなブーム!」
「よろしくカルト」
俺が握手のために手を伸ばすと握り返されることはなく謎の時間が過ぎた。
「バディを組むときは最初握手だろ!」
「知らないの? 握手すると子供ができるんだよ?」
「マジかよっ! 妊婦やべぇな!」
「できないよ」
「できねぇのかよっ! 先に言えよ! 子供の名前考えただろうがっ!」
「君って……もしかして結構バカ?」
「バカって言うやつがおたんこなすなんだぞっ! 知らねぇのか!」
「はいはい」
俺とブームは口喧嘩しながら車へ向かう。
「おっと忘れるところだった」
地面に置いてあった杭を拾う。
「ん?」
杭に何かが彫られているような跡がある。
だけどその上から無数の傷がついていて読めたもんじゃない。
「前の持ち主が名前とか彫ってたのか。律儀なやつ」
俺は肩に杭を乗せてブームの方へ走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます