puzzle

episode.0.1

 人の世では死徒は別世界からこの世界に来たとされている。


 空に亀裂が入り、そこから三十一体の死徒が現れたのだから、そう思っても致し方ない。


 だが、真実は違う。

 死徒はこの世界に生まれでたのだ。


 その亀裂は言わば出産であり、この死徒達は母から生まれでた赤ん坊と同じなのである。


 違うのは彼等が生まれでた瞬間の空腹感と、人間への食物としての興味だ。


 さて、ここで疑問となるのはそのような死徒を産み落とした母の存在である。


 人類を滅ぼさんとする絶対悪が存在していたのか。


 答えはノーだ。


 どのような力があろうとも死徒を生み出すことなどできるはずが毛頭ない。


 ならば、偶発的に生まれでたのか。

 それも否である。


 死徒が現れたのは一度きり、さして異常気象や放射線での汚染もない上空で起こった現象、ただの偶発的でそのような事態が起こりうるはずがない。


 焦らさずに答えを述べよう。


 死徒を生み出したのは神である。


 人は蔓延しすぎた。


 知恵を持ちすぎてしまった。


 人が人を憎み、争いは世界中で絶えず行われていた。


 知恵を与え、自由を与え、信仰さえも与え続けていた筈の人類が争っている姿を神は憂いたのだ。


 そこで生まれたのが死徒である。


 人ではない悪しき対象物。


 同じ種族での争いを辞め、人は死徒へ憎しみをぶつけ始めた。


 全ては神の思惑通りであった。


「お前らの役割なぞ、その程度のものだ」


 長々と講釈を垂れてさぞ楽しかろう。


 杭が突き刺さり動けない死徒の前で歩きながら話していた黒いローブの影。


 お前も同じ人間なのだろう。


「人間、そう人間ですよ。神の知り得ぬ……ですがね」


 おかしな事を言う。


 お前さえも神の掌の上におるだけではないか。


「それはどうでしょう? 何故なら神は……」


 影は杭に手を伸ばしながら続ける。


「私が■■■のです」

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