episode.8
マイケルがやってきたのは路地裏の小汚いバーであった。
ドアを開くと一人のハットを深く被り黒いコートを羽織った男性がカウンターに座っていた。
「マルフェナさん、聞いてくださいよ。ミッシェルの事なんですが……」
マイケルは今日あった出来事を自分が良いように改変しマルフェナに語った。
「った、マルフェナさんに言われてミッシェルに近づいたのに台無しになっちゃいましたよ」
「そうか」
「ミッシェルと付き合って家の財産根こそぎ持ってけるはずだったのに!」
マイケルが街なかでミッシェルに声をかけたのは偶然ではなかった。
全てこのマルフェナの儲け話があると言われ、屋敷はマルフェナに、財産は全て自分に貰えるとの条件でマイケルはミッシェルに近寄ったのだ。
「このバーで最初に話しを聞いたときは頭のイカれた奴だと思いましたよ」
「だろうな」
「さて、これだどうします? あれならあいつら二人やっちゃいましょうか?」
「その二人は赤髪と銀髪だったのだな?」
「えぇ? はい。赤髪の方はバカでかい杭を背負ってました」
「そうか」
「嬉しそうですけど、どうしたんすか?」
「お前にはミッシェルの家に行ってもらう。そうだな。そこら辺のゴロツキにでもこの金を渡して連れていけばいい」
マルフェナは胸元から札束を取り出すとカウンターに乱雑に放り投げた。
「いいんすか! これ余ったら……」
「くれてやる。その変わりに屋敷を荒らすだけ荒らして金目の物をかき集めろ」
「やりー! もうけ! 荒らすだけ荒らして金目の物集めりゃいいんすね」
「それとだ。あの屋敷には地下室があるはずだ。それも探せ」
「地下室? そこにも金目の物あるんすか?」
「お前には関係のない話だ。地下まで降りた先に扉がある。それを赤髪の持っていた杭で破壊しろ」
「あのバカでかい杭ですか? わかりましたよ。それじゃあ行ってきますね!」
マイケルが札束を握りしめ店内から出ていく。
「役に立たないゴミだ」
マルフェナは目の前に置かれていた酒を飲み干しゆっくりと席を立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます