episode.2

「おい、この女、気絶しちまったぞ?」

「君がギャーギャー五月蝿いからだろう」

「マジか、五月蝿いと気絶する人いるんだな」

「嘘に決まってるだろう。君への嫌味だよ」

「嫌味かよっ! 先に言え! 危ねぇから車の後部座席に乗せとくか」


 赤髪の男―カルト―がサリーの身体を片手で軽々と持ち上げる。


「後ろのあれ降ろさないと乗れないんじゃない?」


 それを見ていた銀髪の男―ブーム―が後部座席に入り切らず窓から飛び出ている背丈より大きな杭を引っ張り出す。


「マジでこれ邪魔な」

「本当だよ。もっと小さくならないものなのかね」


 ブツクサと文句を言いながらブームが杭を下ろし、カルトがサリーを後部座席に横たわらせる。


「さてと、これで大丈夫かな」

「……キサマら」

「おっ、生きてたか」


 車に轢かれた何かが壁から這い出し二人を見据えて立っている。


「これはまた汚い悪魔だね」


 ブームが悪魔から放たれている腐臭に鼻をつまむ。


「クセェの? 鼻詰まっててよくわかんねぇ」

「眉間を叩くと治るらしいよ」

「マジで! やってみるわ! いてぇ! ……治んねぇぞ?」

「嘘だよアホ」

「嘘かよっ! 先に言え!」


「キサマらふざけるのもいい加減にしろ」

「あんだぁ、悪魔ごときが俺に文句言うんじゃねぇよ。そもそもお前誰だ?」

「私は死徒三十一神の一人バイクだ。キサマらの要なガキと遊んでる時間はない」


「また俺、死徒轢いたのか」

「まただね」

「それなら話しは早くていいわ。お前俺のこと知ってる?」

「お前のようなガキなど知らぬ」

「はーさいですか……それならっと」


 カルトが床に置いてあった杭を持ち上げ肩に乗せ、微笑む。


「お前は死んで然るべきだ」


「何を……」


 バイクの言葉を遮ってカルトが駆ける。

 両手に持った杭を大振りに上から振り下ろしバイクの頭部を狙うが既の所で避けられてしまった。


「残念外れたわ」


 杭が勢いよく当たった場所は大きく破損しており、直撃すれば相手がどうなっていたかは明白である。


「その杭……お前達何者だ……」


 バイクはその杭を知っている憎き人間達によって心の臓に突き刺された杭と同じだと。


「よくぞ聞いてくれた! ブームあれ言うぞ!」


 カルトは軽快にブームの横に戻ると杭をバイクに向ける。


 カルトとブームは高らかに叫び始めた。


「「そう! 俺達!」」


「「デ悪ビ魔ル絶ハ対ン殺タすー」」


「マン!」


「合わせろって言ってんだろ!! 車で決めた決め台詞言えって何度言ったらわかるんだよっ!!」


「僕は悪魔絶対殺すマンが良いって言ったはずだ」


 こいつらはただの馬鹿なのかもしれない。

 バイクの中に初めて呆れるという感情が生まれた。


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