Sally
episode.1
サリーは祖母の事が大好きだ。
家から少し離れた場所に住んでいる祖母は彼女が小さい頃、母親が病気をした時に一年ほど一緒に暮らしていた。
母親がいない寂しさから泣きじゃくる彼女を祖母は優しく抱きしめてくれた。
成人を向かえ、脚が悪く外に出れない祖母の家へ行くのは日々のルーティンの一つとなっている。
ベットに横になっている祖母の話し相手となり、一緒にご飯を食べて家に帰る。
「毎日来るのは大変だから無理をしないでおくれ」
そう言われても「無理なんてしてないわ」と明るく言葉をかけるサリー。
一度、一緒に暮らそうと話したこともあったが祖父と長年暮らした家を離れるのは嫌だと断られた。
その日も彼女はいつものように祖母の家へと足を運んだ。
ベットにいる祖母へと近づくと今日は布団を頭まで被り寝ているようだった。
「そんな寝方していたら苦しいでしょう?」
サリーの問いに「大丈夫だよ」といつもよりしゃがれた声で返事が返ってくる。
「お婆ちゃん、声がいつもと違うわカゼでもひいたの? お薬貰ってこようか?」
「大丈夫、栄養のあるものを食べればすぐ治る」
「そう、じゃあ今すぐご飯を作るわね」
「作らなくていい」
「どうして?」
「食うものは目の前にあるからな」
勢いよく布団が薙ぎ払われる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
中から現れたのは祖母ではなく、醜悪な見た目をした化物だった。
身の丈は二メートルを超えている。それは醜悪な臭いを放っている。
サリーはその場に倒れ込む。
全身が赤黒く爛れ口の周りには赤い色をした液体がこびり付いている。
「久方ぶりに杭が抜かれて自由になって腹が減っていた。家にババアがいたから喰ったが歳をとった生き物は旨味がない」
化物はペッと口から何かを吐き出すと床に生き物の骨が転がっていく。
「あっ……あっ……」
彼女は瞬時にそれが誰の骨かを理解し恐怖する。
「さて、次はお前を喰わせてもらうぞ」
何かはサリーに近づいていく。
彼女は頭では自分がこのままでは殺される事は分かっているが恐怖で身体が動かない。
「あぁぁぁぁぁ」
何かの口が顔よりも大きく開きサリーを喰わんとしたその時、外から車のエンジン音が聞こえてきた。
エンジン音はそのまま大きくなり壁を突き破って家の中へ突っ込んできた。
爆音が轟く中、勢いそのままで何かを轢き、反対の壁へと突き刺さる。
サリーが呆然としている中、車から赤髪の長身の男と、銀髪の小柄な男がフラフラとしながら車から降りてきた。
「だから! きちんとブレーキ踏んでたって行ってんだろ!!」
「ブレーキを踏んでいたらこんなことになるわけがないだろう」
「これだからボロ車はよぉ!」
赤髪の男が車を人蹴りすると車は黒い煙を吐きタイヤが本体から外れ転がっていく。
「漫画かっ!!」
サリーは未だに何が起こったか分からぬまま意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます