第9話 別れ

 俺たちは家に帰った。

 俺は両サイドを子どもに挟まれて、笑いながら歩いていた。

「パパ、また公園行きたい!」

「パパと鬼ごっこしたい!」

「いいよ」

 俺は調子のいい返事をしながら寂しくなった。

 俺たちは、所詮、金で繋がっただけの関係だ。でも、子どもたちは本気で言ってくれている気がする。もしかしたら、シングルマザーで父親のいない家族なんじゃないか。俺はこの子達の父親になれないのだろうか・・・。


 家に帰って、ママが料理を作ってくれている間、俺は子どもたちとテレビを見ていた。別れの時間が近付いている。俺は不覚にも泣いてしまった。

「パパ、何で泣いてるの?」

「寂しくてさ」

「どうして?」

「だって、3人とも帰るだろ?ご飯食べたら」

「帰らないよ。だって、ここ、僕たちのお家だもん。ずっとパパと暮らすんだもん」

「そうだよ!マナはずっとうちにいるよ」

「ママ!パパが変なこと言ってるよ」

 兄の方がキッチンに走って言った。ママは黙って息子の髪を撫でていた。「でもね。本当なんだよ」と言い聞かせているようだった。この子たちは多分、家がないんだ。俺の家でみんなで暮らそう。そしたら、みんなハッピーになれるじゃないか。

「ねえ。私たちのこと・・・どう思ってるの?」

 ママは引き留めてもらいたそうだった。

「どうって。本当の家族みたいに思ってるよ」

「本当の家族じゃないの?私たち・・・」

「そうだろう?だって・・・」

「変なことばっかり言って。私たちの子と追い出そうとしてるんでしょ!」

 おかしな展開になっていた。

「そんなつもりは・・・」

「私たちは家族でしょ?」

「う、うん」

 これからどうなるんだろう・・・。

「僕、どこにも行きたくないよ。えーん」

 兄は泣き出した。妹も泣く。俺も連られて涙が溢れて来た。

「大丈夫。君たちがよかったらここにいていいよ」

「パパ。僕、みんな一緒がいい!」

 子どもたちは俺に抱き着いて来た。ママも料理の手を止めて、俺たちと抱き合った。

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