第7話 夜

 男女が付き合うというのも奇跡というべきものだと思う。まず、出会えるかという所から始まり、言葉を交わすチャンスがあるかどうかも偶然そのものだ。そこで、どちらかが相手に惹かれたとしても、最初から両想いであることは稀だろう。勇気を振り絞って連絡を取って、運が良ければ交際が始まる。前に読んだことがあるが、ほとんどのカップルは2か月で別れてしまうというから、何年も付き合っているだけですごいことだ。

 二人の人間がお互いの違和感を乗り越えて、徐々に信頼関係を築いて、結婚を考えるようになる。結婚まで平均で大体3年くらいというから、その時点でかなり相性がいいことになるのだ。その間には、両家の親の問題、経済的な背景、仕事など、クリアすべき様々な要素があるだろう。そして、入籍。甘い新婚時代を経て、子どもが出来て出産。出産も大変だ。会社で妊娠中も働いていた人たちがいきなり入院したりする。産後連絡をもらうと、帝王切開でしたとか、陣痛が24時間あったなんて聞かされる。


 今回のお母さんは2人も出産しているから、きっと、どちらもドラマチックな出産だったろうと思う。そして、赤ちゃんと言えば夜泣きだ。職場の派遣の人も、夜泣きがひどくて大変だった、と言っていた気がする。


 俺は男女が出会って結婚に至り、子どもが育つまでの長いスパンをすっ飛ばして、家族をレンタルしている。これは高くても仕方がない。でも、この人たちは安くて、1泊2日で1人3万円なのだ。だから、9万円。明日、現金で払わないといけない。


 俺はぼんやり金の計算をしていると、子どもに添い寝をしていたママが起きあがった。そして、俺の布団に入って来たのだ。俺は驚いて何も言えないでいると、彼女は俺にキスをし始めた。俺も大人の男だからそれに応える。中年同士の欲望に任せた濃厚なキス。彼女は意外に肉食だった。キスだけで終わらない予感がした。


 すると、ママは唇を話すと、もっと下の方に潜って、俺のスエットのパンツと下着に手を掛けて一気に脱がせた。あまりに急だったから、まるで、寝たきりの老人になったようだった。エロというよりも別次元の振る舞いだった。そして、ママは俺のあそこを尺ってくれた。めっちゃ気持ちいい。風俗には行き慣れているが、素人女性にしてもらうのは久しぶりで照れた。さっき、風呂上がりに見たママのすっぴんを思い出す。色白でかわいい感じだったなぁ・・・。やがて、十分な硬さになると、彼女は俺の上に跨って来た。避妊しなくていいわけ?やばくない?俺は焦ったが、子どもが寝ているから騒ぐのはやめた。世間の夫婦ってこんな感じで、子どもが寝てる横でやってるのかなぁ。エロいなぁとハラハラした。


 やがて、俺はNNで果てた。半端ない気持ちよさ。俺はNNの経験が人生でほとんどなかったから、夫婦っていいなと思った。タダでNNできるなんて・・・。高級ソープでそれをやったら、6万くらい飛んでいくだろう。よく家事労働を機会費用法(外で働いたら得られたであろう賃金)で計算すると、月30万にもなる。仮の女性がソープでNN行為をやったら、半額の3万もらえたとして、週2回を4週すると、24万円。奥さんの労働を単純計算すると、54万円の価値にもなる。


 俺は今まで、家事は自分でやって、性処理は風俗と自家発電で賄って来たけど、54万円を払わなくて済むなら、結婚した方が得だと思った。今、考えるとおかしいが、俺は金の計算がまったくできないタイプなのだ。


 奥さんはしばらくして、トイレに行くと、子どもの隣に寝た。言葉は交わさなかった。こうして、何事もなかったかのように、朝を迎えるんだろう。夫婦はこんな風にセックスするのか。俺は感動した。それから、俺は女に対して、特別な感情を抱くようになった。俺の女・・・という感情だ。彼女を捨てた男に、憎しみを感じるほどだった。俺が人生をかけてこの人たちを守る。俺は自分に誓った。

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