【9】


 一方――【光線能力者】が敗北した様子を。

 遠く離れた地から、見物ている者がいた。

 その者は、スマートフォン片手に口を開く。


「もしもし、ボス。どうやら『ビーム』の作戦は失敗したようです」


 ボスと呼ばれる電話相手が、その作戦失敗を気にしていないかのように言う。


『その作戦の成否など、もともと気にしてなどいない。重要なのは、万屋人愛の力量を見る事だ。どうだ? 君とにして、あの『日本超能力研究室』で最強と謳われている未来戦士――



 万屋人愛には、勝利出来そうか?』


 電話越しにでも、笑っているのが伝わってくる。

 同調などはせず。淡々と、ボスからのその質問に答えた。

 正直に。謙遜など一ミリも入れずに。


「勝てますね。正直言って、今の彼女では僕に傷一つ付ける事は出来ないでしょう」


 そう言った。

 ボスと呼ばれる電話相手は『それは素晴らしい』と笑った。


『では、君の言葉を信じ。君を送り込む手続きを進めようじゃないか』

「……はい。必ずや、期待に応えてみせます」

『期待しているよ……?



 一阿いちあ ダン



 ここで通話は途切れた。

 団と呼ばれた少年は、スマートフォンをポケットに仕舞いながら、遠くのビルの中を走る少女へと目を向けた。

 そして、声を落とすように呟く。


「万屋人愛……最強のヒーロー万屋太陽の実娘にして、【】……お前も、運命に選ばれし者なんだな。気の毒に……」


 団は続けてこう言った。


「選ばれし者同士――――




 一緒に地獄を見ようじゃないか。なぁ? 万屋人愛」

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