第3話 ボーイミーツ破壊神 お決まりの展開を添えて

 突如現れた不審者に俺は困惑していた。

(ゼウス?親愛なる隣人?何言ってるか)

「さっぱり分かんねぇ…」「!?」

声が出た。体が無いはずの自分から。

「その状態だと不便だからねェ$。ちょっとしたサービスサ€。あと時間も停めたかラ、少しオシャベリしようヨ%。」

失ったはずの五感が復活し、体が再び戻ったことを知覚する。周りを見ると脈動していた巨大餅も、前進していた小餅も止まっている。

得体の知れない空間で得体の知れない人知を超えた人物が現れた。この状況、第一声の模範解答はなんだろう。とりあえず…

「あなたは…?」

「あれェ、さっき言わなかったけェ°。アポロンだヨ#。アレ、シヴァだっケ、クロノスだっケ、それともヤハウ……」

「ゼウス……?」

「あァ、それそレ○。ま、なんでもイイョ*。全部嘘…というか存在しない同僚の名前だしネ・。」

「同僚…」

先程出た名前達にはあらゆる2次元コンテンツで馴染みがある。女体化されたりモンスター化されたりしてるとはいえ共通点は…

「神さま…?」

「まッ、君達の尺度的にはそういうやつかなァ+。で、どウ?初めて「神サマ」にあった気分ハ×?。」

「どうと言われても…想像と違うというか…」

「あはははハ!!÷。そうかいそうかイ<。

君は中々正直者だねェ、ちなみにもう一人だけ同僚がいるんだけどォ=。誰かわかるゥ?>。」

「同僚?そんなの分かるわけ……」

「ヒントはねェ、"目の前":」

「目の前?もしかして…」

「ピンポーンッ〒。こちらのビックなお餅こそボクの唯一の同僚にして君達のママでもある、いわゆる"創造神"様サ〆。アッボクは"破壊神"ネ^」

        ーーーーー

「創造神…、破壊神…」

意味が分からない。やけに馴れ馴れしく喋りかけてきたこの"破壊神"と名乗る少年は、未だ理解が追いつかない俺を置いて歌うように話し続ける。

「キミはココがドコか知ってるゥ|?ココはねェ、ボクと創造神の2人で世界を創り、壊す、いわゆる"神々の仕事場"さァ\。」

俺に相槌や返答の隙も与えず続ける。

「ココにはねェ、ボク達以外にもキミみたいな死んだ後の生物の魂が帰ってくる☆。帰ってきた魂は産みの親である創造神に吸収されてェ、数多の魂と混ざり合いながら創造神の体細胞の一部になるんだァ♪。」

魂が体細胞になる…?

「死んじゃった数だけ体細胞が増えるのはイイんだけどォ、吸収してるだけじゃあ創造神って名前は可笑しいよねェ→。

もちろん新しい魂を生み出すのも仕事でサ、生み出す時は逆に体細胞を切り離すのサ¥。ア、切り離すのはボクがやるんだけどねェ$。そうやって切り離されて生まれた新しい魂はァ、創造神の中で数多の魂のエッセンスが混じりに混じった世界に1つだけのオリジナル魂として、命を得て必死に生きて死ぬワケ€。」

創造神から切り離された魂が新たな魂…?

「モチロンキミの魂もそうだよォ%。そうやって世界が始まってから今まで生まれた魂は全て違うオリジナルなシロモノなんだけどさァ、

最近は様子がヘンなのサ°。キミの"宇宙"では無いんだけどさァ、魂の帰りが少ないんだよねェ#。」

キミの宇宙では無い?最近魂の帰りが少ない?

前者はよく分からないが、後者は単純に死ぬ人が少なくなった、長生きが増えたということでは無いだろうか?

「ボクにとっての最近はキミ達でいう2000年くらいだからねェ○。流石に2000年以上生きる生物はあんまりいないからさァ、何かしら理由があるんだろうケドねェ*。考えられるのは不死に成ったとかなんだケド、それだったらチマチマヤルのもメンドウだし宇宙壊して一掃するしか無いんだよネェ・。デモ壊しすぎると創造神のヤツが怒るからなァ+」

サラッと物騒なことを呟く破壊神。宇宙を壊す?どうやるのか見当もつかないが、現在進行形で時を止めているコイツには簡単なのかもしれない。

 …ずっと話を聞き続けてきたが、俺にとって一番聞きたいことはまだ話してくれていない。思い切って未だオシャベリという名の独り言を続けている破壊神に問いかけた。

「あの…時間を止めてまで俺に話しかけてきた理由は?」

「ん?あァキミに話しかけたのはネェ、創造神に吸収されるのを怖がっていたのが面白かったからサァ×。」

「怖がっていたのが…面白かった?そんな理由で?」

「ココに来た魂達はねェ、多かれ少なかれ創造神への体内回帰を望むものなのサ÷。創造神と一体化すること、数多の魂と混じり合うことは「今後生まれ変わるまで孤独を感じることはない」というサイッッコウの"安心"を得られるということだからネェ、拒む者はいないのヨ<。

だけどキミは抵抗した=。よっぽど自我、もしくは"未練"が強いのかなァ>。時々キミみたいなヤツはいるけど今時珍しいからねェ:。頼み事するのに最適だなあァとも感じたワケさ〒。」

「頼み事って…?」

「さっき言ってた魂の帰りが少ない件だヨ〆。キミさえ良ければ件の宇宙に転生してもらって原因を突き止めて欲しいなぁッテ^」

とんでもないことを言われた気がする。

「件の宇宙に転生…それはつまり…?」

「キミのアタマの中を覗いたら最適な言葉があったヨ、"異世界転生"ッてやつサ!!|」

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