第4話いじめに悩む少女


新見涼が異世界転移し、お悩み解決屋を始めた翌日、待望のお客さんが来店する。


カランカランとドアにかけられた鈴が来客を知らせる音を奏でると、若い女性と小さな女の子が手を繋いで店内に恐る恐る入ってきた。


「いらっしゃいませ。ささ、こちらにお座り下さい」


来店した2人のお客さんをテーブルに備え付けられた椅子に座るように進める。


「あ、はい。ありがとうございます」


涼に促されるままに、2人は椅子に腰掛ける。

若い女性は見た目ではおよそ20代に見え、肩ぐらいの長さの黒髪のショートカットで、顔からは優しい性格だろうと思われる表情をしているが、悩みを抱えているのか少し悲壮な感じを受けた。

もう1人の女の子は5歳か6歳程度ぐらいの背丈で、母親とは正反対の黒髪の腰まで長さのある長髪。

ピンク色の可愛らしいフリルがあしらわれた長めのスカートを身につけていていた。


「あ、あの、私はメルフィと申しまして、えっと、店先に解決屋と書かれた看破がありましたが、間違いないのでしょうか?」


「はい。間違いないですよ。何かお悩み事でも御座いますか?」


「…はい。あの、非常に言い難いのですが、私の娘のリリがいじめられていまして、どうにか解決して頂けないかとお願いしたいのですが…。もう頼る所が無くて、どうしたら良いのか分からなくて…」


涙混じりの声色で母親であるメルフィは両手で顔を覆いながら、涙を流して懇願する。

始めて来店されたお客さんがまさかのいじめ問題で悩みを抱えているとは予想しておらず、一瞬言葉に詰まる。

現実世界でも度々問題にあがっているいじめ問題。

それは異世界でも当然のように起こっているのだという現実を突きつけられた。

その問題を解決出来るのか不安はある。

だけどそれは涼にとっても無視出来る事では無かったのだ。


「…いじめ…ですか…。それはまた大変な思いをされたでしょう。辛いかと思いますが詳しい話を聞かせて頂けますか?」


「……はい…。最初は娘もそのお友達と仲良く遊んでいたんです。ですが、今から1年前に娘が泣きながら家に帰って来たんです。それで、何があったのかを娘に聞いたら、友達に無視をされたと。それだけじゃなくて、石を投げられたり、暴言を吐かれたり。喧嘩でもしたわけでも無くて、何の前触れもなく突然その様な態度を受けまして…」


悲痛な表情で説明をするメルフィ。

その瞳には涙が今にも溢れ落ちそうな程溢れていた。


「……なるほど…。1年前から突然そのようないじめに遭われたと…」


視線を天井に向け、頭の中で話を整理する。

何が原因なのか。

そのきっかけは何なのか。

何故いじめに発展したのかを思考を巡らせた。






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異世界転移した俺は、お悩み解決屋として生きていく ゆずどりんこ @yuzudorinko

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