第3話お悩み解決屋、始めました


重たい瞼をゆっくりと開けると、そこは先程までいた異世界転移の間ではなく、ふかふかとは言い難い木製で作られているベッドで横になっていた。


「……そうか。ここが女神に望んだ俺の家か」


白い靄がかかっていた思考がゆっくりと晴れ渡っていくにつれて、今現在の状況を理解していく。

ゆっくりとベッドから体を起こし周りを見渡してみると、右手側は外を見渡せる窓、部屋の中央には丸い形をしたテーブルと椅子、部屋の隅には観葉植物であろう植物が設置されている。


「…何て言うか、異世界でよくある宿みたいな室内だが、まぁ悪くはないかな」


ベッドから床へと立ち上がり、ぐるりと視線を巡らせる。


「…さて、取り敢えず家の中を確認でもしてみるか」


これからの異世界での生活が始まるがどうなるのか不安もあるが、やはり未知の経験なのかワクワクの方が優っているようで、自身の声が弾んでいるのに気付いた。


部屋の扉を開け、廊下に出ると1階へと続く階段と、3つの扉が存在している。

どうやら2階は先程の部屋と合わせると4部屋存在しているみたいだ。

2階の全ての部屋を確認すると、内部の作りは同じであり、設置されている物自体も一緒であった。


2階の確認を済ませると、1階へと降りる。

ギシギシと木が軋む音が家の中に静かに響き渡る。

1階へと辿り着くと、風呂場、トイレ、リビング、キッチン等、生活に必要な設備は全て整っており、入口から入ると店舗として使える空間も女神に望んだ通り存在していた。


「…なかなかいいじゃないか。口は悪い女神だったけど」


家の中の確認を済ませた涼は、リビングに置かれているソファに腰掛けながらこれからの事を考える。


「……さて、これからどうするか…。家があるんだからわざわざ冒険なんてする必要もないし、店をするにしても売る商品すら無い。金もない。この状況でお店として出来る事は限られる訳だが……ううぅむ……」


腕を体の前で組み、唸りながら考える。

何かを売るお店をするにしても、その商品を購入するお金が無いのである。

つまり販売店は今の段階では難しい。

1時間、2時間と刻が過ぎる中、ふと1つの考えが浮かび上がる。


「……解決屋なんてのはどうだろう?これならお金はかからないし、女神に望んだチート能力も恐らくあるだろうから、ちょっとした乱闘騒ぎに巻き込まれても対処出来るだろうからこれなら何とかなるんじゃないかな?って、そう言えばその能力の確認をしてなかったな。えっと、こう言う時ってアレだろ?確か…ステータスオープン…だったか?」


そう言えばと思い出し、予想される言葉を口ずさむ。

すると目の前にゲームでよくある自分のステータス画面がフォンっと音をたてながら表れる。



【名前】新見涼


【種族】人間


【性別】男


【称号】異世界転移者

【称号】女神ディーバに祝福されし者

【称号】看破の魔眼を宿し者

【称号】剣聖


【体力】9999999

【魔力】9999999

【物理】9999999

【魔法】9999999

【物理防御】9999999

【魔法防御】9999999

【速さ】9999999

【精神】1000


ずらっとと並ぶ異常とも思える数値が目に容赦なく飛び込んでくる。

しかし何故か精神の数値だけが他とは違い低い。

この数値がこの世界で低いのか高いのか、平均値を知らない涼からすれば当たり前。

しかし、あまりの驚愕の数値に頭がついていかず、ステータス画面をそっと閉じる。


「………もはや何も言うまい。まだ見ていないステータスも規格外なのだろうことは何となくわかる…。まぁ、これだけのステータスなら多少の乱闘騒ぎなら大丈夫だろう。つまり、今の段階で出来るお店はこの世界に住む住人の悩みを解決する店なら何とか出来るな」


そうと決まれば、すぐさま涼は行動を開始する。

家にあった木材を切断し、看板を手作りする。

ペンキでお悩み解決屋とデカデカと描き、店先に設置する。

料金設定は全て時価。

何故ならこの世界の通貨を知らないからだ。

こうして、異世界転移をしたその日に涼の異世界でのお店【お悩み解決屋】が開店を迎えたのである。


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