第2話異世界転移(2)


「初めまして新見涼さん。私は女神ディーバと申す者です」


金色の光がゆっくりと消失すると共に、涼の耳に優しげな声が飛び込んでくる。


その声がする方向へと涼は視線を向けると、そこには純白のドレスの様なひらひらとした衣装を身につけ、流れるような青色の長髪姿の美しい女性が空中にふわふわと浮かんでいた。


「…女神出っ歯…?」


「ディーバです!!女神ディーバ!!次に同じ間違いを口にしたら毛という毛を消滅させた姿で地獄に落としますよ?」


「ご、ごめんなさい!!ちょっと何が起こっているか理解が出来ず聞き間違えました!!だから毛根消滅地獄行きだけは勘弁して下さい!!!」


最悪の事の重大性を理解した涼は、慌てて土下座をして全力の謝罪を全面に出す。

毛根消滅地獄行きは嫌だ。絶対。


「…いいでしょう。貴方の謝罪を受け入れます」


「あ、ありがとうございます。あの、それでいきなりで悪いのですが、幾つか質問があるんですが…」


最悪の事態を回避した涼は安堵の溜息を吐き出し、一体何が起こっているのか質問を投げかける。


「…貴方の質問も当然の事でしょう。何が聞きたいのですか?」


「…えっと、ここは何処ですか?それとこれから一体何が起こるのですか?俺は死んだのですか?これは夢ですか?あと…」


「落ちついて下さい。1度に質問されても困りますので、1つ1つお答えしましょう」


困った表情を浮かべながら優しい微笑みを浮かべ女神ディーバはゆっくりと涼の質問の答えを口にする。


「ここは異世界転移の間です。その名の通り、貴方は異世界転移の片道チケットの効果でこの場にお招きしました」


「異世界転移の間…。ん?ちょっと待ってください!今、異世界転移片道チケットって言いましたか!?言いましたよね!?」


「はい。言いましたよ。間違いありません」


「ちょっ、片道って!!?往復チケットは無いんですか!!?」


「はい。御座いません。何かご不満でも?」


「不満だよ!!ご不満しかないよ!!さも不満がないでしょ的な返しはやめて!!」


不思議そうに首を傾げながら答える女神ディーバに不満を露わにする。

この女神、頭のネジが何本緩んでるんだ?馬鹿なのか?馬鹿だよね?


「そうでしたか。意外ですね。他の方々は小躍りしながら喜んでましたが、貴方は違うのですね?変人ですか?」


「変人じゃない!!俺の反応が普通なんです!!て言うか、どんどん口が悪くなってませんか!?それに他の方々って俺以外にも異世界転移した人間がいるんですか!?」


「ええ。そうです。貴方以外にも数名異世界転移されています。泣いて喜びなが旅立たれましたよ。俺に相応しい世界はここにあるって叫びながら。さぁ、貴方も彼らと同じように鳴きなさい」


「誰が鳴くか!!!」


「面倒くさい人ですね。それに時間もあまりないので、手早く説明します。ここは先程も言ったように異世界転移の間です。ここでは、あなたに3つの望みを叶えてあげます。貴方の言葉を借りればチート級の能力等を授ける間です。さぁ、貴方が望む3つの望みは何ですか?」


「…本当に手早く雑に説明しやがった…。…チート級の能力…。それを3つ…か…。うぅむ、なら1つ目は家が欲しい。異世界に行くなら住む場所はないと困るからな。それに仕事をしてお金を稼ぐ必要もあるから、店舗兼住宅2階建てを下さい。後は、異世界がどんな場所かも世界かも分からないから誰にも負けない能力、ステータスは必須だよな。残り1つは、看破する魔眼的な能力が欲しい。これでどうかな?出来ますかね?」


「可能ではありますが、これで本当によろしいのですか?」


「…?大丈夫ですけど、何か疑問でもありますか?」


何やら浮かない表情を浮かべている女神ディーバに一抹の不安を抱いた涼はすかさず聞き返した。


「疑問といいますか、他の方々は全員ハーレム生活を願っていましたので…」


「!!!?た、確かに魅力的な願いですね。いや、しかしこの3つは必須だし……どれかを無しにして変更なんて出来ない…。くぅぅぅ、仕方ない。自力でハーレムを作れば何とかなる…はず…。うん。大丈夫…?俺ならやれる…。……よしっ!!3つの望みに変更は無い!!」


血の涙を流しながら、ハーレムと言う魅力的な願いを堪え、決意を露わにする。


「承りました。貴方が異世界でどの様な生活をするのかは自由です。チート能力を駆使し、勇者として世界を破滅させんとする魔王を討伐するもいいでしょう」


「魔王討伐?勇者?やだね。俺はゆるーく生きたいんだ。自分の身さえ守れればそれでいい。勇者なんてなりたい奴がなればいいんだよ」


「やはり貴方は変人ですね。そんな変人さんには餞別として言語理解能力をプレゼントしてあげます。それでは貴方を異世界に転移させます」


女神ディーバは片手を前にかざすと、涼の足元に魔法陣が展開される。

魔法陣から放たれる光が涼を優しく包み込み、涼は異世界へと旅立った。


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