異世界転移した俺は、お悩み解決屋として生きていく

ゆずどりんこ

第1話異世界転移


俺の名前は新見涼18歳の高校3年生の普通の男子学生だ。

中学校卒業と共に続けていた剣道を辞め、高校からは特に部活には入らず授業終了のチャイムが鳴ると、脇目を振らず下校のスタイルを貫いていた。

強豪校からのスポーツ推薦を蹴り飛ばした時、両親から大反対を喰らったのは今思えば懐かしさすら感じる。


そんな生活を続けていたある日、下校途中に寄り道したコンビニ店で事件は起こった。



「いらっしゃいませー」


来店を知らせるチャイムと共に、自動ドアが左右にスライドする。

俺は冷房の効いた店内へと入り、迷わず飲料棚へと足を進める。


「やっぱ、暑い日には炭酸飲料に限るよな」


飲料棚から黒色の炭酸飲料を手に取る。

手に取った手のひらからは、ひんやりと冷たい感覚が体を駆け巡る。


「…お菓子は…家に買い置きがあるし、これだけでいいか」


お菓子の買い置きがある事を思い出した涼は、そのままレジへと進む。

すると、ある物が涼の視界に飛び込んで来た。


「…ん?あぁ、これって一番くじか」


涼の視界に入ったのはレジ前にある商品棚に異世界一番くじと書かれた大きなPOPと、一番くじの商品が1つ陳列されていた。


「…あの、この一番くじってこの商品で最後なんですか?」


「はい。この商品で最後ですね。今ご購入されますとラストワン賞も付いてきますよ」


「…マジか。何というナイスタイミング。これは買っておくべきだろうな」


目についた1番くじがまさかのタイミングだった事に運命を感じた涼は、迷わず財布から1番くじ代の500円玉と炭酸飲料代の代金を取り出して店員に支払い最後のくじを購入する。


「ありがとうございます。ラストワン賞をお持ち致しますので、少々お待ち下さい」


涼から手渡されたお金をレジにしまい、後ろにある部屋へと姿を消す。

ラストワン賞がどんな物かと思考を巡らせていると、店員が向かった部屋から『ええっ!!?』っと言う驚きの叫び声が聞こえてきた。


数秒後、手のひらサイズの大きさで金色の長方形の箱を手に持ち、後の部屋から姿を表した。


「お待たせ致しました。こちらがラストワン賞になります。おめでとうございます」


「……………」


「……?どうかされましたかお客様?」


「……金色ですね」


「…はい。金色ですね」


「……派手ですね」


「…ですね。存在感が凄いですね」


「……これ本当にラストワン賞ですか?何かの間違いじゃないですか?後で返せと言われても返しませんよ?」


「…はい。間違いなくラストワン賞だと思います。きっと。多分」


「……いやいや、自信なくさないで下さいよ」


「…そう言われると私自身も疑心暗鬼になってしまって…。だってあの箱ですし…。恐らく間違いないと思うんですよ。ラストワン賞って書かれている箱に入っていましたので。だからもう知りません。間違っていても私は悪くないです。だからどうぞお受け取り下さい」


自分は悪くないと言い聞かせている店員が金色に輝く長方形の箱を涼に手渡す。


本当に良いのだろうかと一瞬思ったが、ラストワン賞の権利を得ているのだからと、自分に言い聞かせ店員から金色の箱のラストワン賞と炭酸飲料を受け取り店を後にする。


店を出ると、涼は家へと直接帰らず近くの公園へと足を向け歩き出す。


閑静な住宅街を進むと、数分後には緑溢れる公園が視界に入ってくる。

公園に設置されている木材で作られているベンチに腰を下ろし、コンビニで購入したラストワン賞を袋から取り出す。


「ま、眩しい!!!」


袋から取り出された金色に輝く箱は太陽の光を反射し、涼の視界を奪う程の輝きを放つ。


「…目が…目がぁぁぁぁぁっ!!!」


予想を超える眩しさに目をやられた涼は、両手で目を塞ぎ悶絶する。


「…くぅぅ…。これがラストワン賞の輝きなのか…。なんと恐ろしい…」


ラストワン賞の輝きに恐れを抱き、恐怖に支配された声が漏れる。


「…だが、我は引かぬ!!ゆくぞ!!!覚悟せよ!!ラストワン賞よ!!!」


気合を入れて、自身を奮い立たせる。

覚悟を決めた涼は、金色の箱をゆっくりと開封していく。


パカっと箱が開く音と共に、中に入っている商品が秘密のベールを脱ぐ。


そこに入っていたのは異世界転移片道チケットと書かれた1枚の紙だった。


「……???何だこれ??異世界転移片道チケット?」


涼の頭の中は疑問で埋め尽くされる。

そこに書かれている文字は理解出来るが、理解出来ないのだ。


チケットを手に取って、まじまじと穴が開くほどの視線を向ける。

すると、手に取ったチケットが突然金色に輝きだし、あたり一面を金色の世界へと埋め尽くす。


「!!?な、な、な!!?ちょっ、ちょっと待って!!た、助け………」


助けを求めた声は無情にも誰にも届かず、涼は金色に輝く光と共に姿を消失した。










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