Second cup 6滴目

「そんなこと、ないと思うよ。」

僕の一言に、彼女は顔をあげた。僕は続けた。

「初恋ってさ、すごく幸せで、すごく辛くて、それでも上手くいって欲しいって常に考えちゃうよね。」

僕の言葉に彼女は頷いた。

「でもさ、透華ちゃんの初恋は、すごく幸せに見えるな。ずっと自分のことを見てくれて、ずっと自分のこと支えてくれてる。そういう人が君の初恋相手なんだよね。」

彼女は小さく首を縦に振った。

「じゃあさ、透華ちゃんも本当はわかってるんじゃないかな。その子が君に感じてる想いも。」

その一言が彼女にどう響いたかは分からない。彼女は声をあげて泣き出した。

「わたし、あの子のこと、何も...何も分かってない。あの子が好きな物も、あの子がどう思ってるかも、もうなにがなんだかわからない!」

僕は彼女に一言声をかけた。

「それでも、その子と君のすごした時間の価値は変わらないでしょ?その大切な時間の共有があるから、今の君たちがいるんだ。今の関係が壊れるのが怖いなら、怖いって伝えてみるんだ。それは、すごく勇気がいるし、心の距離感が開くかもって思うと不安だよね。」

僕は彼女の瞳をじっと見つめて、彼女に語りかける。

「それでも、これまで二人が積み重ねてきた時間はそんなに簡単に壊れることは無いと思うよ。透華ちゃんが心の奥底からまっすぐその子に向き合えば、その子もきっと返してくれる。僕はそう思うな。」

「それでも、怖いよ。」

「今は怖いかもしれない。でも、今怖いと思ったからと言って君はここで諦めて後悔しないのかい?」

「それは、後悔すると思います。」

「だよね。じゃあ、伝えてみたら?後悔しないように、自分の思いを。」

。その一言が彼女の心に響いたのだろう。彼女は勢いよく立ち上がると、元気よく声を出した。

「わたし、あの子のとこ行って伝えてきます!」

「うん。いっておいで。お会計は今度来た時でいいからさ、だから今度は二人でおいでよ。このお店にさ。」

「はいっ!今日はありがとうございました!」

彼女は勢いよく店を飛び出して行った。マスターには事情を伝え、彼女のお会計は僕が払って済ませた。店の外には、今日も虹がかかっている。



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