Second cup 4滴目

「マスター、今日の皿、ありますか?」

マスターの元へ向かいながら、僕は引っかかりが何か突き止めようとしていた。そもそも、お互いにラブレターを渡すなんて確率はそんなに高くないし、お互いに直接ラブレターを渡すなんてことあるのだろうか。僕にはそういった経験がないから、よく分からないが、なにかが引っかかっている。僕がマスターの方を見ると、マスターはにこりと微笑んだ。

「今日の皿は、静香ちゃんの手作りだよ。」

僕の体に衝撃が走った。

「静香先輩の...手作り...!?」

次の瞬間、僕の後頭部を衝撃が襲う。

「いたっ!」

後ろを振り向くと、配膳用のお盆を手に持った、静香先輩の姿があった。

「な〜に?どうしたのかな?柊哉くん?」

先輩の柔らかな表情からは想像もできないような、圧というか、オーラのようなものが湧き出ているように思えた。

「なっ、なんでもありません!マスター、仕事に戻りますっ!」

「あっ、こら!逃げるなっ!」

クスクスと笑うマスターと、両手の拳を握り大声をあげる先輩を背に僕はまた、あの部屋へと急ぎ足で戻っていくのだった。

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