Second cup 1滴目 〜初恋ミルフィーユ〜
涼やかな風が新しい出会いを運んでくる。ここは晴心喫茶ファミリア。とある通りの一角にある小さな喫茶店、というのが表向きの紹介である。今日この店に導かれるのどんなお客様なのか、ワクワクと緊張が混ざりあっていた。
カランコロン、と入店を知らせるチャイムが鳴った。店の入口には、セーラー服に身を包んだ1人の女の子が立っていた。
「いらっしゃいませ、カウンターとテーブル、どちらの席になさいますか?」
店の内装を目新しそうにキョロキョロと見つめる彼女に声をかけた。
「カウンターで。」
そう答える彼女はどこか緊張しているような印象が見受けられた。彼女を席に案内して、僕は再度彼女に声をかけた。
「ここのお店の内装、気に入りましたか?」
彼女は声をかけられたことに驚いたのか、
「は、はひっ!」
と、声を上擦らせる。彼女は落ち着くと、
「わたし、こういうレトロなお店来るの初めてで少し緊張しちゃってます。」
柔らかな笑みとともにそういうのだった。
「ご注文がお決まりになりましたらお声がけください。」
僕がそういうや否や、彼女は、
「ホットサンドってありますか?」
そう尋ねる。僕がマスターの方を見ると、マスターは笑顔で頷いた。
「ええ、ありますよ、ホットサンドでよろしかったですか?」
僕が尋ねると、彼女は、はい、と答えると、バッグから参考書を手に取り、読み始めた。今日は平日、さらにちょうど今はお昼時ということもあったので、僕はふと疑問に思うことがあった。
「今日は学校、お休みなんですか?」
「いや、学校はあるんですけど、今日はちょっと行きたくなくて。」
そういう彼女の表情はとても辛そうなものだった。
その数分後、マスターが彼女にホットサンドを提供し、彼女がそれに1口かじりつく。すると彼女は一雫の涙を零し、こう呟いた。
「美味しい、美味しいのに...なんでこんなに苦しいの...。」
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