第10話・取引完了。
「移譲」
「おっ・・」
「移譲」
「わお!」
「移譲」
「ん?・・」
3人から代金を受け取ったので早速テントを手渡し移譲した。そしてオークションサイトに取引終了の報告をする。
やれやれ、ひと安心。
これからテントの説明して、あとはキャンプを楽しむだけだ。
「皆様、お買い上げ有り難うございます。既に皆様は「Arienn22テント」の所有者なので、所有者にしか明かせない秘密を共有して貰います。これから話す事はあまりにあり得ないので、ご家族にも秘密にすべき事だと考えます」
「えぇ、それほど・・・」
期待の籠もった目から一転して、不安な色が浮かんでいる。だがもう遅い、今から君たちは俺の共犯者だぞ、ふへへへ。
「まずはSNSで炎上していたと言うペグ問題。それを今、確かめて下さい」
皆、テントを動かそうとしているが、勿論揺れるだけで動かない。しまいには山道さんとキャンズキさんが「せーの」の合図で両端を持ち上げようとしたが無駄だ。
「「・・・」」
動かない事を確認した皆は、無言で俺を見ている。
「実はこのテントは、所有者が分るのです。今時のスマホも音声案内が出来ますよね。あれと同じ様な物だと思って下さい」
俺はテントに手をつけて唱えた。
「我がテントArienn22よ、解除せよ!」
って、つい詠唱してしまったぜ。いやぁ、デモンさんの気持ち分るわー。
「ツルギさん、動かしてみて」
「はい、あおぅ!」
かよわい?筈のツルギさんの手でもテントは簡単に持ち上がり、ふわりと浮いた。皆の目が再び点に・・・
「ど・どうなっているのですか?」
「では、もう一度、固定!」
「う・動かねえ・・・」
「奇妙な縁から私はこのテントを手に入れました。その方が教えてくれたのは、このテントは魔法で出来ていると」
「魔法、キター」
「マジですか・・・」
「うーん」
「その時の私の反応は皆さんと同じでした。その方はテントについてはあまり知らないようで、移譲・固定・解除の指示と、
”固定、解除・移譲の他にも指示は可能。それはイメージするのが第一。但し大きな変更は材料が必要”と言うことのみでした」
「・・・」
「すると、先ほどの移譲で我々は自分のテントに指示出来る様になったと言うことですね」
「試して見ます」
3人は自分のテントを出して、固定や解除を他人のテントには指示できないことを試していた。俺はそれを見ながら椅子を出してビールを飲んだ。
彼等は一通り試すと、囲むようにテントを設営して、丁度テントに囲まれた四角い空間が出来上がった。キャンズキさんが真ん中に焚火台つきテーブルを設置して、ツルギさんが差し入れの野沢菜やつまみを並べ、椅子とビールを出してあっという間に宴会場が出来上がった。
「「乾杯!!」」
改めて自己紹介しあって、和やかな時間が始まった。
皆の年齢は、キャンズキさん>俺>ツルギさん(たぶん)>山道さんで、山道さんは見掛けによらずに28才だという。
「いやね。普通の髪型にしていたら業者に舐められるんですよ。業者って言う輩はヤクザまがいの者が多くて、私も苦労しております。それでたまにテント背負って山籠もりするのです・・・」
と、しっとりとビールを飲みながら山道さんは話している。
山道さんは畿内で不動産開発・マンション建設などをしている会社の次男らしい。兄さんは跡取りで会社にいるが、彼は現場回りをしているそうだ。
って山道工務店って一部上場の大手建設会社じゃん、御曹司じゃん、それなのにパンチパーマにハマーって・・・
家業が建設業って大変だな・・・
「そういう理由が会ったのですね。ところで山道さんの会社は、別荘地開発なんかもしていますか?」
「ええ。やっております。ヤマジンさん、別荘地に興味があるのならば紹介しますよ」
「別荘の所有にも興味はありますが、建築して販売をチラッと考えています」
「なるほど。「ヤマジン・ホーム」ですね」
別荘建築して販売するのも興味があるが、実は「家これシリーズ」がきになっていたのだ。その中に別荘地向きの絵が描かれているのだ。
「うちも長野で別荘地開発してますよぅ」
話にツルギさんが加わった。
「えっ、ひょっとしたらツルギさんって、剣不動産開発の方なんですか?」
「あら、山道君、知っているの」
「そりゃあ、地方大手の同業者ですから・・・」
「うん。正確に言うとね、親戚なの。叔父さんがやっている会社よ」
って、普通では無い皆さんの仮面がだんだん剥がれてきたよ。山道さんに続いてツルギさんも本名で、キャンズキさんは神崎という本名で東京の弁護士だそうだ。俺は・・・って自分の事はいいか。
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