第11話・談話の時間。


Arienn22テントの取引も終わり、自己紹介も終わってほのぼのキャンプが始まった。

そこで俺はテントの突っ込んだ説明をする事にした。なにせここに居るのは、家族にも教えられない秘密を持った共犯者なのだから。それに、外見まんまヤクザの山道君も、中身はお坊ちゃまで誠実・知性溢れる人だと判明したし・・・


「では、所有者になってから俺がみつけた出来る事を話します」


「「待ってました」」


「まずは、解除! それで、こうしてと、固定!」

 俺はテントを片面だけ縮めて1m×2mにして固定した。つまり一人用だ。


「こうすれば、テン場の狭いところにも対応出来ます。極端な例ではトイレ用のテントの様にも出来ます」


「「おお・・・」」

「なるほど」


「あの言葉覚えていますね。イメージが大切だと。では解除、広げて固定、前室!」


「「おおおおお!」」

と歓声があがった。その気持ちは良く分るぞ。


「まさに魔法ね!」

「魔法で出来ているか・・・」

「一人用のテントだな。これでも山では充分だな」


2m四角の前半分が底面の無い前室だ。室内との堺はメッシュ生地の壁が立ち上がっている。


「前室が無いのが唯一の難点だった」

「そうね、靴置き場が欲しいものね」

「調理場もね。それに雨が降ったときは大変だ・・あっ、ヤマジンさん、嵐の時はどうでした?」


「ふっふっふ」

「?」

「・・・」


 あ、つい声に出てしまった。皆引いているよ、きっと悪い顔をしていたんだろうな・・・


「失礼。あの時はテント表面がまるで滝のようになっていましたよ。ところが」


「ところが?」

「???」


「雨はテントの中に入らなかった。誰かテントに入って入り口付近に座って貰えますか?」


「ならば、最年少の私が」


 山道さんが自分のテントに入って、入り口付近に座る。俺は用意してあった水の入った5Lの携帯バケツを持つ。


「ま・まさか!」

と、山道君の目が点だ。


「行きますよ」と開いたテント入り口の上に水をぶちまけた。


「うっそー」

「信じられない・・・」

「あり得ん」

「魔法だ・・・」


 はい、「あり得ん」頂きました。水はテントの中に入り込むこと無く、地面に落ちてしみ込んだ。唖然とした皆の目が点。

 きっと今日は皆の視力が上がっているだろうな・・・とかいらんこと思った。


「では、次行きます。キャンズキさん、ご自分のテントに触って、折りたたんだ状態をイメージして、撤収って言って貰えますか」


「了解です。・・・撤収!」


 見る見るうちにテントが縮まって、最後にポンと、キャンズキさんの手の平に乗った。


「「「おおおおお」」」

「魔法だ・・・」

「あり得ん」


 皆が撤収を試した。それで手に乗ったテントを持って俺を見ている。


「皆さん、撤収の反対は何でしょうか、考えてみて下さい。多少言葉が違えどもイメージが出来れば発動すると思われます」


「展開!」

「設営!」

「復元!」


 おお、3人とも違う言葉で成功したぞ。なるほど、一人で考えるよりは応用が早く広くなるかも。

 それからも皆さんは独自に指示を出して試していた。その中で一番変化を見せたのはツルギさんのテントだ。


「「おおおーー」」

と、俺も声が出た。何とテントがブルーに変わったのだ。


「えへ、成功しちゃった。皆同じ色で我が家が間違えやすいから変色をイメージしてみたの」


「「変色!」」

とすかさず皆が詠唱したことはいうまでも無い。

 その結果、キャンズキさんは濃い緑・国防色だな。山道君は同じ国防色でも灰色の方だ。俺は、周囲の色に合わせて緑の中に紅葉を散らせてみた。


「まあ、綺麗! さすが隊長ね」

って、何故か俺が隊長になっているし・・・



「家族にも秘密にした方が良いという隊長の言う意味が分りましたよ。こんな事が出来るなんて家族が知ったら、たちまちに周囲に広まりとんでもない事になりますよ」

「ですよね-」

「同感です。下手をすれば某国の産業スパイに拉致されかねない」

「まさか・・・」

「いや、あり得ますよ、この技術が解明されれば軍事技術に応用出来るとか考えられたならば・・・」

「う、気を付けよう・・・」


 ふっふっふ、そうそう、もう君たちは抜けられない運命だ。

君たちは俺の共犯者なのだ。

・・・って声に出ていないだろうな? キョロキョロ・・・


「あっ、隊長、悪い顔していまーす」


ヤバッ、危ねえ・・


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