第4話 Unordinary
「なるほどね、一ノ瀬君がこの後会うと言っていたのが東雲さんだったのね」
姫凪はコーヒーに砂糖を入れ、スプーンで混ぜながら話しかけてきた。
「いやぁ~同じ高校だとは思ってたけど、姫凪ちゃんと同じクラスだとは思わなかったよ~」
「俺からしたら、二人が知り合いだったことに驚いてますよ」
そもそも神社の神主とただの高校生がどういったら接点持つのか不思議で仕方が無かった。それをいったら俺もなんだけど。
「それじゃ本題に入るわね」
姫凪が真剣な表情で見てくる。
「一ノ瀬君、あなた……聴こえているわね?」
「……っ!」
まさか姫凪からそんな言葉が出るとは考えてもみなかったため思わず言葉に詰まってしまう。
「姫凪ちゃんも気づいたか~。その通り颯汰君は僕らと同じだよ。前々から知ってはいたんだけど、僕らの仕事に巻き込むわけにはいかないかな~って思ってさ。でも今朝事情が変わったから僕とも会う予定をしていたんだよね~。まさか姫凪ちゃんと被るとは思わなかったけど~」
「それで、事情が変わったって今朝何があったんですか?」
その姫凪の問いかけに東雲さんは真面目な顔つきになった。
「……血影が颯汰君に反応した。だから僕も彼女に連絡させて貰った。しばらくしたら血影とここに来るらしいよ」
姫凪は東雲さんの言葉を聞き一瞬顔が強張ったが、ふぅと一息ついた。
「一ノ瀬君、今朝の話聞かせてくれるかしら?」
♢
「お会いしたかったです!主様!」
「えぇ!?ちょ、ちょっとどういうこと!?血影ちゃん!?」
頭がこんがらがってしまう。何が何だかサッパリ分からない。
「血影はずっと前からお待ちしておりましたよ?主様が遅かっただけですー!」
下をベーっとして笑いかけてきた。
「血影……?間違いないのかい?」
東雲さんが血影に尋ねる。
「血影が主様を見間違うはずがないのですよ!何せ血影と主様は心で繋がっていますから!」
そう得意気に話す血影ちゃんだが、まったく記憶にない。こんなかわいい子と出会ったこともない。
「えっとー……東雲さん?これはどういう事ですか?ホントに覚えがないんですけど」
「すまない颯汰君。今はちょっと詳しい話ができないんだ。放課後にまたここにきてくれないか?それに時間もないんじゃないかな?」
ハっとして時計を見ると登校時間ギリギリになっていた。急がないと間に合わなくなってしまうけど、抱き着いてきた血影ちゃんをどうにかしないとな。
「ごめん血影ちゃん!そろそろ学校に行かないといけないから離れてもらってもいいかな……?」
「やだぁああ!やっと主様と出会えたのにぃぃぃい!」
駄々を捏ねる血影ちゃんを東雲さんがやっとのことで引きはがし学校に向かえたのであった……。
♢
朝の出来事を簡潔に姫凪に伝えた。
「今朝の事は大体分かったわ。後は彼女が来てから詳しい事を話しましょ」
「彼女って誰のことなんだよ?今日はわけのわからない事が多すぎて頭がパンクしそうなんだけど」
後でちゃんと話すわよとだけ言ってコーヒーを飲む姫凪。東雲さんもマスターと話しちゃってるし、ちょっと気まずいかもと思っているとドアの開く音が聞こえた。
「うぃーっす、マスター。お、東雲も姫凪もいんじゃん」
そういって入ってきたのは20代前半ぐらいの女性だ。赤茶色の髪を後ろで一本に縛っていて、それが腰の上まで伸びているのが見えた。背中には竹刀入れのようなものを背負っており、煙草を口に咥えたまま店に入ってきた。
「んん~、そこにいるのが噂の子かい?血影が反応したっていうから来たけど本当なんだろうな東雲~?」
「えぇ……まぁこの目で見たので間違いはないかと……。それよりも
天海さんと呼ばれた女性は、渋々煙草を携帯灰皿に捨てた。そして姫凪の席の隣に座り始めた。
「さてと……どこまで聞いたかな、少年よ」
どこまで聞いたとかそれ以前に全く話の流れが掴めずにいるから分からないんだけどなぁと思っていると姫凪が助け舟を出してくれた。
「天海さんが来てから話そうと思っていたので、一ノ瀬君……彼はまだ何も知らないです。ただ言えるのは彼は聴こえる人間だということです」
「ふーん……。まだ何も知らないのね。それじゃまずは自己紹介からしますか。私は
「えーっと……一ノ瀬颯汰です。なにがなんだかサッパリなんですけど……」
「それに関してはこれから説明するから大丈夫よ。それじゃまずは見てもらう方が早いわよね?姫凪、ルガちゃん出していいわよ」
天海さんに促され姫凪は鞄から日常生活では見られないものをテーブルの上に出した。
それは一丁の拳銃であった。
アニミズムブラッドサースター 伊藤ぐわ @guwaito
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