第18話 6人目?はF級?
「アイカ、少ししたら悪いが冒険者ギルドに付き合ってくれ」
「冒険者ギルドに…ですか?」
アイカの顔が曇ったのが解る。
アイカは今迄『化け乳』と差別されてきた。
だからきっと外に出るのが怖いのだろう。
正確には人に会うのが怖い、それが正しい。
「ああっ、悪いが今回だけ頼むよ、俺とアイカでパーティを組む為にどうしても必要なんだ」
これからの生活を考えたら冒険者登録をする必要がある。
パーティを組んで置けば、もし俺に何か起きた場合、俺の預けているお金などをアイカに渡す事が出来る。
それに冒険者ギルドの方でもアイカが俺の仲間で更に俺の所有する奴隷として把握していればトラブルの回避に繋がる。
だから必要だ。
「だ、大丈夫です…リヒトさんと一緒なら怖くないです」
健気にもそう言っているが、顔色は青い。
「俺が傍に居るから大丈夫だ。安心してくれ!」
「はい…」
二人で街に出た。
やはり、周りの目は痛いな。
「あれ…なに不細工な胸」
「化け乳じゃない…良くあんな物ぶら下げて生きていけるわね!わたしなら生きていけないわ」
「教会に早く行けば良かったのに可哀そう」
周りから小さい声だが聞こえてくる。
余りに人数が多すぎて、これじゃどうする事も出来ないな。
俺は悲しそうな顔になるアイカの手を強く握る事しか出来なかった。
「大丈夫だから」
「はい…」
なにが大丈夫なのか解らないな。
◆◆◆
「よく来てくださいました! リヒト様、今日も竜種を狩られるのですか? それとも素材の買取りでしょうか?」
「今日はパーティの申請をしに来たんだが」
「パーティの申請? リヒト様は勇者パーティ『希望の翼』の所属ですよね!抜けたなんて初耳ですが…ちょっと調べてみますね…あっ抜けていないですよ!」
抜けてない?
まさかガイアは俺を追放しながら、俺の籍を抜く手続きをしていなかったのか?
「俺は一応勇者パーティから追放された身なんだが、どうすれば良いんだ?」
「リヒト様、勇者パーティは死ぬまで抜ける事は出来ませんよ」
「だが、俺は魔王討伐から外されたんだが、どうすれば良いんだ?」
「そうですね…あっ問題ないですよ! リヒト様が別動隊になれば良いんですよ」
「別動隊?」
「そう、別動隊です」
詳しく話を聞くとなんてことは無い。
勇者パーティ『希望の翼』のメンバーになると基本的にはもう死ぬまで抜ける事は出来ないそうだ
四職(勇者 聖女 剣聖 賢者)は国が認めた存在だから、魔王討伐まで離れるわけにはいかない。
それに対して俺はその4人と違い、四職でない為別行動をとっても問題が無いそうだ。
確かに国からもどこの団体からも支援を受けてないからそうでなければ生活が出来ないよな。
「それで別動隊だと何か問題があるのかな」
「リヒト様の場合は元から財布が別だから問題は無いですね、しいて言えば四職の方に頼まないと王と謁見出来ない事位ですね、他勇者パーティ特権は殆ど大丈夫ですね…あともうパーティに所属しているから他のパーティに所属が出来ないだけです」
これじゃ他のパーティに入れないし、自分でパーティを作れないじゃないか?
不味くないか?
「俺はパーティを組みたいんだが?」
「それは問題無いですよ? 別動隊のリーダーはリヒト様ですから、別動隊の所属としてパーティは組めます」
「それだと、何か違いがあるのですか?」
「名前だけでガイア様勇者パーティと関係なく、実質リヒト様とだけのパーティという扱いですね…まぁほぼ別のパーティとなります。あと勇者パーティ特権はリヒト様にしかありません。そんな所です」
「そうですか!それじゃ、パーティ登録お願いします」
「誰とですか?」
「彼女、アイカとです…」
「あの、リヒト様はS級冒険者なんですよ? それに別動隊で名前だけとはいえ勇者パーティ『希望の翼』のメンバーになるんですよ…そんな化け乳女じゃなくてもA級B級から幾らでも紹介します」
「俺は彼女とパーティを組みたいんだ! 他は考えていない」
「ですがリヒト様、今なら『剣姫ビューティ』や『ドラゴンキラーゴードン』なんて有名な方も…」
「俺は一緒に戦う仲間じゃなく、お世話をしてくれる存在として彼女とパーティを組むんだ、手続きをお願い出来ないかな」
俺が睨むと受付嬢は顔色が変わった。
「わ、解りました」
「あの…もしかして私…勇者パーティ『希望の翼』の所属になるんですか?」
「別動隊だが、そう見たいだな」
「不味くないですか?私奴隷だし無能ですよ」
「手続き的に問題はある?」
「問題はありませんね、ただ冒険者登録に『リヒト様の所有奴隷』と入るのとF級から冒険者スタートというだけですね」
「簡単に言うとS級パーティの別動隊に所属のF級冒険者…そういう事で良いのかな?」
「はい、それで間違いないですね」
「それじゃそれで登録お願いします、あとアイカの口座も作って俺の口座から金貨20枚(約200万円)入れておいて貰える」
「解りました」
「え~と私『希望の翼』の所属になるんですか?」
「まぁ、そう言う事みたいだな」
なんだかアイカがかなり驚いて固まっているし、周りからも何故か注目されているけど…まぁ良いよな。
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