第4話そして『統一合コン』へ。三人がそれぞれ別の三人に。そしてまたその三人が別の三人に『お鍋』を売れば

「ああ。食べてるよ。お肉だよね。それが?」


「モンスターは殺しちゃあダメって言うなら生き物を食べるのもダメなんじゃないの」


「なんで?どうして?」


「どうしてって…。逆にモンスターを殺すのはダメで自分が生きるために生き物を殺して加工された食肉を食べるのに疑問を抱かないって矛盾してない?言ってること」


「ポネーサ。『食物連鎖ピラミッド』って言葉を知ってる?」


「え?」


「あー、これだから。バランスです。草を草食動物が食べて、その草食動物を肉食動物が食べて、肉食動物の排泄物が肥料になってね。まあ、もっと細かく言うとあれだけど。だから僕がお肉を食べるのはすべての生き物のバランスを保つために協力してるんだよ。モンスター関係ないです。それにモンスターの肉は食べない主義ですんで」


「おい、クリブト。お前、モンスターを殺した後に見つけたモンスターが持っていた『薬草』を口にしてたよな?」


「もちろんそういうこともあったよ」


「その『薬草』を口にする時、その殺したモンスターの許可を取ってたのか?アイテムもそうだ。許可を取ってたか?」


「そういうのって詭弁と言うか。揚げ足取りじゃない?」


「お前なあ!」


「やめてえええええ!もうやめようよ!」


「ポネーサ、止めるなよ。こいつがこの調子だと魔王も倒せないぜ。つーか三人で行こうぜ。こいつはダメだ」


「アレックスもミザリーも落ち着いてええええ!」


「いいから。おい。『封印の石』を渡せよ。お前が持ってても仕方ないだろ」


「これのこと?」


 そして袋から取り出した魔王の力を半減させる貴重なアイテム、道具屋も恐れ多くて買取を拒む『封印の石』を地面に叩きつけて割るクリブト。


 パリ―ン!


「ば、ばか!お前何やってんのよ!」


「ごめん。手が滑った」


「こいつ…。もう止めるなよ、ポネーサ」


「待ってええええええ!」


「いいよ。ポネーサ。実はこんなこともあろうかと僕も新しい『仲間』を見つけておいたんだよ」


「え?何言ってるの?クリブト?嘘でしょ?」


「嘘じゃないよ。その人たちは僕の考えを素晴らしいと言ってくれたよ。ラッキーシューズで一千七万九千六百九歩、歩けばいい、一緒に歩こうとも言ってくれた。最高の『仲間』だろ?身長170センチで大体一万歩が約8キロ。8000キロちょい歩けばいいだけだろ?君たちはその努力が出来ないって言うし。だったらお互いのためにここで別れた方がいいじゃん。それにその『仲間』たちは他にも『金運が上がるお鍋』とか格安で譲ってくれたし。『統一合コン』にも誘ってくれたし。あ、この『鍋』買わない?普通なら売ってあげないけど君たちは今まで一緒に楽しい時間も共有してきたこともあるから特別だよ。しかも在庫はあるんで一人が三人に売ればその三人の売り上げの半分が自分のものになるんだよ。そしてその三人がまたその『仲間』の三人に売れば。そして…」


(ひそひそ)


「(おい…。やばくない?)」


「(いや、手遅れでしょ…)」


「(だめえええ!まだ間に合うからあ!)」


「ん?何?ヒソヒソ話してさあ。別に『鍋』以外にも在庫はたくさんあるからさあ」


「(もう三人で頑張っていこうぜ…。足りない分は探そう…)」


「(もっと早くに気付いてりゃあ…)」


「(だめえええ!今ならまだ間に合うからあああああ!クリブトがいないと魔王は倒せないんだからあ)」


「だから何話してんの?」


「あ、いや、クリブト。みんなも改心してね。貴方と同じような考え方に改めることにしたの。確かにモンスターを殺すのはよくないわね!『ラッキーシューズ』で一から歩きましょう!」


「え?でもレベルマックスでしょ?もう」


「ううん。他にも今まで黙ってタンスや引き出しとかから勝手に持ち出したアイテムやお金も全部返しに行くから」


「返すだけ?」


「ううん。ちゃんと謝るし、手土産も持っていくわよ」


「うーん…」


「クリブト!だからね!ね!」


 仲間たちの知らない間に魔法よりも強力な洗脳を受けていた勇者クリブト。ポネーサの説得もあり、ミザリーやアレックスと共にこれから今までの蛮行を悔い改める旅に出ることになるのであった。


 目指せレベルダウン!


~完~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

経験値10,079,609分の罪 工藤千尋(一八九三~一九六二 仏) @yatiyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ