第3話君たちは汚いよ!

「それにさあ…」


「ああ!?まだあんのか!?」


「ちょっと頭痛くなってきたわ…。頭痛に利く魔法ってなんだっけ?」


 イライラアレックスと呆れモードのミザリー。勇者クリブトは止まらない。


「レベル上げにしてもそうじゃん…」


「金の次は経験値かよ。なんだ?言ってみろ。どうせ『弱いモンスターさんをたくさん殺して強くなって意味があるの?』とか『虐殺行為だ』とか言うんだろ?」


「…うん」


「お前なあ!ホントに混乱の実を大量にキメてんじゃねえのか?」


「ここまでくると『洗脳』レベルだわ。魔王に操られてんじゃねえの?」


「僕は正気だよ!」


「みんな!ここは聞きましょう!クリブトの言い分を!ね、ね」


「ポネーサも…。悟りの本で人生悟ってりゃ世話ねえぜ」


「みんなが履いてる靴、あるでしょ…」


「靴?ああこれ?『ラッキーシューズ』?一歩歩けば勝手に経験値が1増えるこの靴がなに?」


「まさか…、お前…」


「そうだよ!一千七万九千六百九歩!その靴を履いて歩けばモンスターを殺さなくても済んだじゃないか!みんなも分かってただろ!?ただ歩けばいいだけの話じゃんか…。それを楽してさあ…。一気に経験値を稼ぎたいのが見え見えだよ!」


勇者クリブトにアレックスが殴り掛かる。


「お前!うぜえよ!」


「うるさい!お前なんか!お前なんか!」


「止めてぇー!クリブトもアレックスも!」


「俺は手ぇ出してねえよ。ぺっ!」


「ゴホッゴホッ」


「ほらあ!クリブトが!回復呪文『ほほーい』!大丈夫?」


「あ、ありがとう…。ポネーサ。その優しさをモンスターたちにも持って欲しかったね」


「え?今度は私?」


「ああ。そうだよ。ポネーサ。ポネーサは賢者になる前の職業はなんだった?」


「武闘家だけど」


「賢者様になるには経験値が大量に必要だよね」


「何が言いたいの?」


「ほら…、殺せば一気にレベルが上がるあのシルバーアイアンスライムの群れを大虐殺したことを忘れたとは言わさないよ」


「それは…、でも殺さないと彼らは攻撃してくるじゃない!だから仕方なく!」


「『仕方なく』?…フフフ、ハハハハ!『仕方なく』だって?じゃあ聞くよ?彼らは必死で逃げてたよね?そんな逃げていく相手に『回り込む』必要があったの?『回り込んで』まで一匹残らず殺す必要があったの?教えてよ。ねえ、ねえ!」


「クリブト…」


「あー、確かにあったねえ。ポネーサがいつも『回り込んで』くれたから時間効率よかったもんねー」


「君たちは汚いよ!」


 パチ―ン!


「クリブトのバカぁ!なんで分からないの!?じゃあ逆にあなたへ聞くわ?あなたはすっごくガッチリしてるけど『お肉』食べてるわよね?」


 そしてクリブトの怒りの矛先は一気にポネーサへと変わる。

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