第2話ご立派だよね…
「おいおいしっかりしてくれよ!何言ってんだ今更お前さあ!」
パーティの先頭で壁となって体を張ってきた戦士のアレックスが切れ気味に言う。当然である。
「そうだぜ!気でも狂ったか!?あたいがもう一回殺して目を覚まさしてやろうか!?」
武闘家から僧侶に転職したミザリーも勇者を責める。
「ちょ、ちょっと!仲間割れはダメえ!即死魔法禁止ぃ!」
魔法使いから賢者に転職したポネーサがなんとか仲裁に入ろうとする。
「いいんだ。ポネーサ。むしろ最初に言わなかった僕が悪いと思うんだよ…」
「はあ?『最初』?お前、初期の頃からそんなこと考えてたのかよ!?」
「うん…」
「だったら先に言え!てか先に言え!思った時に言え!最後の戦いの最中だぞ!そこは終わってから言え!」
「ごめん…。でも…」
「『でも』だと!?」
「アレックス!ここは聞こうよ。ね、ね」
「ちっ、ポネーサが言うならまあ…。で。『でも』ってなんだよ」
「…さっきもみんな見ただろ?」
「あ?何を?」
「全滅して教会で蘇生してもらったじゃないですか…」
「それが何?全部お前のせいだろ」
「…教会の神父様って『お金』取るんだ…」
「はあ?」
「魔王を倒せ、君たちなら出来るとか応援してる『ふり』してさあ。きっちり『お金』だけは取るんだよ…。きっちり四人分。ご立派だよ…。『神』の『父』だよ」
「ダメだ。こいつ…、混乱の実でも食ってんじゃねえの?」
「僕は正気だよ!分かるよ。変なこと言ってるってのは。でもさあ」
「まあ待て。いいか。俺たちはこれまで道具屋や武器屋、防具屋でも『適正』な金を払ってきた。宿屋にもきっちりと『適正』な金を払ってきた。分かるな?」
「うん…」
「武器屋にも生活がある。道具屋にも生活がある。防具屋も同じくだ。もちろん宿屋にも生活がある。経済を回さないといけないのは分かるな?」
「うん…」
「そこで『僕たちは魔王を倒すんでえー。そんな僕たちから金取るんすかあ?』とか言ってたら経済は回らんよな?破綻するよな?分かるよな?」
「うん…。でも…」
「『でも』なんだ?」
「…勝手に…るのは…」
「ん?聞こえない。もっと大きい声で」
「人の…タンス…取るのは…」
「おいおい。もっとシャキシャキ喋れよなあ」
「人の家のタンスや引き出しを開けたり、壺を壊したり、樽を覗き込んで持ち主に無断で勝手に道具やお金を奪ったりするのはどうなの!?取られた人の経済はどうなるの!?一生懸命働いて貯めたお金かもしれないよ!そんなお金で買ったものかもしれないよ!」
「いやいや…ちょっと待て…」
「君たちは汚いよ!」
「こいつ…!言わせておけば…」
「止めてぇ!巨大ハンマーで本気で殴ったら死んじゃうからあ!」
勇者クリブトの告発は止まらない。
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