15話 1日の終わり
ギルドを出た俺たちはいくつかの食材、素材を買い込み宿舎に帰宅した。
素材一式は合成屋に罠を作成するように依頼してきた。
こんな子供が罠など何に使うかいぶかしげに見られたが、大量の依頼ともあれば喜んで引き受けてくれた。
宿舎に帰り、ルカは夕飯を作ってくれていた。
俺はその間にお風呂を洗い、浴槽に水を入れる。
お風呂場には台所のかまどから出る排熱を利用した仕組みになっているようで、すぐに浴槽の水は温まってきた。
ルカと協力して家事をしているようで面白い、湯加減もいい感じになったところで夕飯も完成したようだ。
テーブルには豪勢な食事が並べられており、クエスト依頼ですっかり忘れていた食欲がわいてきた。
「すごいおいしいよ!」
「よかった、まだたくさんあるからいっぱい食べてね。」
「それにしても、ルカって本当に料理が上手だよね。」
「お父さんに無理を言って11歳からこの宿舎で一人暮らししてたからね、ミリアがよく夕飯を食べにくることも多かったから練習したの。」
ミリアがよく宿舎に寄っていたというのは初耳だった。
俺がここでお世話になってからは来ていないということは気を遣ってくれているのかもしれない。
「シエル、明日は何か予定がある?」
「うーん、特に決めてないかも。ロベルト団長から返事を待つのと、時間があれば少し訓練をしようかなって思ってたくらい。あ、ギルドにも少しだけ寄りたいかな。」
「そっか、時間があればこの街を見て回らない?休息もかねてリフレッシュできると思うんだけどどうかな。」
「もちろん!」
俺は二つ返事で了承した、街並みは全て把握済みだが実際に見て回るのも作戦を立てる上で悪くない。
まあ、それは建前でルカとデートできるのが一番の楽しみだ。
食事を終え、お風呂からあがると俺は布団に入りルカを待つ。
日本の冬ほどではないが布団の外はかなり冷え込む。
最初は遠慮していたが2日目からはベッドに入って待っていることがデフォルトになっていた。
これは下心ではなくお風呂であたためた体を冷やさないため、そして布団をあたためるためだ。
いわゆる懐でわらじをあたためていると同義、やましい気持ちは一切ありませんロベルト団長。
そんなことを考えているとルカがお風呂からあがり、そのまま布団へと入ってくる。
3日目とはいえ、やはり女の子と一緒に眠るのは緊張する。
背中には柔らかな感触とぬくもりを感じる。
「シエル、今日も助けられちゃったね。すごい活躍だったよ。」
「えへへ、そうかな。」
「ごめんね、私なにもできない上に色々迷惑かけちゃって……。」
「そんなことない!」
俺は勢いよくルカの方に向き直ると、その瞳をまっすぐに見つめた。
しかしベッドの中ということもあり、俺とルカの距離はもう目の前だ。
ルカはびっくりした様子で俺を見つめ返す。
しまった、ちょっと気恥しい。
「あ……えーと、ごめん。俺はルカに助けてもらったし、料理もご馳走になってるし、こうやって宿舎に泊めてもらってるし本当に感謝してるんだ。だからそんな風に思わないでほしい。」
「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいよ。」
そう言うとルカは俺を優しく抱きしめる。
しばし固まっていると彼女は眠ってしまった、ここ数日危険な目にあってたし疲れがたまっていたんだろう。
俺は彼女の胸に頭を預けると、ふくよかな感触とまどろみの中、眠りについた。
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