14話 迎撃
雄たけびをあげながらグレータートロールは俺たちに向かい駆け寄ってくる。
「ルカ、早くこっちに!」
「……あ、足が――」
だめだ、距離を離せるかと思ったがルカは足がすくんで動けなくなっている。
(くそ!やるしかない、集中するんだ!)
俺は急ぎ弓を構えると、弦に素早く矢を番えグレータートロールを捉えた。
狙いやすい胸に狙いをつけ、矢を引き放つ。
ギュラアア――――ッ!
放たれた矢は試し撃ちした時よりもさらに強く、風を引き裂くかのようなうねりをあげながら目標に着弾する。
グレータートロールは、その強靭な巨躯を一瞬で切り刻まれバラバラとなった。
賞金首トロールが倒れこんだ場所には、彼の所持品であった大きなこん棒が転がっていた。
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アイテム名:グレータートロール・グダのこん棒
説明:B級賞金首グダの残したこん棒。
ギルドで換金することができる。
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俺は戦利品を拾い上げ、周囲の安全を確認するとルカの方へと急ぐ。
「うそ……倒しちゃった?」
「ケガはない?一撃で倒れたし、たいしたことない相手でよかった。」
万が一ルカに怪我でもあろうことなら、ロベルト団長におしおきされそうだ。
時間もおそらくお昼をまわっていただろうこともあり、俺たちはギルドへと帰還することにした。
想定外ではあったが賞金首の獣人を倒せたことで臨時収入が得られるのは嬉しい誤算だった。
▼▼▼
ギルドに到着した俺は早速入手したアイテムをミリアに手渡す。
「というわけで、戦利品の換金とクエストの収集アイテム査定をお願い!」
「いや……これB級賞金首のトロールの戦利品だよね?」
戦利品を受け取ると、ミリアは目を丸くして問いかけてくる。
それにこたえるように俺はうなずいた。
「いつの間にB級賞金首を倒せるようなパーティーを組んでたのさ。」
「その場にいたのは私とシエルだけだよ。」
「は?まさか二人で倒しちゃったの!?」
「……二人でというか……シエル一人で。」
「噓でしょ。バケモンか。」
ミリアも信じられないと言わんばかりに固まっていたが、すぐに戦利品と収集アイテムの査定をしてくれた。
「おい、あの子供B級賞金首を倒したらしいぞ。」
「本当かよ、それなりに腕の立つ冒険者でもないと危険が伴うような相手なのに……。」
俺たちの様子を見た周囲の冒険者たちもかなり動揺している。
まさかこんな子供が賞金首のモンスターを倒せるとは誰も思ってはいないはずだ。
「お待たせ~ギルドカードに今日の分の成果を記録しておいたよ。それと、悪いんだけど冒険者ランクについてはギルド側で判断したい部分があるから少し待ってもらいたいかな、まさかD級冒険者が一人でB級賞金首の獣人を倒しちゃうなんて想定してなかったから。」
「もちろん、査定ありがとう。」
俺は報酬の金貨5枚、銀貨1枚を受け取ると自分のポケットにしまいこんだ。
ギルドの依頼だけだとあまり多くの報酬は得られないが、賞金首の報酬はかなり破格なものだった。
「今回の功績で多分冒険者ランクは上がると思うから楽しみにしていて。でも話には聞いてたけど、シエルくんがそんなに強いとはね~。君に少し興味がわいてきたよ、今度お姉さんとデートしない?」
「っ!こら、ミリア!シエルに変なこともちかけないで!」
「ミリアはお姉さんというよりは妹みたいな感じだよね。」
「……ボク、これでも17歳でルカよりも年上なんだぞ。」
不服そうなミリアと談笑しながら、しばらくして冒険者ギルドをあとにした。
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