Life isn’t worth living, unless it is lived for someone else.

朝のキスとオカルト研究部

 幸せ過ぎて記憶が吹っ飛んだ。曖昧すぎて昨夜のことはよく覚えていない。

 いつの間にか眠り、いつの間にか起きていた。

 俺は菜枝とどうしたんだっけ……?


 バスタオル一枚の菜枝と一緒にベッドで眠ったところまでは覚えている。


 それから、俺は……襲った? 襲われた? シてしまったのだろうか。


 だめだ、なにも思い出せない。


 リビングでぼうっとしていると制服姿の菜枝が笑顔でやってきた。俺はそんな可憐な姿に見惚れる。



「おはようございます、兄さん」

「おはよう、菜枝」


 花のような笑み、照れ臭そうにする菜枝はいつもに増して可愛い。


「おはようのキスを……してください」


 そして、これもいつもに増して大胆だ。

 菜枝が求めてくる。

 俺はもちろん菜枝の期待に応え、横に座らせた。そして、朝のキスをした。ほんの一瞬の唇と唇が触れ合うだけのキスだけど、十分な幸せを貰えた。


 それから、菜枝の作ってくれた朝食を食べ――登校だ。

 この変わらない生活が続いていく。


 多くは望まない。ずっとこのままでいい。

 幸福であればそれだけでいいんだ。


 家を出て学校へ向かう。


 そよ風が頬を撫でてくすぐったい。

 菜枝が自然と俺の手をつなぐ。


「行こうか」

「はい、兄さん」


 途中までは手を繋いで歩く。

 それが習慣になっていた。


「ところで最近、寒くなってきたな」

「そうですね、もう冬です」

「もう十二月になる。クリスマスとかお正月とかいろいろイベント盛りだくさんだ」

「楽しみが増えていいですね!」

「プランを練っておくよ」

「分かりました、お願いします」


 雑談を交え、のんびりと歩いて学校へ。途中、生徒が増え始めジロジロ見られる。さすがに菜枝と手を繋いで歩くと目立つ。

 そもそも菜枝は異次元の可愛さだからなぁ。

 おっとりとしているし、容姿もアイドル級に整っているのだから男は自然と注目してしまう。さらに制服越しでも分かる巨乳。武器が多すぎて可愛いの最終兵器でしかない。


 本当に義理の妹で良かった。

 こうして合法的に付き合えるのだから。


 もし実の妹なら、こんなことはできないし――下手すりゃ、別の男と付き合っていた未来もあったかもしれない。そんなの耐えられない。


「……」

「どうしました、兄さん」

「いや、ちょっと嫌な世界線を思い浮かべてしまった」

「別の運命ってことですね?」

「そんなところだな」

「大丈夫です。どんな運命になろうとも、わたしは兄さんの義妹ですっ」


 ぎゅっと腕に絡んでくる菜枝。素敵な笑顔すぎて俺の邪悪に染まろうとしていた心が一瞬にして浄化された。良かった……!


 学校に到着。


 今日も各々それぞれの教室へ向かい、同じように授業を受けていく。俺もまた真面目に授業を受けていく。


 休み時間になり、隣の席の天笠さんが俺の方へ歩み寄ってきた。



「神堂くん、ちょっといいかな」

「なんだい、天笠さん。またなにかお誘い?」

「うん、そんなところ」


 天笠さんは毎週、なにかしらのイベントに誘ってくる。しかも勝てば賞金が出る。おかげで俺と菜枝の生活費になっている。受けない手はない。

 それに、天笠さんは菜枝の実姉。親交を深めておいて損はないのだ。


「この前は野球だったけど、今度はなんだい」

「オカルト研究部で勝負しよ!」

「オ、オカルト研究部で!? どうやって!? てか、勝負とかあるの?」

「もちろん。先に呪縛霊か守護霊を確保した方が勝ち!」


 ゴーストバスターズじゃあるまいし、そんな無茶苦茶な!!

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