勝てば奴隷になってくれる? 負けてもデート!?

 なんやかんや試合は進み――。


 Aチーム2点、Bチーム0点という結果になっている。まずいな、そろそろ点数を入れないと負けてしまう。


 試合もいよいよ後半に差し掛かった頃。

 そろそろ菜枝にカッコいいところを見せないとな。


 ……俺の出番だ。


 打席に立ち、身構えていると当然のごとく天笠さんが現れた。ついに出てきたか。



「ピッチャーは、天笠さんか」

「もちろん」

「悪いけど打たせてもらうよ」

「さあ、どうかな」



 なんだか自信満々だな。

 注視していると、天笠さんは見事な投球フォームを見せた。……くるッ!


 さすがに変化球はないはず。

 ストレートと見た……!


 これなら余裕で――む!?



 な、なんだこの速い球は!



 バットを振りかぶるものの、俺は空振りしてしまう。……クソ、マジか!



「……天笠さん、今の球……」

「フフフ。黙っていてごめんね、神堂くん」

「な、なに!?」


「私、今まで本気じゃなかったんだ」

「え……」



 天笠さんはそれ以上は言わず、再び球を投げ込んできた。まてまて、この球速……100km/h以上は出てるぞ。


 なんて球を投げやがる!


 本当に女子か!?



 だが、負けていられない。

 俺は気合でバットを振って球に当てたが、ただのファウルで終わった。



 ……くっ!



 まずいぞ。このままではアウトだ。



「兄さん、がんばってくださいっ!」



 菜枝の声援が飛んできた。

 俺はそれだけでやる気がでた。まだだ、まだ終わらん! 菜枝の為にも俺は勝つんだ。


「天笠さん、俺は打つよ」

「へえ、面白い。神堂くん、私が勝ったらデートしてよ」


「なに!?」


「その代わり、私が負けたら奴隷になってあげるよ」


「んな!?」



 言ってること無茶苦茶だー!!

 焦っていると、天笠さんはストレートを投げてきた。……落ち着け俺。惑わされるな俺。


 打つことだけに集中しろ。


 てか、天笠さんとデートできる!? 奴隷にできる!? ってだけで……俺にメリットありまくりじゃねえか!!



 うおおおおおおおおおおお……!



 って、興奮している場合ではないっ。

 ボールが目の前に迫っている。


 これを打つしかない!


 いやだけど、デートも悪くはない……が、菜枝を悲しませてしまうからな。それはナシだ。でも、勝っても天笠さんが俺の奴隷に? あれ、どちらにせよ状況が悪いような。


 ええええい、どのみち打たなきゃ負けだ!!



「これでえええええッ!!!」



 なんとかボールに当てた。

 強く撃ち返すと、ボールは空高く飛んでいく。よし!!



 ぐんぐん伸びていく球。

 一番奥の柵に『ガシャン』と音を立ててヒットした。


 判定は――



『ホームラン!!』



 自身も驚きのホームランとなった。



「お……おおおおおおおおお!」「すげええええ!」「神堂くん、ホームランじゃん!」「野球部に欲しい逸材だ」「これなら勝てるかもしれんぞ!」「やるぅ!!」「プロゲーマー部に勧誘するか」「いや、ぜひ囲碁部に」



 大絶賛の中、俺は確実にベースを踏んでいく。

 そして、ホームベースに戻り、みんなの元へ戻った。



「兄さんのホームラン、とても素敵でした!」

「ありがとう、菜枝。まだ点数に差はあるけど、がんばろう」

「はいっ、わたしも全力を出します」



 ちなみに、菜枝はここまで空振り。

 相手が野球部だからなぁ……無理もない。


 今回は、俺の相手は天笠さんだったから、ラッキーだったが、これからは野球部がピッチャーになって襲い掛かってくるだろう。


 気を引き締めないとな。

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