試合開始! ピッチャーは俺!?

 勝った方のチームにアマゾ~ンギフト券十万円が進呈されることになった。

 マジかよ。


 まさか、こんな勝負になるとは!


「菜枝、お前は無理して参加する必要はないんだぞ」

「わたしも野球をやってみたいんです」


 けどなぁ……。

 心配しかないのだが、本人はやる気マンマンだ。かつてないほどに燃えている。


 ここで反対して蚊帳の外にするのも申し訳ない。

 仕方ない。


「分かったよ。ただし、ケガはしないようにな」

「大丈夫です! これでも野球は姉さんに習ったことがあるんです」


 天笠に……?」

 ということは、天笠は経験者なのか。お嬢様なのに意外すぎるな。


 しかし、天笠の運動能力はそれほど高くないと分析している。以前、ボーリングでボロボロだったからな。


 きっとこの試合も余裕さ。



 グラウンドで一礼し――ついに試合開始!



 Bチームは後攻。守備からだ。

 ピッチャーは野球部の庵治あじくんだ。彼は腕前には自身があると言っていたが、果たして……。



 見守っていると庵治くんは、ストレートを連発。おぉ、結構早いな。



 打たせることなく相手を三振させた。すげえ!

 それからも庵治くんは見事に……って、打たれた。打ち上がったボールがこっちにきやがる。俺は必死に走ってボールを――キャッチ!



「さすが兄さんです!! かっこいい!」

「いやいや、これくらい普通さ」



 あっぶね~。もう少し出遅れていたら拾えなかったぞ。

 一回目はとりあえず、無事に終わり攻守交替。


 今度はこっちが打つ番だ。


 トップバッターは、プロゲーマー部の五十里いがりくんだ。……大丈夫かな。相手は野球部のピッチャーだぞ。



「この僕に任せな!」



 自信はたっぷりだけどなぁ……。

 しかし、三振に終わった。だめだこりゃ。


 なんやかんや試合は進み、早くも守備へ。少々、こちらが不利っぽいな。


 今度のバッターは……なんと菜枝の姉である『天笠 薺』だ。


 ついに来たか。天笠さん。



 しかも、ホームラン予告してるし……!

 無理だろ……。



「神堂くん、私の本気見せてあげる!!」




 セカンドに立つ俺に対し、そんな言葉を叫ぶ天笠さん。マジかよ。

 しかも、庵治くんが交代してくれと俺の方へ来た。


「へ!?」

「神堂くん、天笠さんのご要望なんだ。悪いな」


「ちょ、え、庵治くん!?」

「天笠さん相手の場合だけ、君がボールを投げるんだ」


「なにいいいいいいいいいい!?」



 まてまてまて!!

 そんなこと一言も言ってなかったぞー!



 は、はかったなあああああああああああ!!



 ――というわけで、俺がピッチャーとなった。



 ……ナンダッテ……。




「さあ、今度こそ勝負だよ」

「天笠さん、こんな特殊ルールありなの!?」

「悪いね、野球部は買収済み・・・・なの」



 サラっとなんてことを!

 まあいい、相手が天笠さんなら何とかなる……はずだ。


 まさかピッチャーマウンドに立つことになるとはな。


 周囲からの応援も凄いし、期待に応えねば。



「いくぞ、天笠さん!」

「いいよ、いつでもホームランを打ってあげる」



 残念だったな、天笠さん。

 俺は小学校の頃に野球を経験しているんだ。その頃は俺の全盛期といっても過言ではなかった。あの感覚が久しぶりに戻ってきている。


 だから、絶対に勝つ。



「いけえええええええ!!」



 俺は全力投球した!!


 だが、天笠さんは人が変わったような動きを見せ……まさか! ウソだろ!!



「甘いよ、神堂くん。私はね、バッティングセンターに通っていたんだ……三日間だけ!」

「少ねええええええ!!」



 ツッコんでいる間にも空振りする天笠さん。




『ストライク!!』




 ……やっぱり、だめじゃん。

 次はチェンジアップを投げ込み、ストライクを取った。更に次も。そうして俺は天笠さんに勝った。空振り三振っと。



「いや~、さすが神堂くんだね、カッコ良かった」

「敵から褒められると、なんだか妙な気持ちになるな」

「でもね、まだ試合には負けたわけじゃないからね」

「分かってる。引き続きいい試合をしよう」

「うん、じゃあ、また」



 ベンチに戻っていく天笠さん。案外楽しんでいるようだな。こっちも負けていられないぞ。賞金十万円の為に、俺はなんとしても勝つ。

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