大勝負の予感! 柔道部、オカルト研究部、将棋部、囲碁部、プロゲーマー部大集合!

 菜枝との同棲生活が始まって三か月を過ぎた頃。

 夏の香りを感じ始めて、そろそろ衣替えの気配を漂わせていた。


 もうそんな時期か。


 俺は相変わらず菜枝と幸せに暮らしていた。

 トラブルのない生活が一番だ。

 ただ平穏に好きな人と過ごせれば、俺はそれで良かった。


 だが、望んでもいないイベントは向こうから飛んでくる。それが運命であるかのように。



「神堂 來くん。今ちょっといいかな」



 前の席の『おの きこり』という一風変わった名前の男子が話しかけてきた。珍しいこともあるものだ。



「なんだい、斧くん」

「少し前から聞きたかったんだけどさ、部活に入るつもりはない? ウチ、ちょっと人手が足りてなくてね」


「すまん、俺は帰宅部なんだ。今もこれからも部活をやるつもりはない。それに、義妹の面倒を見なきゃいけないし」


「ああ、あの妹さんか。可愛いよね」



 ……知っていたのか。

 いや、当然か。

 この教室の前に何度も姿を出しているし、クラスメイトの噂にもなっていた。俺に可愛い義妹がいるということが。


 だけど、それだけの話だ。

 それ以上でもそれ以下でもない。



「というわけだ。無理なんだ」

「そうか。なら仕方ないね」


「すまない」



 断ると斧は諦めて前を向いた。

 部活はちょっとなぁ……。

 やっぱり、菜枝との時間を大切にしたいからな。



 * * *



 放課後、教室を出ようと席を立つのだが、隣の席の天笠さんが俺の方へ寄ってきた。……近っ。



「神堂くん、勝負しよっか」

「いつものやつか」

「うん、いつもの。ある部活に助っ人へ行くんだけどね。そこで勝負しない?」


「ぶ、部活? どこの?」


「野球部だよ。これでも私、腕力に自信があってさ」



 野球部ねぇ、俺はスポーツはそれなりに出来るつもりだけど……ウーン。



「……悪いけど」

「賞金は十万円」


「……っ」



 悪魔の囁きだ!

 ちくしょう。金には弱いぞ、俺。

 十万円ありゃ、家賃とか水道光熱費が浮く……。生活が楽になるんだ。なら、仕方ないかな。



「どうする?」

「分かった。菜枝に連絡しておく」


「おっけー!」



 俺は天笠さんの誘いに乗ることにした。



 そのまま教室出てグラウンドへ向かった。

 外には既に野球部のメンバーが待ち構えていた。その中には斧の姿もあった。……って、まさか!!



「あれ、神堂くんじゃないか! 部活は無理だったんじゃ!?」

「す、すまない……斧くん。天笠さんに誘われて……」


「僕の誘いは断って、女子の誘いには乗るとか酷いなぁ~」

「ごめんごめん。まさか野球部だとは思わなかったんだ。それに、生活が掛かっているとなると話は別でね」


「なるほどね、まあいいや。神堂くんはBチームへ。天笠さんはAチームへ入ってくれ」


 どうやら、チーム分けされているようだ。


 Aチームは、天笠さんと球部のメンバーが五人、その中に斧もいる。他に助っ人が三人いた。助っ人は柔道部だったり、オカルト研究部の臨時メンバーのようだ。随分歪だな。


 そして、こちらのチームは俺、野球部が三人、将棋部一人、囲碁部一人、プロゲーマー部が二人……最後に菜枝がいた。



 ……ふむ。



 ふむぅ!?!?!?



 俺は思わず、三度見した。




「な、な、な、菜枝ぇ!?」



「あは……あははは……兄さん、わたしも参加みたいです」



 なぜかチームに菜枝がいた。

 まさか!?


 思わず天笠さんの方を見ると、彼女はニヤリと笑っていた。誘っていたのか!! なにしてんだよぉ~~~!


 菜枝は極度の運動音痴なんだぞ!!


 ケガでもしたら大変だってーの。



「菜枝は参加しなくてもいいんだぞ」

「いえ、いいんです。わたしもやらせてください、兄さん」

「だが……」


 困惑していると天笠さんが俺の肩に手を置いた。


「いいじゃない、神堂くん。ここにいる全員がわたしの“勝負”に参加しているんだからさ!」



「って、えええッ!?」



 ま、まさかの大勝負じゃねえか!!

 嘘だろ……。

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