【番外編】ゲームで勝負! 賞金は十万円 後編

 岩陰に隠れながら、俺はM4カービンで天笠さんを狙い撃ちした。

 だが、彼女も必死に回避してこちらへ向かってくる。


 な……なんて動きをしやがる。バケモノかよッ!


「ふふーん。神堂くん、私を侮ったね!」

「マジかよ! 天笠さん、まるでプロゲーマーの動き!」


 このままでは敗北も時間の問題だ。

 いったん距離を取って建て直すか……!


 俺はアイテムのスモーク弾を撒いた。


 地面から煙が噴き出て視界が悪くなった。この状況に乗じて俺はこの場所を離れていく!


 必死に走り、俺は小屋を見つけた。


 中へ入ると回復アイテムを発見。

 減っていた体力を回復。


「あぶねー、あぶねー」

「ちぇー。逃げられたか」

「そうでもないさ。天笠さん、いよいよデッドゾーンも迫ってきた。俺は先に中央部へ向かうよ」


「私を誘っているのかな、神堂くん」

「かもね!」



 他の敵を倒しながらも、俺は中央部にある街へ入った。

 ここは激戦区だ。


 弾がそこら中で飛び交っていて、まるで戦争状態。短期決戦モードだから、残り時間も減ってきた。


 手榴弾を手にした俺は、それを建物目掛けて投げていく。


 うまく敵を排除して、俺は先へ進む。

 いよいよ残り人数も十人に満たなくなった。


 九人、八人、七人と確実に減っていく。


 更にはデッドゾーンがどんどん迫ってきた。



 そして、残りはついに五人、四人……。


 俺と天笠さん、あとは外国人らしき男が一人。もう一人は日本人らしい。



 外国人が『Specterスペクター』という名で、もう片方が『Somniumソムニウム』という女の子アバターが残っていた。


 だが、一分後には天笠さんが『Specterスペクター』を撃破。


 これで残り三人!


 ある家の中で慎重に気配を探っていると、突然扉が開いて天笠さんが現れた。いつの間に!


「くそっ!」

「見つけたよ、神堂くん! ここで死んでもらうよ!」


「死んでなるものか!!」



 階段を上がりつつ、M4カービンで天笠さんにダメージを与えていく。腕に負傷を負わせた! 少しは体力を削れたはず。

 いや、回復アイテムくらい持っているか……。

 致命傷を狙わないとダメだ。


 手榴弾を投げて時間を稼ぐ。


 ズドンズドンと爆発音が続いていく。次の攻撃手段を考えないと――とォ!?


 いきなりRPGが飛んできて、目の前が爆発した。


 やっべ、死ぬって!!


 てか、RPGとかレア武器よくゲットできたな!


「な、なんなの今の!?」

「え、今の天笠さんじゃないの?」


「あんな武器、持って――なッ」


 突然背後から現れた『Somniumソムニウム』がとんでもない俊敏な動きで天笠さんの頭を撃ち抜いた。


 FAMASファマスだって!?


 フランスの軍用小銃だ。


 スペック的にバランスの良い銃だが……こんな風に使いこなすヤツがいたとは。しかも少女キャラが! 中身はプロゲーマーか!?


 ともかく、天笠さんは脱落――って!!



『――――ズドンッ!!!!!!』



 その刹那で俺も撃ち殺されてしまった。



 ……へ。



「えええええええええええええ~~~!?」




 一位:【Somniumソムニウム

 二位:【Johnジョン

 二位:【Mercuryマーキュリー



 結果、一位がソムニウム。

 二位は同時で俺と天笠さん。


 うそーん……。


 ゲームが終わった。



「神堂くん……あのソムニウムって人、やばかったね」

「あぁ、あれは間違いなく世界大会とかに出場している人だと思う」



 二人で呆然としていると背後の茂みからゴソゴソ音がして、なにか飛び出してきた。



「兄さん、それと姉さんもお疲れ様です!」



 そこに現れたのは菜枝だった。

 手にはスマホを持っていて――あれ。


 あれってバトロワゲー『Parabellumパラベラム』!?



 まさか!!



「ちょ……菜枝、あんた。そのゲーム」

「ええ、姉さん。一位を取ったのは、わたしのキャラ『Somniumソムニウム』なんです!」



「「え……ええええええッ!!!」」



 俺も天笠さんもぶったまげた。

 まさかあの最後の生き残りが菜枝だったなんて!!


 そんなバカな……。



「菜枝、このゲーム得意なのか?」

「うん、わたしめっちゃやり込んでるんですっ!」



 ……優勝は菜枝に決定した。


 そんな、ウソだろー!!



「これは驚いたわ。まさか菜枝がプレイしていたとか」

「姉さんってば、兄さんと一緒に楽しそうだったんですもん」


「なるほどね。私の敗北かぁ~。予想外だったけど、菜枝の勝ちは勝ちだね。賞金十万円は菜枝のものよ」


「え、ホントですか!?」


「悔しいけど、私も神堂くんもやられちゃって同着二位だからね~」

「ありがとうございます、姉さん!」


 菜枝は、天笠さんに飛びついて喜んでいた。

 本当に仲の良い姉妹だ。



 * * *



 放課後、菜枝が俺を迎えに来た。


「兄さん、今日帰ったら『Parabellumパラベラム』をやりませんか?」

「いいだろう。今度こそは最後まで生き残ってやる」

「では、私に勝ったら十万円と……そうですね、毎日好きって言いますし、キスも差し上げますっ」


「マジ!? いいね、その勝負……乗った」



 俺と菜枝のゲームバトルが始まった……!

 だが、俺は菜枝を見くびっていた。


 我が妹はバトルロイヤルゲームにおいては“最強”だった。



 まさか、こんな特技があったとは……!



 俺と菜枝のゲーム対決はしばらく続くことになった。




【番外編・完】




 番外編は以上です。

 また気が向いたら『本編』を少しやる予定です!


 続きが読みたいと感じたらでいいので★で評価いただけると嬉しいです。

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