番外編

【番外編】ゲームで勝負! 賞金は十万円 前編

神堂しんどう らい……神堂くん」



 人間が空を飛ぶなんて、ありえないことだが――俺はその瞬間を目撃していた。



「天笠さんがスーパーマンのように飛んだ……!?」



 ように見えた。

 彼女は木から飛び降りてきて、見事に着地。一瞬の飛行を披露してくれたが、危険だっつーの!!


 てか、なんだこれ。



「ふぅ~、死ぬかと思った」

「校庭の裏庭に生えている木なんかで何してんのさ」

「神堂くんが来るタイミングを見計らって飛んでみました」

「意味が分からないよ」


 天笠あまがさ なずなは、菜枝の姉だ。

 なぜか俺に勝負を挑み、毎回敗北しては資金提供してくれる。おかげで最近は生活も安定してきたほどだ。


「今日も勝負しましょ」

「またかい。別にいいけどさ」

「もちろん、賞金は出すから」


「いつもありがとう。じゃあ、なにをしよっか?」

「スマホで勝負ね」

「スマホで?」


「説明はこっちで」


 ベンチへ向かい、腰掛ける。

 天笠さんは改めてゲーム説明をしてくれた。


 どうやら、アプリゲームのバトロワゲー『Parabellumパラベラム』で勝負するつもりのようだ。シンプルに最後まで生き残った方が勝ちということらしい。


 バトルロイヤルかぁ……苦手ではないけど難しいんだよなぁ。


「なるほど、パラベラムか。少しプレイしたことあるよ」

「そうなんだ。私は得意なんだ、このゲーム」

「マジか。どれくらいプレイしているんだ?」

「う~ん、もうかれこれ一ヶ月かな」


 一ヶ月……ということは、俺と同じか。なかなか強いかもしれないな。

 天笠さんのゲームスキルがどれほど高いか未知すぎるが、面白い。この勝負は受けてみるか。


「おっけー。インストールはしてあるから、あとは同じ部屋に入ってバトルだけだな」

「名前教えて。それとフレンド登録よろしく」



 俺のキャラネームは『Johnジョン』だ。


 天笠さんは『Mercuryマーキュリー』という女性キャラのようだ。


 登録を終え、あとはゲーム開始。


 ポチポチと画面を進めていく。



「……さて、これでバトル開始だ。生き残った方が勝ちでいいんだね」

「うん。逆を言えば先に死んだ方が負け」

「分かりやすい。なら、俺が天笠さんを撃ち殺してもいいわけだな?」

「もちろん。こっちも容赦しないよ」



 ロードが始まって――いよいよゲームスタート!


 マップは、山々に囲まれた荒野フィールド。


 時間ごとに活動できるマップが狭まって、デッドゾーンが迫ってくる。デッドゾーンに留まっていると数分も経たずに死亡する。

 つまり、時間制限もあるのだ。


 その間に装備やアイテムを整え、敵を駆逐して生き残らなければ。



 俺はさっそくパラシュートで地上に着地。

 家を発見して中でアイテムを物色していく。



「天笠さん、俺はもう銃を手に入れたぞ! 早くも装備が整ってきている」

「早いね、神堂くん。でもね、油断していると足元をすくわれるよ?」

「なに言ってるんだい。俺が有利に違い――うわッ!?」


 二階でアイテムを探していると、床が抜けた。

 一階に落ちて、そこには天笠さんのアバターがいた。しかも、ハンドガンを構えていやがった。



「や、やべえ……」

「油断したね、神堂くん!」



 弾を回避しながらも、俺は家から脱出。体力を少し削られたが、まだ死んではいない。回復アイテムがあれば何とかなる……。



「あぶねぇ……」

「惜しかったなぁ。もうすぐで神堂くんを倒せたのに」


「くそ、負けてたまるか!」



 ちなみに賞金は『十万円』だ。

 大金が懸かっているし、俺が負けた場合は天笠さんとデートになってしまう。そんなことになったら、菜枝が悲しむ!


 そうはいかんぞ!


 近くの川へ避難しつつ、敵を倒していく。

 他のプレイヤーが俺に襲い掛かってきたんだ。


 こんな時に……!


 M4カービンで迎撃し、どんどん先へ進む。


 しかし、背後から只ならぬ気配を感じた。



「神堂くん、君を逃がさないよ」

「げっ、天笠さん! くそっ……しつこい」



 しかも、いつの間にかショットガンを持っていた。俺、めっちゃ狙われてる!

 こうなったら天笠さんと戦うしかないか。


 ここで倒せば俺の勝ちでもある。


 やるしかない……!

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