くすぐったくて、気持ちいです……

 展望窓を覗いて東京の景色を望む。

 やっぱり怖いのか、菜枝は密着してきて小さく震えている。


「大丈夫?」

「……兄さんに支えて貰えれば大丈夫です」

「分かった。こうしてやれば落ち着くだろ」


 俺は菜枝の腰に手を添えて抱き寄せた。

 すると震えが止まって安心しきっていた。俺も正直、ビビっていたが菜枝が傍にいてくれるおかげで、冷静でいられた。


 よくこんなタワーを建てたものだ。

 人類は凄いな。


 なんて感心していると、菜枝がねだるように俺の耳元で囁いた。


「兄さん、手を貸してください」

「ん? 手を?」


 菜枝に委ねると、俺の手を自身の服の中に入れさせ――うわッ!

 突然の行為に俺は心臓がドキッとした。


 まてまて、周囲に人がいっぱいいるんだぞ。


 こんなところで、そんな……えっちな……。


「……おへそ触ってください……」

「……っ! な、菜枝……俺のフェチをよく理解しているな」

「もちろんです。兄さんってば、わたしのおへそをよく見ていますよね」


 バレていたか。

 菜枝の腰回りウエストは、細くて……くびれも芸術的だ。たまに見えるおへそも可愛いんだよな。凄く気に入っている部分だった。

 もちろん、それを口には出来なかったが。気づかれていたとは驚いた。


「いいのか、こんなところで」

「こういう場所だからこそです。ドキドキしませんか」

「めっちゃしてる……。菜枝の肌、スベスベしてる」

「兄さんの手……くすぐったくて、気持ちいです……」


 明らかに息を荒くする菜枝は、頬を真紅に染め上げていた。……なんという背徳感。350メートルの展望台で俺は菜枝を攻めていた。


 これは中々できない経験だし、思い出作りになるかも。


 俺も嬉しいし、菜枝も喜んでくれる。


「菜枝、もう我慢できない。このまま下の方に手を入れたい……」

「そ、それは……恥ずかしいです……。でも、兄さんが望むなら……」


 てっきり拒否られると思ったんだけど、さすが我が義妹はえっちだ。俺の望みを聞いてくれた。


 だけど、ここは中々人も多い。

 少し離れて隅へ移動した。


 この場所ならそれほど見られる心配もない。

 人の目も外へ向いているからな。


 俺は菜枝を後ろから抱きしめ、改めて手を伸ばしていく。

 今度は秘密の花園へ。



 心臓の高鳴りが加速していく。

 意識を失いそうになるほどに、俺は動悸が乱れていた。



 これほど緊張したことはない。

 でも、もっと菜枝に触れたい。この好きという感情を、愛情を注ぎたい。



 ――だから。



(…………ポンッ)



「ちょっと、そこの君~」



 急に肩を叩かれて、俺はドキッッとした。



 う、うわあああああああぁぁ!?



 なんだ!?



 まさか警備員さんにバレた?

 女の子をこんな風に抱いて不審がられたか……。逮捕も覚悟して振り向くと、そこには――え?



「ちょ、ウソだろ。天笠さん、なんで!?」



 ビックリした。

 背後には『天笠 薺』がいたのだから。


 普段とは違って大人びた私服姿だった。可愛い……じゃなくて、なんでいるんだ!



「驚いた? 菜枝もやっほー。って、そんな密着して……けしからん。離れなさい」

「ね、姉さん! どうして……あぅ」



 菜枝は恥ずかしがって離れた。

 くそう、いいところだったのに。



「今日は東京にあるお店でブランド物を買い物」

「あぁ……姉さんってば、ルイス・ビトンがお好きですもんね」


「ヘルメスのバッグを取りにきたの。限定品のヤツね」



 さすが財閥のお嬢様。

 わざわざ東京まで買い物に来るわけか。


 ……あ、少し後方に執事のアルフレッドさんもいるじゃないか。



「まさか東京スカイツリーにいるなんて」

「私も神堂くんに会えると思わなかったよ。菜枝にもね。二人はデートかな?」


「そんなところ」



 俺はデズニーへ入場できなかったことを話した。俺のミスによって東京スカイツリー観光になった事情を説明すると天笠さんは納得した。



「ならさ、今からデズニー行こうか?」


「「え!?」」


「菜枝は知っていると思うけどさ、ほら、うちって顔パスで入れちゃうんだよね」



 ま、まさか『プライベートVIP』ってヤツか……!?



 四十~五十万円もする金持ち専用のプランだぞ。

 いやだが、天笠さんは『顔パス』と言っている。それ以上の裏プランが存在していたとはな……。



「い、いいのかい?」

「いいよ。二人とも知らない仲じゃないしさ」



 なんという偶然。

 なんという奇跡。


 ここはお言葉に甘えようかな。



★★★

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