わたし……我慢できないから……
ギフト券三十万円分は、後日貰えることになった。大金だからな、仕方ない。
「敗北者は早々に立ち去るよ」
潔く去って行く天笠。
なんていうか、負けても楽しそうだ。もしかして、あんまり本気ではなくて楽しむためにやっているのだろうか。
「菜枝、俺たちは昼飯にするか」
「はい、兄さん。いつもの場所へ」
将棋部の教室を後にし、校庭にあるベンチへ。
外は気持ちの良い天気だ。
今日も昼休みはのんびりできるなぁ……と、思ったけど、さっきの戦いで時間をだいぶ使った。休憩できても十分程度か。
「ほら、インドカレーパン」
「わぁ、本場のインドカレーが入っているんですね。こんなパンもあっただなんて」
「今日から新発売らしい。美味そうだ」
飲み物も手渡し、さっそく封を開けた。
さっそく齧ってみるとボリュームたっぷりなカレーが出迎えてくれた。普通のカレーパンに比べて量も多くて、味もしっかりしいてる。
少々スパイシーでピリ辛なのもポイントが高い。
「美味しいです、兄さん」
菜枝も気に入ったようで、美味しそうに味わっていた。
「そういえば、三十万円は何に使おうか」
「あ~、姉さんに勝ったので貰えるんですよね。でも、姉さんはなぜそんな大金を……」
不思議そうに首を傾げる菜枝。
言われてみれば確かに。
ボウリングの時も、ほとんどメリットがなかったように思える。
「単に遊びたいだけじゃないか」
「賞金を出す必要はないのでは……」
「それは俺も思うけどね。おかげで菜枝との生活が維持できるから、ありがたいけど」
「そうですね。姉さんには感謝しないとです」
「また改めて礼を言っておかないとな」
カレーパンを頬張りながら、俺は天笠が少し気になり始めていた。
なぜここまでしてくれるのかと。
近い内に聞いてみるかな。
食事を終え、残り五分。
菜枝は俺の肩に寄りかかって頭を預けてきた。眠そうに目を細めて。
「あの、兄さん……」
「どうした改まって」
「チア部のことなんですが」
「ああ、そういえば前に体験入部して以来だったな。どうするんだ?」
「やっぱり止めようと思います。兄さんとの時間を大切にしたいので」
「そっかぁ。チアガールの菜枝、めちゃくちゃ可愛かったけどなぁ」
「そ、それはとても嬉しいです。でも、どうせなら兄さんと一緒に活動できる部活がいいなぁと思ったんです」
なるほどな。その手があったか。
だが、残念ながら俺はバイトもある。アパート暮らしを維持しなければならないのだ。生活の為だ。部活はできない。
それを伝えると菜枝は、ちょっと残念そうだった。
「ごめんな。だから、菜枝は部活やってもいいんだぞ」
「いえ、無理するほどではないので」
「そっか。悪いな」
「大丈夫です。それより……それよりも、兄さんと……えっちなこと、したいです」
「……!?」
急に耳元で囁かれて、俺は心臓がバクバクした。菜枝の囁きはぞわぞわするっていうか、エロすぎる。
油断していると菜枝は急にえっちになるな。それがいいんだけど。
「兄さん、もっとわたしに触れていいんですよ? 胸とかスカートの中に手を入れてもいいんです。たくさん撫でてください……。疼いて切ないんです」
そんな涙目で訴えかけられたら……俺は、俺は……。
触れようとしたが――。
チャイムが鳴ってしまった。
……くそっ、タイムリミットか。
「せめて、頭を撫でる。ほら……」
「……嬉しい。けど、わたし……我慢できないから……」
菜枝は飛びついてきて、俺の首筋に甘噛みした。胸や体を押し付けてきて、俺はもうどうすることもできなかった。そんなに俺が欲しかったのか。
菜枝は本当にえっちな妹だな。
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いったん不定期更新になりますが、10万文字は目指したい気持ちが強いので、なるべく続行いたします。
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