もちもちの谷間、透ける制服
目覚めると金縛りのような束縛感を感じた。でも、手は動かせる。なんとなく布団をめくると、俺の体の上には――菜枝がいた。マジか。
そんな子供みたいに健気に抱きついてこられると、胸がキュンキュンとした。なんという最高の朝を迎えられたのだろう。
もうしばらくは菜枝の可愛い寝顔を堪能しようじゃないか。
…………しばらくして。
「…………おはようございます、兄さん」
ボケボケした表情の菜枝。
相変わらず朝に弱い。
体を少しずつ解しながら起こすと、目の前に神々しい谷間が見え始めていた。真っ白で特盛。……菜枝のヤツ、胸元を大胆に露出しすぎだ。刺激……強すぎ。
「パジャマが乱れてるよ、菜枝。それ以上は
「んん~? へーきですよぉ~。風邪は引きません」
いや、少なくとも俺は平気ではないのだが。興奮してしまいそうというか――既にしていた。菜枝は顔も体も、その仕草も何もかもが魅力的だ。可愛いの塊だ。猫並みに可愛がりたくなるのだ。
「……ちょ、近いぞ」
「兄さん、朝の“ちゅー”してくれますか」
目の前に菜枝の桜色の唇が。
しかし、それよりもボリューム満点の谷間が……! ふわふわのもちもちの谷間が寸前だった。破壊力抜群の角度に、俺は意識を失いかけていた。
……ああ、これはもう降参だ。
俺は白旗を上げた。
「菜枝……その、見えてるぞ」
「はい……? なにがでしょう?」
鼻血を噴きだす直前に達した俺は、指でその部分を指摘した。菜枝はようやく気付いて顔を真っ赤にしていく。ボンッと爆発して涙目に。
「す、すまん……不可抗力というか」
「に、に、兄さん……ずっと見ていたのですか!」
「菜枝が俺の上で寝るから」
「そ、それは……だって、兄さんが……好きだから…………。あぅ……」
もっともっと顔を赤くする菜枝は、そんな気持ちをポロッと吐露した。そんなマグマみたいに照れながら好きとか言ってくれて、俺まで照れるっていうか……死ぬほど幸せだ。
* * *
朝の仕度を済ませ、家を出た。
今日も学校だ。
少しだるけど、菜枝がいるから俺は毎日が楽しい。一人の時とは大違いだ。
玄関前で待っていると、制服姿の菜枝がヒラリと可憐に出てきた。ふつくしい……。
「菜枝は制服姿になると特に可愛いな」
「ありがとうございます、兄さん。とても嬉しいです」
小さくてふわふわしていて、放っておけなくなる。以前、変な男にも狙われたし、俺が守ってやらないと。
学校まで歩いて向かう。
いつもと変わらない今日だと思っていた。
けれど。
天候が急に変わって――雨が降り始めた。強い雨だ。
「しまった、傘なんて持ってないぞ」
「今日の天気では晴れでしたけどね」
「天気予報はアテにならないな。とりあえず、学校まであと少しだ。走って向かおう」
ダッシュで駆け抜けていく。
学校が近くなると、同じように雨を浴びながら走る生徒がいた。
気づけば雷雨を伴っていた。
雷がゴロゴロ、雨はバシャバシャと……まさにバケツをひっくり返したような雨になっていた。
辛うじて昇降口に入った俺と菜枝。
「……うぅ、濡れちゃいました」
ハンカチで雨を拭う菜枝。
だが、下着が透けてしまっていた。
これは……参ったな。
菜枝のヤツ、なかなか派手なの付けてるんだな。知らなかった。
って、また指摘しなきゃならんのか。
だが……他の男に見られるわけにもいかない。
「菜枝、ちゃんと拭っておけ。その……下着が透けてる」
「えっ……! やだ、兄さん……見ないで」
「大丈夫だ。あっち向いてるから。というか、今日は菜枝の油断が多いな」
「気が緩み過ぎですかね」
「そうかもな。油断大敵だぞ」
「はい、気を付けます」
「ちゃんと乾かすんだぞ。そのままだと風邪引くし」
「大丈夫です。タオルがあるので胸の上に乗せれば見えませんから」
ピンクの可愛いタオルを取り出す菜枝は、胸の上にそれを置いた。なるほどな……巨乳の特権ってヤツだな。
少し前、胸の上にスマホとかペットボトルと置くのが流行った。それと同じ要領だ。
あれなら心配はいらないか。
「じゃあ、またお昼」
「了解です、兄さん」
素敵な笑顔をもらい、元気が出た。
外は大雨だけど菜枝のおかげで俺の心は晴れやかだ。
ルンルン気分で教室へ向かう。
二年の教室はすでに半分ほどの生徒で埋まっていた。
席へ向かうと、
「おはよう~、天笠さん」
「おはよう、神堂くん」
俺はカバンを置いて席に着いた。
それにしても、天笠って隣の席だったっけ。俺の記憶では新島という男子だったはずだがな。
足を組んでニヤっと笑う天笠は、なにか企んでいるように見えた。
またどこかに連れてかれるのだろうか。
以前、ボウリング場へ拉致られたしな。
でもあの時は勝利して十万円をゲットしたから、助かったけど。ああ、そうだ、お礼を言わないと。
「この前はありがとうね、天笠さん」
「この前? ああ、十万円ね。それは別にいいよ。それより、またキャトルミューティレーションしていいかな?」
またかっ。
また始まるのか……!
★★★
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