わたし、えっちな子なんです……

 菜枝は、俺の体を丁寧に洗ってくれた。

 俺は相変わらず慣れなくて、目が泳いでばかりだった。


 でも、俺も菜枝の体を洗いたい。


「そろそろ俺も」

「……はい。その、優しくお願いします」

「お、おう」


 俺は交代して、菜枝をバスチェアに座らせた。

 背後から見ても我が妹は可愛い。


 普段は腰まで伸びる髪も、今はお団子ヘアだ。クリームパンみたいで美味しそうだ。つい触れたくなってしまうが、今は我慢だ。


 シャワーで背中を洗い流していく。


「……っ」

「大丈夫か、菜枝」

「だ、大丈夫です。ちょっと驚いただけですから」

「熱かったら言ってくれ」


 俺は菜枝の滑らかな肌を流し続けた。


「気持ちいです、兄さん」

「それは良かった。それにしても、菜枝は相変わらず細いな」

「そうですか……? これでもちょっと太ったかなって」

「そうなのか。全然変わらないけどな」

「数グラムだけ増えた気がします」

「それっぽっちかよ」


 誤差の範囲内じゃないか。

 女の子はグラム単位で気にするものなのか。知らなかったな。


「兄さんに嫌われないかと、いつも冷や冷やしています」

「たった数グラム増えただけで嫌うわけないだろ」

「お肉プニプニなったところなんて、恥ずかしくて死んじゃいます……」

「う~ん。そうかな。ちょっとムッチリしている方が俺は好きだけど」


「そ、そうですか? なら、もう少し……食べようかな」

「その方がいいと思う。菜枝は痩せすぎだからね」


 細身で巨乳なのだから恐ろしい。

 きっと、同じクラスの女子から恨めしく思われているだろうな。


 俺はボディソープを手にして――泡立てた。


 緊張瞬間だ。

 菜枝の背中に触れていく。


「……っ。兄さん……くすぐったいです」

「菜枝は敏感だな。我慢できるか」

「……がまん、します」



 明らかに無理している感じだが、俺は続けた。こんな、ぷるぷる震える菜枝も可愛くていい。普段なら絶対に見せない表情を俺だけに見せてくれている。


 それが何よりも嬉しかった。


「よし、終わった。よく我慢した」

「ありがとうございます、兄さん。そ、その……前も洗いますか」


「……ま、前!?」

「胸とかも」



 その瞬間、俺はドキドキして死にそうになった。

 さすがに前は無理だ。

 今の俺にはまだ覚悟が足りなかった。


 だけど、菜枝は違った。


 こちらに振り向いて水着を外そうとしていた。



「だ、だめだっ!」

「……兄さん、ごめんなさい。わたし、えっちな子なんです……知っているでしょう?」

「あ、ああ……知ってる。菜枝はいやらしい女の子だ。そこが愛おしくてたまらない。でも、その、俺……鼻血がッ」


「に、兄さん!?」



 興奮しすぎて俺は鼻血を噴きだして、死にそうになった。



 菜枝がえっちすぎるから……俺は、俺はもう……だめだ。



 * * *



 風呂から出て、俺は自室で仰向けに倒れていた。

 鼻血は止まったが、危うく大量出血で死ぬところだったぞ。


 死んだ爺ちゃんの元へ逝ってしまうところだったぜ。



「……ふぅ」



 ようやく落ち着いてきたところで、菜枝が扉をノックしてきた。



『あの、兄さん……入っていいですか』

「ああ、いいぞ」


 申し訳なさそうに部屋に入ってくる菜枝。なんだか気にしている様子だった。


「大丈夫ですか?」

「なんとか平気だ。なあに気にする必要はないよ。菜枝が魅力的すぎただけだから」

「それって、わたしのせいですよね」


「いや、興奮しすぎた俺のせいだ。自業自得なんだ」


「ごめんなさい。わたし、調子に乗っちゃって……」

「そんなことはない。ほら、こっちにおいで」



 俺は菜枝を手招きした。

 今日も一緒に寝たいからだ。

 もう菜枝なしで寝るなんて無理だ。



「本当に良いんですか」

「怒ってないよ。むしろ、菜枝にはずっと傍にいて欲しいと思ってる」

「兄さん……嬉しい」


 ちょっと泣きそうになって――でも、菜枝は堪えていた。


 しばらくして菜枝は俺の布団に入ってきた。


 少し遠慮しているのか距離感があった。でも俺は菜枝を抱き寄せた。ぎゅっと抱きしめて――抱きしめた。


「菜枝、今日も幸せをありがとう」

「わたしも兄さんのお傍にいれて嬉しいです」

「もっと幸せにしてやるからな」

「…………嬉しすぎて、涙が」


 顔を俺の胸に埋める菜枝の表情は分からなかったけど、嬉しき泣きはしていたと思う。

 これでいい……これで。



★★★

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