生クリームのように甘い時間
大物も獲得したし、ゲームセンターを去った。
お店を出る前にスターライトバックスへ立ち寄った。コーヒーとかフラペチーノが美味いんだよな。
今は期間限定のメロン・ストロベリー・オレンジフラペチーノという三色融合を果たしたミックスドリンクが売られているようだ。
なんだか色合いも芸術的……!
「気になるのか、菜枝」
「期間限定ですからね。ちょっと……いえ、かなり気になります」
「そうか。じゃ、兄ちゃんが買ってやる」
「え……でも」
「遠慮するな。ほら」
菜枝の手を引っ張って、俺は列に並んだ。
少しすれば順番が回ってきた。
メロン・ストロベリー・オレンジフラペチーノは、690円だった。……思ったより高いな。けど、ゲームセンターでそれほどお金を使わなかったし、ヨシとしよう。
受付のお姉さんに注文。
しばらくして品が届く。
「あれ、兄さんは注文したなかったのですか?」
「俺はいいよ。菜枝が幸せなら、それでお腹いっぱいだからさ」
「そ、それは反応に困っちゃいます……」
両手を頬に当て、照れ臭そうにする菜枝は空いているテーブル席へ向かい、座った。俺も腰掛け、菜枝にドリンクを手渡し――見守る。
さっそくストローに口をつけ、菜枝はメロン・ストロベリー・オレンジフラペチーノをゆっくり味わっていた。
刹那、菜枝は鐘が鳴りそうなほど幸せそうな笑みを零した。おぉ、これは大当たりだな。
「美味しいか、菜枝」
「はぁ~~~…。これは甘酸っぱくて、瑞々しいです。生クリームも甘々ですっ」
「へえ、そんなに美味いのか?」
「兄さんも、どうぞ。ほら、飲んでくださいっ」
差し出されるメロン・ストロベリー・オレンジフラペチーノ。……マジか。
そのストローを差し出されたということは『間接キス』になるわけだが、菜枝は気づいているのだろうか。
けれど、せっかくのご好意を無碍にするわけにはいかない。
俺は菜枝の差し出してくれているストローに口をつけた。緊張しながらも俺はフラペチーノを味わう。
お、
お、
おおおおおおおッ!?
「……うまあっ! ミックスジュースみたいだけど、しつこくなくてサッパリしている。甘さも丁度良いな。幸運と踊ってるようだ」
「そうでしょう、兄さん」
菜枝は再び、ストローに口をつけていく。
……のだが、少しすると菜枝の手が止まっていた。
「どうした?」
「い、今気づいたんですけど、わたし兄さんと間接キス……」
「……俺は最初から気づいていたけどね」
「ごめんなさい、兄さん」
「なんで謝る。俺は嬉しかったぞ」
「良かった。嫌われたらどうしようかと」
「嫌うわけないだろ。むしろ、嬉しいっていうか……」
「じゃあ、これもしてくれますか」
フラペチーノの蓋を開け、人差し指で生クリームを
ま、まさか……これを舐めろと!?
マジか。
周囲を気にしなくなったとはいえ、これはハードルが高い。
いや、ここは度胸を見せるところだ。
菜枝の期待を裏切らない為にも、兄としても……ここは行動で示すべきだ。俺がどれだけ菜枝のことが好きなのかを。
「……い、いくぞ」
「は、はい」
さすがの菜枝も耳まで真っ赤にしている。
指先も震えているし。
結構無茶をしているように見える。
俺だって頭がどうかなりそうだ。
きっと誰か見てる。
下手すりゃ学校中の噂になるかもしれない。でも、それでも……俺は。
菜枝との一時を優先した。
ゆっくりと菜枝の指を舐め、生クリームを口に含んだ。
口を離すと、菜枝は満足そうにしていた。
「…………えっと、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう兄さん」
「これ、めちゃくちゃ恥ずかしいな……」
「わたしもです。ドキドキがまだ止まらないです。こんなにも鼓動が早くなるなんて、思わなかったです……」
お互いに照れ合い、しばらく沈黙が続いた。
これは間接キスよりも反応に困ってしまうな。でも、なんだろう。このホワホワした気持ち。
幸せとはまた違う感覚。
菜枝を見ているだけで、俺は頭がぼうっとした。
ずっとこんな時間が続けばいい。
今日も、明日も、明後日も――。
★★★
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