義妹がムラムラしている

 五月女に菜枝を預け、俺は教室へ。


 教室に踏み入れた瞬間、俺の席に座る天笠の姿があった。なにか企んでいるような、そんな表情を向けてきた。……嫌な予感だ。


「おはよう、天笠」

「おはよ、神堂くん」

「そこは俺の席だぞ」

「うん、知ってる。このまま座ってもいいよ」

「そんなこと出来るかっ。それより、なんで俺の席に座っているんだ」


 まるでふとももを見せつけるように足を組む天笠。スカート短すぎ……白い肌がまぶしいぞ。


「また勝負して欲しいからだよ」

「またか。俺はまたキャトルなんとかされるのか」

「うん、そのうちね。じゃあ、覚悟しておいて」


 俺に拒否権はないらしい。

 まあ、朝から良いものが見れたから気分はいいけど。


 数分後にはホームルーム。

 担任が淡々と授業を始めていく。



 一限目、二限目と進んで……三時限目の体育の授業。マラソンの予定だったが、担任の都合で急遽、体育館で自由に遊んでいいことになった。



 いわゆる陽キャ共は、バスケなりドッジボールではしゃいでいるな。俺は隅っこで仮眠だ。このまま昼を迎えて、菜枝と一緒に過ごすんだ。


 そうプランを練っていると、他のクラスの生徒もやって来た。……あれ、どこかのクラスと被ったのか。



「あれ……兄さん」

「ん? って、菜枝!」



 なぜか体操着姿の菜枝がいた。

 ……そうか、一年と授業も場所も被ったらしい。奇跡的だな。まさか授業中に菜枝と会えるなんて。しかも、体操着。


 汚れひとつない白い体操着と紺のショートパンツ。


 菜枝は巨乳なせいか、膨らみの主張が激しい。少し動くだけで揺れ動いている。てか、周囲の男子の視線が集中しまくっているじゃないか。見るんじゃねえッ!



「わぁ、偶然ですね。兄さんと会えて嬉しいですっ」



 一輪の花のような可愛い笑顔を向けられ、俺はうっとりしてしまった。菜枝の柔らかい表情には毎度癒される。……義妹で良かった。



「俺のクラスも体育の授業なんだ。自由時間でね」

「そうでしたか。こちらもなんです」

「へぇ、そんなことがあるんだな。じゃあ、一緒に過ごすか」

「はいっ、一緒がいいです」


 俺の隣に腰掛ける菜枝。

 それだけで周囲の男子は、恨めしそうに俺を睨む。……憎悪を向けないでくれ。仕方ないだろう、義妹なんだから。


「菜枝の人気凄いな。男子が見られまくりだな。美少女転校生だし、注目度は抜群ってか」

「そうなんです。連日話しかけられていますよ。でも、五月女さん――いえ、四季ちゃんが守ってくれるんです」


 今も菜枝を男子から遠ざけようとドッジボールに巻き込んでいる。俺との約束守ってくれているみたいだ。助かる。


「良かった。菜枝、知らない奴にはついて行くなよ」

「大丈夫です。わたしは兄さんにしかついていきません」


 俺の方へ寄り掛かってくる菜枝は、さりげなく胸を押し当ててきた。……柔らかい。


「な、菜枝。近いぞ」

「こういう機会は滅多にないと思いますから」


「だ、だけどな……」


 そんな時だった。

 急に誰かが叫んだ。正面を見るとボールが物凄いスピードでこちらへ飛んできていた。やっば、菜枝に当たる!!


 俺は直ぐに立ち上がり、菜枝を守った。



 だが、正面から受けたので“ボ~ンッ!”っと俺の顔面にボールが命中。……ぐはッ!


 そのまま撃沈する俺。



「に、兄さん!!」

「……うぅ。だ、大丈夫だ……! 菜枝を守れて良かった」

「も、もぅ! 兄さんってば無茶しすぎです。でも、そういう守ってくれるところ好きです……」


 菜枝からぎゅっと抱きつかれ、俺は幸せを感じていた。そんな中、男子生徒が駆け寄ってきた。



「す、すみません。手が滑って……」

「いいよ。妹にケガはなかったし」

「えっ、神堂さんのお兄さんだったんですね」

「ああ、もういいから」



 男子生徒は申し訳なさそうに戻っていく。反省はしてくれているようだ。


 とにかく、ここは危険だ。授業は終わるまでは体育館の外で待機しているか。


 菜枝を連れ、誰もいない外へ。

 二人きりになると、菜枝はもじもじして顔を赤くした。



「……さっきはありがとうございます」

「妹を守るのは当然だからね。怪我がなくてよかった」

「兄さんこそ、怪我は?」


 顔に触れてくる菜枝。

 心配そうに見つめてくれる。

 細い指が俺の頬を撫でて、くすぐったいと同時に、ほわほわした。心が温かい。ずっとこうして二人きりで居られればいいのにな。


「大丈夫だ」

「本当に?」

「心配ないよ。まあ授業が終わるまで適当に話していよう」

「そうですね、そうしましょう。けど……」


「けど?」



 俺の手を取る菜枝は、そのまま胸に……って、うわっ!



「……したいです」


「…………ッ!」


「ここで兄さんと……えっちなこと」

「ば、馬鹿。誰かに見られたら大変だぞ」

「我慢できないんです。……わたし、ずっとムラムラしていて」


「ちょ、女の子がムラムラとか言うなって」

「だって……兄さんが優しくてカッコいいから……」



 涙目で訴えられ、俺は何だか無性にキュンキュンした。……どうしよう。

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