義妹の寝顔が可愛すぎる

 気持ちの良い朝を迎えた。

 起き上がると、やっぱり菜枝は眠っていた。ですよね。


 菜枝はとにかく朝が弱い。

 弱点と言ってもいい。


 どうしたら、この眠り姫を効果的に起こせるかな。俺は少し悪戯いたずらを考えてしまう。


「……やっぱり、キスとか」


 無防備に寝ている菜枝の顔を覗く。

 ……寝顔が可愛すぎて邪悪な心が浄化されていくようだった。俺は何を考えていたんだ。こんな天使の菜枝に悪戯とか、愚か者のすることだ。


 だがしかし、起こさねばならないのも事実。


 もう遅刻ギリギリは勘弁だ。


 だから、ここはキスで……。



「…………兄さん」

「……!!」



 どうやら寝言らしい。ビビった。

 俺は顔を離して、せめてもの思いで菜枝の頬を突く。ぷにぷにして柔らかい。ツヤツヤでモチモチの肌だ。


「起きろ、菜枝」

「……そ、そこはダメですぅ、兄さん……」


「なんの夢を見てるんだよ……!」


 まさかえっちな夢じゃないだろうな。まったく、破廉恥はれんちなんだから。

 仕方ない。せめて頭でもポンポンして朝食にするか。

 俺は、菜枝の頭を優しく撫でた。


 すると何故か菜枝は目を覚まし、眠たそうに起きた。……今ので起きるの!?


「おはようございます……」

「おはよう、菜枝。クセ毛が凄いぞ」


「うぅ……見ないでください。恥ずかしいのでっ」


「あとヨダレな」

「…………ぅ」


 直ぐ起きないせいだ。でも、俺はおかげで菜枝の色んな顔が見れて嬉しい。



 ――朝食を済ませ、家を出た。今日は時間に余裕がある。



 ビシッと髪や制服を整えて、菜枝が俺の前に立った。清々しい風がクリーム色の髪をなびかせ、幻想的に仕立て上げた。

 俺を見上げるように目線を送る菜枝。

 その瞳に俺だけを映し出していた。


「菜枝は今日も可愛いな」

「あ、ありがとうございます、兄さん。そ、そのぉ……」

「ん、どうした」

「手、手を繋いでも……いいですか」


「……あ、朝からレベル高いな。恋人みたいにってことだよな」

「そうです。わたし、兄さんと手を繋いで登校したいです」


「どうしても?」

「どうしてもです。ほら、昨日は姉さんに連れ去られましたし、その、わたし……兄さんとの関係をもう少し強化したいなって」


 そういえば、学校では男子が言い寄って来るって言っていたな。兄妹あるいは恋人のように接すれば、余計な虫がつかなくて済むか。


「菜枝が望むのなら、いいよ」

「嬉しいです……! では、その手を」


 がくがくぶるぶる震えながらも、菜枝は手を伸ばしてきた。緊張しすぎだが、俺も正直信じられないほどに緊張していた。


 夜はいつも、あんなえっちなことをしているのにな。


 外では、また違った緊張感があったのだ。



 菜枝はついに俺の――リボルバーに触れ、って、そこはアカン!!



「な、菜枝……そこは俺のアンチマテリアルライフル!!」

「え……きゃあっ!?」



 今になって気づく菜枝。どうやら、緊張のあまり俺のグレネードランチャーに触れてしまったようだ。


 顔を噴火させる菜枝は、走って行ってしまった。……お、おい!?



 置いていかれちゃった。



「……今日はどうしたんだ?」



 アパートの二階から降りると、菜枝が待っていた。耳まで真っ赤にして俯ている。……さっきの件が堪えたようだな。



「ご、ごめんなさい……」

「謝る必要はない。それより、学校へ行こう」



 今度は俺から菜枝の手を繋ぐ。



「…………嬉しい。兄さんのそういう優しいところが好きです」

「お、おう」



 こっちまで恥ずかしくなってきた。だが、俺は耐える。動揺はなるべく奥深くに閉まって、クールを装う。その方がカッコイイからな。



 学校に到着し、手は自然と離れていく。

 今日は活気があるように見えた。

 そんな中、背後から接近してくる気配が。


 振り向こうとすると、声が耳元で囁く。



「おはようございます、おにーさん」

「わっ! 五月女さん……お、俺の耳元で……」


「あはは、ごめんなさい」

「ちょっとビックリしたけど……ああ、そうだ。五月女さん、菜枝を頼むよ。変な男が寄ってきたら守って欲しい」


「あ~、菜枝ちゃんモテますからね。いいですよ」

「助かるよ。俺がいない間の警護を頼む。礼は弾むから」

「いいんですか! では、駅前にあるクレープでいいですよ~」

「それでいいなら」

「契約成立ですねっ」


 キラキラとした笑顔で同意する五月女。なんて、まぶしい……スマイル! けど、これで菜枝の身を少しは守れそうだ。



★★★

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