義妹の胸の中で
アラームで目を覚まし、起き上がろうとすると俺の胸の中にはまだ菜枝がいた。ぐっすり眠って
……可愛すぎかっ。
この天使の寝顔を写真に収めておきたいけれど、今は止そう。
俺は慎重に菜枝から離れていく。
よし、もうすぐ――だァ!?
いきなり顔を抱きかかえられ、俺は菜枝の胸の中へ。ぐりぐり押し込まれてしまい、柔らかいものに包まれた。こ、これは……! 寝惚けているようだが、危険度MAX。朝っぱらから、ヤバいって!
「な、菜枝……! 起きろ! 俺が死んじゃう!」
「……むにゃむにゃ」
――って、まだ寝てるし。
アラームとか結構、
体を揺すったりしてもダメだ。
そうか、菜枝はなかなか起きないタイプなんだな。
このままでは俺の身が持たない。
「菜枝、菜枝ってば」
「…………兄さん、好きぃ」
あぁ、もう……仕方ない。もうしばらく……こうしていよう。
~十分後~
「――やっべ、もう遅刻ギリギリだ! 菜枝、起きろ~~~!!!」
「ひゃうっ!? に、兄さん……? あれ、今日って学校ですよね」
「もう時間がヤバいぞ! 早く準備を」
「って、こんな時間じゃないですか! うそー…」
「何度も起こしたんだけどね。菜枝ってば、ぐっすりだったから」
「……うぅ、ごめんなさい。兄さんと抱き合って気持ち良かったから……」
「そ、それは嬉しいけどさ。それより早くしないと」
「そ、そうですね」
菜枝は慌てて部屋へ戻っていく。こりゃ、遅刻かなぁ。菜枝は結構準備が掛かるし――髪もボサボサだったからな。
俺はダイニングにある椅子に座って待っていた。
もうそろそろ家を出ないとマズイ。心配だったが、超ギリギリで菜枝が準備を整えてきた。おぉ、制服にカバンもばっちり。間に合ったな。たったの七分で済むとは。いつもニ十分は掛かってるのに。
「早いな」
「髪が整ってなくて……恥ずかしいです……」
「大丈夫だ、菜枝の可愛さはそれでも変わらない」
「そ、そうですかね。兄さんが良いならいいです!」
「俺基準なのか。まあいいけど」
「だらしないところを兄さんに見せるわけにはいきませんからねっ」
もう朝に見ちゃったけどね。
とは突っ込まないでおいた。
ともかく話している場合ではない。朝食は抜きにして、玄関へ。靴を履き替え――扉をきちんと施錠して家を出た。
走って学校を目指した。
息を切らせながら、なんとか校門前。
「……ふぅ、三分前だ」
「あ、危なかったです……はぁ、はぁ」
菜枝は呼吸が少し乱れて辛そうだった。そういえば、昔は運動が苦手だったな。けど、子供の頃に比べればマシになったように見えた。
「もう歩いても間に合う。ゆっくり行こう」
「ありがとうございます、兄さん」
「そういえば、走るの得意になったか? 昔はダメダメだったじゃん」
「はい。実は登山をするようになってから、体力がついたんです! なので、子供の頃よりは走れるようになったんですよ~」
そういう理由か。
海より山派だって言っていたな。登山かぁ……うん、夏休みに行ってみてもいいかも。けど、せっかく海が近いんだ。菜枝の水着姿を堪能したい気もする。
そんな他愛のない話をしながらも、校内へ。
「それじゃ、また昼に」
「待ってください、兄さん」
教室へ向かおうとすると、菜枝が呼び止めてきた。
「どうした、もう時間ないぞ」
「あの、姉さんのこと……」
「天笠さんか。大丈夫だ、安心してくれ。俺は菜枝しか興味ない」
「本当ですか! 良かったですっ」
菜枝は大喜びだった。
そうだ、俺は義妹一筋。今のこの幸せすぎる同棲生活を終わらせたくないし、誰にも邪魔はさせない。
あの天笠が姉だろうが関係ない。
菜枝は俺の妹だ。
今度こそ菜枝と別れ、俺は二階へ。
教室に到着し、そのまま席へ座ると天笠が視線を送ってきた。
「――――」
……狙われてるな、俺。
ホームルームが始まり、授業が淡々と進んでいく。相も変わらず退屈だ。
知識を適当に頭に詰め込み――二時限目まで終わった。
休み時間になると、天笠が俺の机の上に座った。ふとももが目の前だ……。
「神堂くん、キャトルミューティレーションされてみない?」
「……天笠さん、いきなりなんだい。キャトル……って、UFOの連れ去りのヤツだっけ」
「そうそう、キャトルミューティレーション。宇宙人が家畜とかを連れ去る行為だね」
「って、待ってくれ。天笠さんが俺を連れ去りたいってこと?」
「つまり、そういう意味だね」
「そんな電波みたいな誘い方してもダメだ」
「ちぇー。でもさ、昔よりもUFO騒ぎって無くなったよね。アレ、なんでだろう」
「知らないよ。ていうか、昔って天笠さん、何歳だよ」
「ぴちぴちの十六歳。……ちなみに、初体験はまだ」
「!?」
……よ、余計な情報を。
心臓がバクンとなってビビった。
「良い反応だね、神堂くん」
「う、うるさいな……俺をからかってるのか?」
「可愛がってるの。まあ、こうして構ってくれるの嬉しいし、少し情報をあげる」
「情報?」
「菜枝のことなんだけど――」
天笠の情報を耳にし、俺は焦った。
菜枝にそんなことが……!
★★★
面白い・続きが気になると思ったらで良いので『★★★』の評価をしてくださるとモチベーションがアップして助かります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます