いっぱい愛してください
この時間帯の男女ですることなんて……ひとつしかない。
あぁ……なんてこった。
これ、えっちなヤツだ。
「ま、待って。落ち着け、菜枝……俺たち、まだ高校生だぞ」
「学生の間にしておきたいんです」
「…………ッ!」
菜枝からそんな風に誘われるとは思わなかった。俺は、不覚にも脳内でイメージを膨らませてしまった。……まずい、我が下半身の悪魔が……目覚めようとしている。
「兄さんに、わたしの初めてを貰って欲しいんです」
「本気なのか?」
「はい、だって……わたしは兄さんのことが……」
ただでさえ真っ赤な顔が、もっと赤くなって破裂した。ボンッと音がしたぞ。菜枝のヤツ、無茶しすぎだ。手足だってブルブル震えているし、この感じ“初めて”というのは事実で間違いなさそうだ。
もし手慣れていたのなら、俺はとっくに襲われていただろう。
なのでちょっと安心した。
ふぅ……って、そんな場合ではない。
肝心なのはこれからだ。
俺は今、重大な局面を迎えていた。
このまま義理の妹をベッドへ押し倒し……致してしまうか。それとも、部屋に帰らせて大人しくしてもらうか。
ある意味、苦渋で究極の選択を迫られていた。
手汗が、全身の汗が
人生でこんな汗を
ここで俺は自問自答を始めた。
この
菜枝は
恐らく、気持ちは両想い。
なんの問題もない……けれど、まだたったの二日の関係。こんな数日も経たずに、満足な恋愛もせずに……してしまっていいのだろうか。
俺はどちらかと言えば、純愛を求めていたのだが。いや、でもこの機会を逃せば……きっと後悔する。
激しく天秤が揺れ動いて、俺は正気を失いかけていた。……まずい、脳がバグってきた。誰か俺の代わりにサイコロを振ってくれ。
――あぁ、でもあの天才物理学者・アインシュタインは“神はサイコロを振らない”とも言ったな。
そっか、この世は……サイコロの目のように気まぐれだ。
難しく考える必要はなかった。
ただ、己の気持ちに従えばいい。
この瞬間、選択権は俺に委ねられた。
なら、俺は……。
「……分かった。誰かに菜枝を取られるくらいなら……」
「嬉しいです、兄さん」
「ただ……俺、大人のゴムは持ち合わせていないんだ」
「兄さん、大人のゴムってなんですか?」
菜枝はポカーンとしていた。
ちょ……え。
そこ、体育の授業とかで習ったはずだけどなぁ?! いや、女子はそういうのは教えて貰わなかった、とか。それとも、単純に菜枝の知識不足か。
「それがないと……赤ちゃんできちゃうだろ」
「え、兄さんの……赤ちゃん。えへへ」
「えへへ、じゃないよ!? 出来ちゃったら大変だから……ほら、俺たちまだ学生だから」
「それじゃあ、えっちなこと出来ないんですか」
「む、無理だな。さすがにナシはリスクが高すぎると思う」
「でもぉ」
「残念だったな。せめてもっと準備してからじゃないと……心の準備とかも含めてね」
「うぅ、そうだったのですね。知らなかったです」
無理ではないが、危険すぎるのは確かだ。菜枝を大切に思えばこそ、無茶はできない。俺もかなり残念だが……今は耐えよう。
「そ……その代わりと言ってはなんだけど、一緒に寝るか?」
「いいですか、兄さん」
「それくらいはいいよ」
「やったー! 兄さんと寝るの好きなんです」
瞳を星のようにキラキラ輝かせる菜枝は、はしゃいで俺に抱きついてきた。子供かっ。
「仕方ないな。ほら、もう寝よう」
「……兄さん、抱き合いましょう。ほら、ぎゅ~っとして下さい」
対面で抱き合い、完全密着。
なんだこれ、これでも十分幸せじゃないか。
菜枝の抱き心地、凄く言い……。ぬいぐるみよりもフワフワしていて癒される。
「な、菜枝って……良い体してるな」
「そういう兄さんこそ、筋肉がたくましくて……えっちぃです」
俺の大胸筋に触れてくる菜枝。手つきがイヤらしい。でも、寝心地最高だ。今晩は、ぐっすり寝られそうだ。
「……菜枝、いつまでも俺の
「当然です。わたしは、兄さんの義妹ですから……いっぱい愛してください」
菜枝の小さな頭が俺の胸に埋まる。天国のように心地よく、俺は義妹の体温を感じながら――眠りの世界へ。
★★★
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