求めてくる義妹

 顔も体もマグマのように熱い。

 どうやら、俺はせたらしい。


 それと脈もおかしかった。

 菜枝を見るだけで頭が真っ白になって……何も考えられなくなった。どうしてしまったんだ、俺は。


 ぼうっとしながら、ショートパンツ姿の菜枝を眺める。……なんてこった。ただそこにいるだけなのに可愛い。あのふわふわの髪を撫でてみたい。


 そんな激しい衝動を抑えつつ、俺はマヨネーズに手を伸ばした。



「に、兄さん! ねりからし・・・・・のチューブを口にくわえて、どうしたんですか!」



 叫ぶ菜枝だが、俺は意識が朦朧もうろうとして自分のしている行為がよく分からなかった。……確か、俺はマヨネーズをかけようとして?


 なぜか口の中にマヨネーズが広がって……ん?


 ねりからし?



「からあああああああああああッッ!!!」



 獰猛どうもうなドラゴンのように火を噴く勢いで俺は飛び跳ねた。って、なんで“ねりからし”を口の中に放り込んでいるんだ、俺は!? 馬鹿か!?



「ど、どうしたのですか、兄さん!」


「んふぉええええくれェ!!」(←水をくれと言っている)


「お、お水ですね。分かりました」



 急いで蛇口を捻り、グラスに水を注ぐ菜枝。俺はグラス受け取り、口をゆすいだ。


 うぇ……死ぬかと思った。けれど、これで冷静になれた。俺は頭がどうかしていた。



「ありがとう、菜枝。さっぱりしたよ」

「本当にどうしたのですか?」

「……た、たいしたことはない。それより飯にしよう」



 料理をテーブルへ並べ、食事にする。

 椅子に座って俺は気持ちを切り替えた。今は食事を楽しもう。


「わぁ、なんだか本格的ですね。ご飯に豚汁、とんぺい焼きと唐揚げだなんて豪華です」

「お、菜枝ってばとんぺい焼きを知っているとはな」

「知ってますよ~。あの喫茶店で子供の頃に食べさせてもらって、それ以来好物なんです」


 その喫茶店とは、親父の経営するお店だ。そうだ、思い出した。俺は菜枝を連れていたっけな。懐かしい。エロ本事件もあの時か。


 懐かしい思い出に浸りながら“いただきます”をして菜枝と楽しい食事を進めていく。


「ああ、そうだ。テレビを見たければ小型プロジェクターで壁に映像を映し出せるから。部屋は暗くしないとだけど」


「そういえばテレビがないと思っていましたが……プロジェクターがあるんですか」

「ガジェット好きの爺ちゃんから貰ってね」

「凄いです。でも、兄さんとお話する方が楽しいので大丈夫です」



 思わず箸を止めた。

 俺と話す方が楽しいと言ってくれるとか、嬉しすぎかよッ。本当に良い妹を持った。そもそも元幼馴染でもあるから、俺も話しやすいし、一緒にいて楽しいと感じている。


 しかも、えっちだ。

 俺が求めなくとも、菜枝が求めてくれる。


 なんて嬉しい。

 永久とこしえの童帝・独身貴族になる予定だったが、その必要もなくなったかもしれない。



「俺もだよ。菜枝がいるだけで俺は幸せだ」

「……嬉しいです、兄さん」


 泣きそうになる菜枝は胸を押さえていた。嬉しそうだ。


「さあ、冷めないうちに食べよう」

「そうだ、あ~んしてあげますね」

「え?」


「とんぺい焼きをあ~んしてあげます」


 ぷるんぷるんのとんぺい焼きを箸で摘まむ菜枝。柔らかいから直ぐ食べないと落ちちゃう。俺は少し躊躇ためらいながらも、けれど菜枝のとんぺい焼きをいただいた。


 ……うまっ。


 そもそも、マヨネーズたっぷりのトロトロで美味いのに、更に味が増した気がした。こうして、あ~んしてもらうだけでこんなに味が変わるものなのか。知らなかった。


「美味すぎる」

「えへへ、良かったです」


 俺はなんて幸せ者なんだ……。



 ――食事を終え、菜枝と共に食器を片付けて……まったりタイム。各々の部屋で過ごし、就寝前。ラインが入った。



 菜枝:兄さんの部屋に行っていいですか?

 來:構わないよ


 少しして菜枝が扉を開けた。

 俺の部屋に入ってきて、もじもじしていた。動作がいちいち可愛い。


「どうした」

「兄さん……その、えっと……」

「と、とりあえず、隣に座ったらどうだ」

「はい……」


 俺はベッドから体を起こし、菜枝を迎えた。シャンプーの良い匂いがする。


「で、どうした。もう寝る時間だぞ」

「……したいです」


「ん? 声が小さくて聞こえなかった」


「したいんです」

「な、なにを?」


「…………そ、そんなの恥ずかしくて言えません。女の子の口から言わせないでください……うぅ」



 ――って、まさか!?

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