第35話 暴れるぞ

 ファイブスター5人(プラスセレネ様)とエターナルフォース5人(内一人気絶)はお互い対峙している。

 

「す、すごい……エターナルフォースはなかなか優秀なパーティーじゃない」

「ハリー様とベルンは忙しくてあまり協力的じゃないけど、ちゃんと5人集まれば最強だといわれてるもんな」

「それに比べたらファイブスターはまだできたてで」

「でも、この間のレッドドラゴンの件で猛活躍したんだよね?」


 周りからのつぶやき声を無視して俺はギースとアランを睨む。


 すると巨体のギースが俺を指差して話し始める。


「最近のお前が見せた行動には始末に負えないところがある!」

 

 言い終えて歯軋りするギース。


「何が始末に追えないんですか?」


 と、俺が問うと


「ただでさえ平民がセントラル魔法学園にいる事自体があり得ないだろ!」


 鼻息をあらげて怒鳴り散らすギースにジェフ様が答える、


「ギース様、平民がセントラル学園に入ってはならないルールなんて存在しませんけど?」


「平民は弱いからそもそも考慮に入れなかっただけだろうが!!」


 血管を浮き立たせて言うギース。

 

 そこへ、お馴染みの銀髪の美少女が現れる。


「ギースさん。それは違います」

「なに!?」


 いつしか俺の隣に来たルナ様が冷めきった目でギースを見つめ口を動かす。


「より強いものは評価され、より優れたものはそれ相応の待遇を受ける。セントラル魔法学園の創立理念です。はなから爵位とか階級などは関係ありません」


 やはり大人数が集まっているから目立つのか、ルナ様の隣には生徒会の役員数人も控えている。


 ギースはルナ様を見て鼻で高らかに笑う。


「あはは……あはははは!!実に面白いな。まあ、所詮暴れても俺には勝てない。


 醜い笑みを浮かべるギースに俺は深くため息をついてから言った。


「お言葉ですがギース様、レッドドラゴンにやられるようじゃ、俺には勝てません」

 

 もちろん忖度して卑屈になり、角を立てない方法も考えられる。


 だが、


 闘志に燃えている俺のパーティーメンバーを見ると、やっぱりここは譲れない。


 ここで俺が折れるのは、リナとエレナ様とギース様とミア様を馬鹿にするのと同じである。


 俺はギースを睨め付けた。


 すると彼は


「平民、俺はレッドドラゴンに負けてねーぞ」

「は?」

「俺は生き残った。レッドドラゴンの熱いお腹の中にいても、俺は傷ひとつなかったぞ!」

「いや、それは俺とリナが」




「……」

「なに睨んでだ。まさか……鋼を自由自在に操るレベル5の俺と一戦交えたいとでも言うのか?」

「……」

「お前、死ぬぞ」


 ギースは低い声音で言った。


「いいえ、俺は死にません。負けそうになったらちゃんと降伏しますので。


 俺の言葉にエターナルフォースの全員は震え上がる。


 ハリーが顔を歪ませながら言う。


「平民、後悔するよ」


 そして彼をフォローすべくギースが話す。


「ハリー様。俺だけで事足ります。ハリー様が手を汚す必要はありません。俺が躾けますので」

「頼んだよ。ギース」

「は!」


 彼らのやりとりを聞いて、俺はルナ様に言う。


「ルナ様、観戦席に防御魔法を張っていただけませんか」


 すると、ルナ様は俺の意図するところを察してくれたらしく頷く。


「はい。今回は魔法石を使い、観戦する生徒たちの安全を第一に考えるとしましょう」

「ありがとうございます。ルナ様」

「……別にカナトさんに感謝される筋合いはありません」


 彼女は頬を朱に染め顔を背ける。


 セレネ様はルナ様を見て目を細めて微かに笑った。


X X X


試合場


 ものすごい人だ。


 まあ、当然と言っちゃ当然だろう。


 だって、レベル5と平民の戦いだ。


 この組み合わせはなかなか見れない。


 どよめきが走る中


「はじめ!」


 審判が試合開始を告げる声が聞こえた。


 殺意に満ちたギース。


「鋼よ!最強の硬さとなりて顕現せよ!」


 と、唱えたギースは拳に非常に大きな鋼のナックルをつけて早速俺の方へ飛んできた。


 彼はもともと鍛えられた体だからスピードといい、重量感といい、人間離れしているように思える。


「もやしみたいなくそ雑魚!!お前は俺に敵わないんだああ!!貴族の代表として、お前を罰する!!」


「……」



 彼の腕はとても太いにもかかわらず鞭のように軽くて早い。


 俺は彼の拳の攻撃の数々を避けつつ、後ろに下がった。


「あはは!!逃げ足だけは早いな!!でも無駄だ!!はああああ!!」

「……」


 俺は避けることに集中する。


「あはは!!くたばれ!!なんでこの上流階級の世界に上がり込んできたんだ?大人しく畑とか耕しながら生きていけばいいだろ!!」

「……」

「お前みたいな奴は、一生頑張っても絶対俺みたいな貴族にはなれねーぞ。あはは!!この学校を卒業しても、お前らは平民のままだあああ!!!!」


 ギースは俺を攻撃しながら急に地面を力強く拳で叩いた。

 

 すると、けたたましい音と共に地面が割れ始める。


 すごい迫力だ。

 

 俺はジャンプし、彼との距離をとりながら埃を撒き散らす割れた地面を見る。


「あはははは!!みたか。これが俺とお前の力の差というものだ。俺が本気になれば、お前なんか……」





「それだけですか?こんなのがレベル5?あなたの本気を見せてください。あなたの最大の力を」




「……俺を舐めやがって!!!!本当に死んでもわかんないからなあ!!命乞いしてももう無駄だ!うあああああああ!!!!!」


 ギースは獣のようい雄叫びをあげる。


「お前は運がいいな。俺の本当の力を見ることができるなんて」

「御宅はいいです」





!!」





 ギースが手を伸ばして大声で叫ぶと、手の前から大きな魔法陣が現れた。


 そしてその魔法陣から数えきれないほどの尖った鋼の数々が現れ、その先端が例外なく俺の首を狙っていた。


「最強の鋼の雨に打たれ引き裂かれろ!!」


 彼の声と共に、尖った鋼たちは凄まじいスピードで俺へとやってくる。


 これがレベル5の威力か。


 確かにこのスキルがあれば、レッドドラゴンも倒せたかもしれない。

 

 彼の仰々しい態度は伊達じゃなかったわけか。


 エレナ様とて、この鋼の雨からは無傷のまま抜け出すことは難しそうだ。


 だが、

 








 数十秒間彼の放った鋼の雨が降り注ぐ。


「や、やべえ……レベル5の本気スキルまともに食らった……」

「あれは死んでるな」

「まあ、貴族に歯向かうからだよ」

「本当に身の程知らずだった」

「馬鹿だな。ギース様のおっしゃる通り、大人しく畑でも耕したら幸せな人生を過ごせたのに」


 有象無象の言葉が聞こえるというのは、ギースの攻撃が止まったということか。


 それを証明するかのごとく、もう鋼の音はしない。


 俺は劣化ウラン装甲を消した。それと同時に砂埃も鎮まり、ギースの姿が見え始める。


 もちろん、ギースからも観戦者たちからも俺の姿が見られるわけで。



「「なに!?!?!?」」


 全員無事な俺は見て驚愕するように言葉にならない声を出す。


 もちろん、ギースも



「あ、ありえない……俺のゲートオブスチールをまともに食らったのに……」



 戸惑うギース。


 観客席に座っているハリーも目を丸くしている。


 そんなハリーを睥睨してから俺はギースに向かって手を伸ばす。



「155mm砲塔……劣化ウラン弾」


 と、小声で言うと、自走砲に使われる砲塔が現れた。もちろん中には155mmの弾が装填してある。



「なんだ!?あのデカくて長いのは!?」

「……あの平民、一体なにをしようとしてるの?」

「ギース様……」

「負けるな!!ギース様!!あなたなら勝てる!!」

「私たち、ギース様を応援してあげようね!!」

「ああ!ギース様ならきっと悪い平民を懲らしめてあげることができる!」

「ギース様!」

「ギース様!」


 貴族は相変わらずギースを応援しているようだ。


 同じ穴の狢だな。

 

 俺は顔を顰めて大きくため息をつく。


 すると、ギースが



「ああ!!みんなありがとう!!俺は負けない!!絶対あの悪い平民に勝って、貴族の正義を証明して見せる!!」



「「わああああ!!!!」」



 ギースの答えに歓喜する貴族たち。そして間も無く俺が攻撃してくることを察知したギースは



「鋼シールド!!最大強度!!」


 彼は鋼の盾を召喚した


 そして自信満々に俺を見ては



「ふ」



 嘲笑う。


 そんな彼に向かって俺は


「発射!!」


 すると、155mmの砲塔から火が出て、劣化ウラン弾が目に見えないスピードで飛んでいく。


 そして、


 簡単にギースの盾を貫通した。



「っ!!!!ななななんだ!?貫通してるんだと!?」



 もちろん、弾頭の中には現代兵器のようにダメージを与えるものなどは入ってない。


 入れたら奴は重症をおう。


 一発の攻撃で重症を負うのは


 俺にとって非常に都合が悪い。


 


 これまで俺を助けてくれたファイブスターのメンバーのためにも、俺の後ろ盾になってくれたケルツ様とアルベルト様のためにも








 これからは









 






 俺は微かに口の端をあげる。






追記




 続き気になるなら★と♡よろ



 誤字直してるところです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る