第28話 !!

数日後


学園の近くにある大きな畑で



 ケルツ様の計らいで、俺とリナは尋問を受けることなく、王宮を出ることができた。


 確かに俺は第一王女であるレア様を助けたが、俺とリナは平民であるため、周りの貴族たちに警戒される恐れがあるとして、ケルツ様が機転を利かせてくれた形となった。

 

 実際、俺はセントラル魔法学園の貴族から相当嫌われている。


 自分の力が周りの貴族に知れ渡れば知れ渡るほど、良くないことばかりが起こる。


 ケルツ様の判断は正しい。だが、帰り際に見せた彼の意味深な表情はいまだに引っかかる。


 由無し事だといいのだが。


 んで、数日経った今、何をやっているのかというと、俺たちファイブスターは生徒会からクエストを受けて学校周辺の畑の近くで最近農民たちに膨大な被害を与えているをキングバードを狩っている。


「カナト!農作物に被害が出ないように防御膜をはってあるんだ!」

「ジェフ様、ありがとうございます!」


 ミア様とジェフ様の合同作業による防御膜。なので、現在狩ろうとしているキングバードが暴れても農作物に被害が及ぶことはない。


「コケコッコー!!!!」


 キングバードが興奮して畑で暴れ回った後、羽を力強く動かして飛び上がった。


 見た目だけだと完全に鶏なので俺は戸惑ったが急いで呪文を唱える。


「地対空ミサイル……」


 すると、少し離れたところからミサイルが召喚された。


 迷わず俺は










 そう大声で叫ぶと、ミサイルの後ろから火が出て、猛烈なスピードでキングバードのところへと突進。



コケコッ……コケッ!!コココケ!!な、なんだこれは……やば!!やばい!!!


 キングバードはわけのわからん鳴き声を発し続ける。


 しかし、ミサイルがキングバードに当たった瞬間、その鳴き声は断末魔へと変わってゆく。


コケエエエエエエ!!!!!いくううううう!!!!!


 あえなく落ちていくキングバードにエレナ様が待ってたと言わんばかりにジャンプして、剣を振る。


「はああああ!!」


 目で追うこともできない剣裁きに俺とリナとジェフ様とミア様はただただ驚くばかりだ。


 地対空ミサイルと言っても、パワーは結構抑えているので、キングバードは体の形を維持した状態でエレナ様に解体されてゆく。

 

 間も無くして、部位ごとに解体された鶏肉が畑の中に落ちた。


 鶏肉を見て満足げに微笑むエレナ様。


 レベル4以上じゃないと基本倒せないが、畑に被害を与えずに倒すとなると、最強レベルであるレベル5でも無理があるだろう。


 これもみんなで力を合わせた結果の現れだ。


 俺が達成感に握り拳を作りながらドヤ顔を浮かべていると、リナが俺の袖をぐいぐい引っ張ってきた。


「ん?」

「私……なんの役にも立ちませんでした……」

「……」


 涙ぐみながらリナが切ない表情を浮かべる。


 そういえば、妹は何もやってないんだね。


 別にいてくれるだけでも心強いというか心が落ち着くというのに、当の本人は納得してないらしい。


 そんな彼女に俺が慰めようとしたら、ミア様が早速リナのところへと小走りに歩いてくる。


「大丈夫ですよ。リナさんはヒーラーなので、いざとなったら私たちにひー……あぶっ!」


 ミア様の足が畑の土に飲み込まれてそのまま倒れてしまった。


 リナの表情は非常に明るくなった。


「ヒールかけてあげますよ♫」



X X X


 畑から少し離れたところにある巨大な樹の下で俺たちは昼食を絶賛堪能中である。


「もぐもぐ……はあ……やっぱりこのオニギリという料理は美味しい〜」

「あの、ジェフ様。俺のオニギリ勝手に食べないでください」

「あはは!やっぱり人の料理をつまみ食いするのが一番美味しいんだよね〜でへっ!」

「最低な人だ……」


 俺がドン引きしていると、ミア様がジェフ様と自分の弁当を俺に寄越してご自分もジェフ様に倣い俺のオニギリを取って食べる。


 ミア様も俺の作ったオニギリ、結構気に入ってるんだよな。


 最初は興味を示したものだから俺の作ったやつを分けてあげたが、以後、俺の弁当を見るたびに二人とも涎をたらすようになり、この始末である。


 まあ、俺も二人の弁当が食べられてラッキーだけどな。


 むしろ、二人の弁当の方が明らかにハイクォリティだ。


 ジェフ様の家もミア様の家も相当なお金持ちだと聞く。


 世知辛さに俺が微苦笑まじりに食べていると、ジェフ様が話し始める。


「それにしても、物騒な世の中になったものだな。まさか王室主催パーティーに乗り込んで、第一王女様を暗殺しようとするなんて……」


 すると、ミア様がジェフ様のフォローをする。


「そうですね。レア様は次期女王となるお方です。美しさと凛々しい性格と賢さを兼ね備えておられて、国内外の多くの方々から期待されていると聞いていますが……」

 

 ミア様がそう言って、リナの口を拭いてあげると、ジェフ様が俺にサムズアップして、興奮気味に語る。


「でも、カナトはそのレア様を守ってくれたんだよね〜ハリーは何もできなかった。キレて逃げ出すなんて、男として情けない。婚約者がそばにいたのに……」


 俺のオニギリを食いながら言うセリフじゃないと思いますけどね。ジェフ様…… 


 でも、彼の言葉は間違ってない気がする。


 しかし、妹は浮かない顔で下を向いていた。


「ハリーさんが急に怒って婚約者のセレネ様の様子も見ずに外を出た理由って、他にも何かありそうな……」


 リナの呟きにミア様が反応する。


「何かある?」


 だが、妹はごまかし笑いを浮かべる。


「なんでもありません!あはは!ご飯食べましょう!」


 と言うリナはものすごい勢いで食事を再開する。


 その様子を見て頬を緩めるエレナ様は俺に向けて口を開いた。


「カナト、今日の訓練のことだが」

「は、はい」

「お父様がカナトに話があるそうだ。だから今日はリナと二人でやる」

「……はい」


 それっきり、俺たちは昼ごはんを貪って行く、


 ジェフ様とミア様の弁当、めっちゃうまい……


 正直、弁当の食材の単価だけで考えるならば俺、めっちゃ得しかしてないな。


X X X

  

 キングバードの肉を村人に分けて、残りの肉を持って俺とリナとエレナ様はメイドであるハンナ様(ミア様の姉)が運転する馬車に乗ってフィーベル家に移動した。


 週に何回も見るこのゴージャスな大邸宅。


 ケルツ様は一体、俺になんの話があるというのか。


 エレナ様とリナが嬉しそうに訓練用闘技場へ足速に歩く姿を見送ってから、メイドのハンナ様に案内され、貴賓用の応接室の前にやってきた。


 ハンナ様は数回ノックして


「カナトさんがお見えです」


 数秒たつが返事はない。


 心配になったのか、ハンナ様が再び言う。


「カナトさんがお見えです」


 さらに数秒が経つ。


 すると、


 急に勢いよくドアが開け放たれた。


「なっ!」



 そこにいるのは、


 金髪をした中年の格好いい公爵様ではなく、


 ピンク色の髪をした二人の美少女だった。


 髪が長い第一王女のレア様は俺に冷たく威厳のある表情を、髪が比較的短い第二王女であるセレネ様は妖艶な表情を俺に向けてくる。


 それと同時に、リナ、エレナ様とはまた違う謎のいい香りが俺の鼻腔を優しく刺激した。





追記



ケルツ様なかなかやりおる


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