第26話 王室主催パーティーと事件

数日後


 俺は王室主催のパーティーの会場へとやってきた。


 このパーティーは年に一回しか開かれない大掛かりなイベントで、主に王族と上流貴族などが集まって親交を深めることを目的とする。

 

 なので、警備が厳しくて王室から認められたもの以外は絶対立ち入りができない。


 しかし、ケルツ様曰く、俺とリナは特別に許可が降りたとの事だった。


 最初は戸惑ったが、ケルツ様の話だと良からぬことを企んでいる団体があるとのことだった。俺に助けを求めるケルツ様の面子を潰すわけにもいかないから、俺は渋々引き受けた。


 だって、俺とリナの分まで学費払ってくれるし。


 危険だから妹は家にいるようにと言っておいたが、妹はとても頑固だった。普段、俺の話をちゃんと聞くいい子だが、この件に限って必死に自分を連れて行ってほしいと切実に訴えてきたので、仕方なく一緒に行動することに。


 だが、俺たちは平民だから主役ではなく、あくまでエレナ様に仕えるというポストである。


「す、すごいですねお兄様……」

「ああ。こんな贅沢なパーティー会場は初めてだ」


 床には高そうなペルシア絨毯みたいなものが敷かれており、数えきれないほどの最高級調度品がおいてある。


 そして、天井には魔法石によって温かい色を放ち続けるシャンデリアが。


 流れてくる音楽は心を落ち着かせており、上流貴族であることを証明するようなオシャレな服を着て人々が踊っている。


 メイド服を着ているリナと執事服を着ている俺。


 俺たちは使用人たちが控える隅っこでエレナ様を見ている。


 エレナ様は厳つい漢貴族たちと話し合っていた。


「懐かしいな。昔は一緒に帝国に赴いて魔王軍たちと激戦を繰り広げたものだが、今の私は学生だ」

「エレナ様の強さは王国一と言えるでしょう。一緒に戦場を駆け抜けたあの頃に戻りたい気分です!」

「強さと美しさを兼ね備えたエレナ様はまさしく人間国宝でございます!」

「あはは!よせ。私はただ一人の女だ」

「っ!エレナ様……その言い方だと好きな男性でもできましたか?」

「そ、そそそそれは……」

「この反応は……あの強いエレナ様が恋する乙女のような表情をしてんぞ!!!!!」


 急に漢のうち一人が大声で叫んだせいで、周りの厳つい漢貴族らがもっと集まってきた。


 エレナ様が困ったような顔をしながら適当に彼らをあしらっていると、妹が声をかけてくる。


「エレナ様の意中の男性は一体誰なんでしょうね〜」


 と、わざとらしく俺を挑発するような口調で言ってから肘で俺の脇を突いてくる。


「そんなのわかるわけないだろ。どっかの国の王子とかだったり」

「はあ……お兄様ったら……本当にお馬鹿さんなんだから」

「ん?どういうこと?」


 俺が小首を傾げて返事を求めると、妹は深々とため息をつく。だが、やがて俺の腕にくっついては


「今は、鈍感でいてくださいね」


 そう言って俺の腕に自分の頭を擦ってきた。


 すると、パーティー会場の大きな扉から誰かが現れる。


 ピンク色の髪をした美少女が二人。


 一人は肩まで届く短い髪をしており、片方は長い髪の持ち主。おそらく長い方が姉だろう。どちらも綺麗なドレスを着ている。


「第一王女のレア様と第二女王のセレネ様だ」

「美しい……俺みたいな使用人があの二方を直接見る日がくるなんて……」

「第一王女様は、親族の方と婚約されてて、第二王女様はハリー様と婚約なさっているんだよね」

「憧れちゃうわ……」


 俺の隣にいた使用人たちが二人を見て感想を漏らした。


 だが、俺は顔を顰める。


 気に食わない男の名前が出たことと、その男が今、婚約者である第二女王のセレネ様に話しかけているから。


 何を話しているのかはわからんが、彼は王女二人と楽しそうに談話を交わしている。


 しばしたつと、話を終えたハリーが周りを見渡し、





 俺とばったり目があった。


 彼は目を細めて、足早に俺のところへやってくる。


「どこかで見覚えがあると思ったら、セントラル魔法学園の平民だったな」

「久しぶりですね」

「ああ。久しぶり。妹ちゃんも久しぶりね」

「……」


 リナはハリーの挨拶を無視して、俺の後ろに隠れて彼を睨む。


「あはは、リナちゃんだっけ?公爵家の僕の挨拶を無視するなんて、ダメじゃない。おい、妹の躾、ちゃんとしてる?」


 ハリーが目を細めて俺に訊ねた。


「いろんな方に助けていただいています」

「そう。もし、助けが必要なら言ってよね。を呼んであげるから」

「一生そんなことはありませんので、ご安心を」


 俺は冷めた表情でハリーを睨みながら言った。


 すると、ハリーは俺に近づいて





「あまり調子乗るんじゃねーよ。僕はになる予定なんでね。言葉ひとつで君と君の家族を全部殺すことだって出来る。リナちゃんは生かしておいてあげるけど。平民の中でこんなに可愛くて綺麗な女の子はいないから、色々もらわないとね」


 俺は握り拳を作り、小声で反駁した。


「ハリー様」

「はあ?」

「あなたは言葉で人を殺せますが、俺は力で


 俺の言葉を聞いたハリーは顔を歪ませた。


「身の程知らずがああああ!!!!!!」


 彼が大声で叫んで俺の胸ぐらを掴んできた。


 それと同時に、


「一体何をやっている!!!!!」


 向こうでハリーと似た中年貴族がケルツ様に向けてハリーより大きな声を出してきた。


 ケルツ様は冷静に答える。


「なんでキレておるのかさっぱりわかりませんな」

「あなたが奴隷にお金をばら撒いている噂が広まったせいで、いろんな商会や貴族たちが所有している奴隷はろくに働いきもしないんですよ!」

「どうやらあなたは誤解をしているようだな」

「何!?」


 ハリーに似た中年貴族は戸惑ったような表情を浮かべる。


「父上……」


 ハリーはそう言って、俺を離し、自分の父に視線を送ってくる。


 ケルツ様は俺たちの視線なんか気にする風もなく淡々と続ける。


「俺はちゃんと働いている奴隷たちに給料とボーナスという形でお金を渡している。決してばらまきではありませんぞ。優秀な奴隷にはそれ相応の待遇をしてあげないとな」


 だが、ハリーの父は一歩も引かない。


「そんな馬鹿な話がどこにあるっていうんですか!?奴隷はモノです!使い潰して死んだら、また新しい奴隷を買えば済む話だ!」

「何も与えられずにこき使われる奴隷にできる仕事ってたかがしれておる」

「はあ?」

「わかっているでしょ。俺の奴隷たちが優れていることくらい」

「……」

「無能すぎる奴隷の寄せ集めはなんの役にもたちませぬぞ。やる気を出せるように工夫しなくてはな。あなたも頑張っている奴隷たちにお金を出してやればいかがでしょう。そしたら、きっと潰れる寸前の貴方のパーシー商会が俺が経営するフィーベル商会をも上回る成長を成し遂げることも出来よう」


 ケルツ様の煽るような口調にハリーの父は怒り狂った顔で










 醜い表情で鼻息を荒げるハリーの父。


 彼は続ける。


「さっきも言ったように、奴隷はモノ!だからあいつらを虐待して恐怖を植え付けて死ぬまで酷使させる方が効率がいいんですよ!代わりはいくらでもあるのに、なんでお金を出す必要があるんですかああ!!!」


 ハリーの父の真顔を見て、ケルツ様は破顔一笑。


「ふふ……あはは……あははははははは!!!!」

「何がおかしいんだ!!」

「ヘンリーさん」

「はあ?」

「時代が変わろうとしていますぞ。その流れに乗り遅れたら、滅びて当然」



「何をおっしゃる。



 ハリーの父であるヘンリーが叫ぶ。


 第一王女のレア様と第二女王のセレネ様含むすべての人が、ケルツ様とヘンリーを見て、冷や汗をかいている。


 その瞬間


 窓から大きな爆発が起きた。


「「っ!!!!」」


 その爆発の威力があまりにも強すぎて、パーティー会場内にあるテーブルや飾りや椅子などを全て吹き飛ばした。


「な、なんだ!?」

「爆発!?」

「王宮のパーティー会場だぞ!あり得ない!」

「一体何がどうなってんだ!」

 

 煙に包まれたパーティー会場で貴族と使用人たちが戸惑う中、王女様二人も当惑した様子であちこち目を見やる。


 そこへ、




 魔力を帯びた大きな斧みたいな武器が第一王女のレア様の首に向かって飛んできた。





追記



お待たせだぜ


これから派手にやるぜ


フォローと★と♡くれると喜ぶぜ








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る