第13話 つよつよモンスターを狩るのが性に合うカナト
数日後
とある荒野で
俺は今国境を超えたところにある荒野でつよつよモンスターを絶賛退治中である。
「キイイイイウ!!」
上からは巨大なドラゴンが俺めがけて猛烈な勢いで飛んできている。このドラゴンは硬い鱗に包まれたアイアンドラゴン。
火を吹いたり攻撃魔法をかけてくることはないが、エレナ様ほどの攻撃力じゃないと倒せないいわゆる強つよモンスターだ。
鋭くて丈夫な爪でもって俺を殺しにかかるアイアンドラゴンの顔を見ていると、ふとベルンの奴の顔が浮かんでくる。
「……あの時はダメだったが、今は誰もいないし」
俺はクスッと笑って言う。
「今日は12インチのやつで行こうか」
そう呟いて俺は魔力を空中に向かって注ぎ込む。
すると、艦砲のようなものが一つできた。
そして、
「砲弾……」
俺の魔力によって攻撃力が上がった巨大な砲弾が12インチ(約30cmほど)の砲の中に入る。
そして
「発射!!!!」
そう大声で叫ぶと12インチの巨大な砲は火を放ち大きな砲弾がものすごいスピードでアイアンドラゴンに向い、
「グアアアアア!!」
ドラゴンが悲鳴をあげると同時に、衝撃波によって砂埃が大地を舞い、地面にかすかな揺れが生じた。
数秒後、巨大な穴の開いたアイアンドラゴンは力なく落ちる。
俺はその死体を見て数日前のことを思い出すのだ。
『特別休暇?』
『そうです』
『なぜですか?』
『これまでここセントラル魔法学園での決闘試合におけるルールは、その全てが貴族を想定したものでした』
『は、はい……』
確かにそうだ。ここに入学した平民はリナが初めてだから。
『リナさんは女の子ですから、決闘試合は一度も行われたことはありませんでしたが、さっきのあなたとベルンさんの闘いを見て、いくつかルールを作ろうと思ったわけです』
『ちなみにどんなルールですか』
俺が問うと、ルナ様が怒りを抑えるように唇を噛み締めてから言う。
『平民を侮辱する行為を禁ずると』
『……』
彼女は真面目な表情で続ける。
『ベルンさんは貴族の恥です。いくら平民でも妹がいる前で兄であるあなたにひどいことを言っただけでなく、みんなが見ている前でみっともない姿を曝け出して……』
一旦切って彼女は目を細めて殺気を剥き出しにしてから言う。
『私の手を煩わせたから』
『っ!』
漂ってくる恐ろしい雰囲気と美しい外観。そのギャップが生み出すオーラに俺は圧倒されていた。
『罰がなくても、ベルンさんにはこれからとても辛い学校生活が待っていることでしょ』
『……』
『とにかくルールを作るまで休んでください。また似たようなことが起きないとも限りませんし』
強圧的な態度だ。
これはきっとルナ様だけが持ち得る強さの現れだろう。
だからこそ俺も自分の意見を貫き通すべきだ。
『別にルールを作ったりするのは構いませんけど一つ申し上げますと……』
と言って、俺は生徒会室を見回した。
銀髪の綺麗なルナ様の他に人が数人。
俺に興味を示すものもいれば、警戒するものもいる。
『多分無駄だと思います。だからリナにちょっかい出すやつがいれば、俺はまた同じことをしますから。誰であろうが』
ルナ様の綺麗な瞳を見て俺は言葉を発した。
すると、彼女は若干動揺するように目を逸らす。
『おい平民!!!無礼だぞ!!!!ルナ様はレノックス公爵家の長女であられるんだ!俺たち貴族も君みたいなことをいうのなんて許されてないぞ!!!!!!』
生徒会の幹部らしき男が突っ込んでくるが
『やめなさい。私はうるさい人は嫌いですよ』
『っ!ももも、申し訳ございません』
とまあ、こんな感じで特別休暇をもらったわけだが……
「謹慎処分みたいなもんだろこれは……」
ため息混じりに言ってみるが、ルナ様を一方的に攻めるわけにもいくまい。彼女も彼女なりに苦悩を抱えているだろう。
ルール作らないといけないし。
不本意ではあるが、俺とリナの存在がルナ様を選択の岐路に立たせたのは事実だ。
ルナ様率いる生徒会はこれから試されることになるだろう。
平民と貴族との付き合い方。
「そんなの、考えるだけ無駄か」
俺は周りを見渡す。
すると広々としている平野が俺の目に入ってきた。
ここは未開の地だ。
どの国の領土でもない。
そもそもレベル5じゃないと簡単に倒せないモンスターがここはうじゃうじゃ湧いてくるのだ。
だから俺が勝手に暴れてもいい数少ない場所の一つである。
俺は死んだアイアンドラゴンの尻尾のところに行き、肉を千切った。
「アイアンドラゴンは若鶏の味がするんだよな。よし!今日はリナの為に唐揚げでも作ろうか!」
俺が笑顔を浮かべていると、今度は大王猪が地面を蹴りながら俺を睨んでくる。
「唐揚げに豚汁も悪くないな」
どうやら俺はこっそりつよつよモンスターを狩るのが性に合うらしい。
X X X
俺は召喚した軍用オートバイに乗って荒野を走っている。
馬なんかと比べ物にならないほどのスピードが心地よく俺の頬を撫でる。ボロすぎる家に行って、料理の準備をすればリナが帰ってくるのだろう。
『お兄様!!私はお兄様と一緒にいる時が一番幸せです!!いつも私のために学費を稼いで、美味しい料理を作って、慰めてくれるお兄様が私は大好きです!!!!ちなみにあんな気持ち悪いベルンという男性は大っ嫌いですから!!!』
数日前にリナが発した言葉が風に乗ってこだまする気がした。
「ふ」
俺の口角は吊り上がった。
X X X
ボロすぎる家の前
「なっ」
俺の家の前には見慣れた二人と見慣れぬ一人がいた。
「カナト君!」
「ケルツ様とハンナ様!?」
そう。
エレナ様の父であるケルツ公爵様とミア様の姉であるハンナ様
そして、謎の金髪男性も。
「いや〜君がカナト君かい?あははは!やっぱり象牙で作った彫刻より実物の方がいいね〜一緒に踊ってみないかい?」
ああ
ジェフ様の父だな。
遺伝子濃すぎるだろこれは。
俺があははと笑いながら3人に近づいて問う。
「いやいや、こんなむさ苦しいところにわざわざおでましくださいまして……」
「カナト君、そんなことはもういい」
「え?」
予期せぬケルツ様の言葉に俺が小首を傾げると、ケルツ様は俺が担いでいるアイアンドラゴンの尻尾肉と大王猪肉を一瞥したのち、とても真面目な顔で話す。
「極めて重要な話がある。だから中で話がしたい」
青い瞳の周りには少し小皺があるが、貫禄があってえもいわれぬ厳かさがあった。
隣にいるハンナさんも、その後ろにいるジェフ様の父も真剣な眼差しを向けてきた。
すると、屋根の一部が崩れ落ちて俺たちの頭の上に降りかかり、俺たちは埃を被った。
追記
次回は重要
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