第7話 試験と騎士
ケルツ様の取り計らいにより俺は早速面接を受けた。
結果としてはケルツ様の後押しがあったおかげで変なことは聞かれていない。だが、面接官は俺を警戒しているようであった。
当然のことで、平民の兄妹揃ってここ王国随一のセントラル魔法学園で勉学に励むわけだ。
掃除係や寮母、料理師などはここで働くことが許されるが、学生は最低でも伯爵級の家柄じゃないと絶対合格できない。
面接が終わったら早速筆記試験だ。
まあ、既に口裏を合わせたおかえげで合格ということにはなっているが、俺の実力を判定するためにいくつか試験が行われるわけだ。
だが、
「これ、簡単すぎるだろ……」
前にも言ったようにこの世界の数学、科学の学問レベルは中学ほどだ。バリバリ数学教えていた頃の知識もまるごと引き継いでいる俺にとってこれは朝飯前すぎる。
「ていうかこの問題、円周率が3.15であることを証明しろって……そもそも問題自体が間違いじゃん」
俺は苦笑いを浮かべながら答えを書いてゆく。
筆記試験の次は実技試験である。
なので俺はセントラル学園の競技場にて学園所属の騎士と相対している。彼は学生じゃなく教職員らしい。
だが、
一つ気になるのは、殺気を漂わせて俺を睨んでいやがる。
「ほお、お前がリナ君の兄かね」
「そうですが」
「あまり調子に乗るんじゃねよ。平民が」
と、俺を見下す騎士。
初対面だというのに無礼なやつだが、俺はなぜ彼が冷たい態度を取るのか、すぐ理解できた。
「その首にある傷……まさか」
「自惚れんなって言ったろ!!あれはまぐれだったんだ!それを今日証明してやる」
「……」
一体誰が騎士の首に傷をつけたのか。
いうまでもあるまい。
俺の妹だ。
一年前の入学実技テストで俺の妹に負けそうになった彼が暴走して、結局リナは彼に一生消えない傷を負わせた。おまけに彼は俺の妹に完全敗北。
つまり俺たちを相当恨んでいることだろう。
審判を務めてくれる人が俺ちを見て勢いよく言う。
「では始め!」
号令がなった途端、騎士が俺に剣を向けてやってくる。もちろん、人を殺せる武器じゃないけど、当たったらすごく痛そうだ。
さすがセントラル魔法学園所属の騎士。
動きもさることながら、何より、
俺に対する殺気が凄まじかった。
『貴様の妹のせいで、ずっと平民に負けた騎士というレッテルを貼り付けられたんだ』
と言いたげな視線を向けながら、怒りに身を任せて剣を振りまくっている。
風を切る音が俺の耳を打ち、俺がそれを避けるたびに剣士は顔を歪ませ暇なんか与えまいと、何かを呟く。
「スピードアップ!」
すると急に騎士の身体能力が急激に上がって、動きが2倍も早くなる。
「っ!」
急に攻撃速度が上がったことによって俺は、一旦退避。
「あはは……平民風情が……身の程弁えろ!俺の首に傷をつけたその罪は、ちゃんと償わせてもらうから!」
あれは明らかにヘイトスピーチな感がするが、判定するものと審判は異様に静かだ。むしろ審査員すらも目を細めて俺を睨みつけている。
いくらケルツ様が面倒を見てくれているとはいえ、平民を見下す凝り固まった思考までは変えることができないだろう。
荒い息遣い。そして、自分が思い描いた復習を果たすことによってもたらされる快楽を感じようとする卑屈な笑い。
この嫌な雰囲気を察知した俺は気がつくのだ。
俺はこの学園の関係者らによって試されていると。
騎士が俺の首に向かって剣を突き刺そうとする。このスピードでまともに食らったら最悪死に至る可能性すらあった。
なので俺はその剣を素手で掴んで。
「なっ素手で掴んだと!?」
そして俺は空かさず彼のお腹に蹴りを入れた。
「ヴああ!!!」
100メートルほど飛ばされた騎士はお腹を抑えて咳をした。
「クッソ!!あ!ゲホゲホ!!殺してやる……王立騎士団でいい成績を収めた俺が、平民なんかに……ああああ!!!!」
騎士は自分の持っている剣を捨てて、魔法で新たな剣を召喚する。あの剣は間違いなく俺を殺すためだけに召喚したように鋭く、剣先がずっと俺の首を狙っている。
こいつはリナに負けた。
だとしたら、リナの兄である俺が勝っても
全然問題ない。
が、
「試合終了!殺傷行為のための戦いはセントラル魔法学園の規則によって固く禁じられている。よって、カナトの勝利だ」
審判の宣言に納得行くはずもない騎士は
「クッソ!!!!!!!!!死ね!!!」
そのまま突撃。
俺は小さく唱える。
「散弾銃……」
すると、改造された散弾銃が現れ、俺は早速それを構えて
騎士に向かって発射する。
彼は今度は200メートルほど飛んでそのまま気を失った。
X X X
結果的に実技試験において俺は満点をもらった。あと面接官と学校関係者は俺に謝った。関係者らはケルツ様を相当意識しているようであった。
全ての試験が終わった俺が職員室のソファーで待っていると、とても気障ったらしいタイプの先生がやってきて俺の向かい側に座る。
「カナト君、結果が出た」
「は、はい」
俺をどのクラスに配属させるのかおそらく彼が教えるだろう。
一応リナに恥をかかせぬために、努力はしたつもりだ。エレナ様が所属している最上級クラスに入るつもりでやってたけどな。上級クラスでも構わん。
そう考えながら先生を見ていると、彼は突然俺に人指差しを立てて見下すようにいう。
「君は最下位クラスだ!!!!」
「え?」
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