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「量産品も一応見てきましたが、気に入らなくて。あれは持ち手が硬いし、形が美しくない」


「........なかなかわかるじゃないか」


「どうも」



男性は青い瞳をキラリと光らせ、初めて私の顔を真っ直ぐに見た。何故かハッとした表情になったが、直後には無表情に戻っていた。



「叔父さん、お願い。ミミお姉ちゃんにナイフをあげてほしいの」


「いや........でもそれは失敗作だから........」



と言いつつ、彼の視線は私の足元に落ちた。そしてゆっくりと膝から腰、上半身へと上がっていき、また顔をチラリと見て目を逸らした。........なるほど、そういうことか。呆れた。



「マルト」少女頭に手を置き、ゆっくり撫でた。「ちょっと外で待っててもらえる?頑張って説得してみるから」



「わかった!お姉ちゃん頑張ってね!」



真剣に私を見上げるマルトの姿に、少し心が痛んだ。だが、私はこのナイフが欲しいのだ。しっかりした理由はないが、とにかくこのナイフに心惹かれる、それだけなのだ。

マルトが玄関から出たあと、私は戸の鍵を閉めた。男性を振り返ると、彼はオドオドした様子で椅子から立ち上がる所だった。



「あの、申し訳ない。別にそういうつもりでは無いのだが、ーー3年前に妻を亡くして以来、その、全く」


「あなたが元々邪な人ではないのはわかります。安心してください、私があなたを都合よく利用しようとしてるだけです。あなたは悪くない」



後ずさる男性との距離を詰めながら、私はシャツのボタンを外していった。彼が息を飲むのがわかった。


「どうぞ。好きにしていただいて構いませんので、あのナイフを私にください」


「いや、もういい、ナイフならあげるから。だからそんなことしないでくれ」



赤らめた顔を背ける彼の目には、涙が浮かんでいるように見えた。



「ナイフは戴きます。でも、あなたが悲しそうな顔をしてるので、どうぞ」


「................」



と、両手を広げてみせた。ボタンを全て外したシャツの下は、薄い布を胸に巻いて隠しているだけで他は何も着けていない。男性は顔を背けながらも、視線はしっかりと胸元を見ていた。



「私が奥さんに似てるんですね」


「ああ。........少しだけ」



そうか。やはりこの人はいい人だ。きっと、私のような汚い人間が近寄ってはならないほどに、いい人だ。マルトも、マルトの両親も、この町の人達も。........ーーきっとクロスも。

男性は私に亡き妻の面影を見て、諦めていた感情と欲望が再燃した。私はそれを自分の目的のために利用するのだ。


そんなことで、私の心は傷つかない。全然平気だ。












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