第5話 それでも私は浮気をしない

私は学生時代からモテた方だ、自分で言うのもなんだが、一年で20人以上には告白されたことがある、その中で私が選んだのは今の旦那だった。どこがいい?って聞かれたらそれはそれでわからない、フィーリングというやつだ、私はこの人と一緒になるんだろうなぁと思っていたら、付き合って2年が経つ頃旦那から「そろそろ結婚しないか」と言われ指輪をもらった。私は即返事をしたが、半年経って旦那が浮気をした、私が買い物から帰るときに誰かわからない女と手を繋いで歩いていた、旦那は私が見ていたことを知る由もなく、私は興味本位で後ついていったら、案の定ホテルに入って行った。あの旦那でも浮気はできるのかと関心したが、いい気持ちはしたものではなかったが【離婚】という二文字は不思議と頭に浮かんでこなかった。


私も自由に浮気をしようかとマッチングアプリを開いてみたが、ピンっと来る人がいなかった。私は浮気をされても旦那のことが好きなのかもしれない、何をされても旦那と別れることはないのかもしれないと、私は思ったが旦那の帰りが日に日に遅くなって行った。旦那は「残業が忙しくて」と言い訳を繰り返すが私は、旦那が浮気をしてるのを知っているので、そんな言い訳しかできないのかと心のなかで嘲笑った。

「今日はどこのホテルで残業だったの?」


「なんの話だ?」と旦那は挙動不審となった。旦那は私が浮気を知っていることをまだしらない。今日はジャブを打つくらいにしてあげようと思い、私からは何も言わなかったが、旦那の挙動不審は収まらなかった。

その後旦那の残業は一週間なく、定時には家に帰ってきていたが浮気はこれで終わってないと、私は思った。私は旦那の浮気の言い訳を楽しみにしてる部分がある、浮気された人のブログとかを見ると、【絶対に許せない】とかが多いが私はもっと堂々と浮気をしてほしかった。隠れて浮気をするくらいなら堂々とすればいいと思っている。隠れてするくらいなら浮気なんかしなければ良いというのが私の持論だ。


後日再び、旦那が女性と手を繋いでる姿を見つけ、面白そうなので二人の目の前に出て「あきらくん、彼女出来たの?」と聞くと旦那はビクビクと震えだした、女性の方は何が起きたのか全くわかっていない様子だった。旦那は路上の真ん中で土下座をして許しをこいえていた。

「許してくれ」と半泣きで私に許しを請いだが浮気相手の女性は「この人誰?」と聞いてきた、女性は旦那が結婚をしていることを知らなかった。「私はこの人の奥さんです」というと驚愕な顔をした、「この人結婚してたんですか?」と私に聞くので大きく頷いた、すると女性は「私結婚してるの知らなかったんです」「マッチングアプリで知り合って、指輪もしてなかったし」と言い訳をする。

「知らなかったならしょうがないよね」と笑顔で返すと女性は逃げるように去っていった。旦那はこの修羅場をどう乗り越えるか考えているはずだ、旦那はまだ路上で土下座をしたまま許しを請いでるが、道行く人に見られて恥ずかしいのでそろそろ辞めてほしかった。「恥ずかしいから早く立ってくれないかな?」というと旦那は半べそをかきながら自宅に戻った、自宅に戻った旦那は何も言い訳はしてこなかった。

ただ「ごめんなさい」の一言を永遠に言い続けた。私はその言葉に飽きていた、そんな言葉よりどんな浮気をしていたのかを知りたかったが旦那はそれを話してくれる気はない、私が「どんなことしたの?」「どこ行ったの?」と聞いても「ごめんなさい」しか言わずに面白みが無かったので、これ以上話すのを辞めた。すると旦那が「離婚するのか?」と申し訳無さそうに聞いてくるので「なんで離婚するの?したいの?」と聞いたら旦那は首を横に振った。こんな面白い生活を辞めるわけがない、いつかまた旦那が浮気をすることを私は願っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る