第13話
―― 不思議だ、やはり身体が動く。
ヤコウはあの森でゴブリン達を相手にしていた時より遥かに動く身体に、今ならどんな攻撃も当たる気がしない様な万能感に似た何かに身を任せていた。次は何処に攻撃が来る、何処に攻撃をすれば届く、それらがまるで手に取る様に分かる気がした。
自分が今出来る最大の手は何かと考えるとふと一つの事がヤコウの頭に浮かぶ。
―― そう……か、分かった少し待っていろ。
頭に響く声、それと言葉を交わすたび、早く早くと気持ちがはやる。
―― そうかそうか、分かった、あぁ、そうだな。
はやる気持ちを抑えながら、ひびく声と言葉を交わす。
―― トウカなんて名はどうだろう? …… どうした? あぁ、そうか気に入ってくれたか。
瞬間、フッと身体から何かが抜け落ちた、先程までにあった万能感は既になく、それが形をつくる。
名前は呪いだ。
この世にうまれ初めてその身にうける呪い。
そのものを縛る最初の呪い。
そしてなにより初めに受ける祝福。
ヤコウは名を付け、それは名を受け入れた。
それはそれを現世へと縛る呪い、現世へと生まれいづる為の祝福。
ドートレスの攻撃を跳ねる様に避け、地面に着地。すっと腕を伸ばしその名を呼ぶ。
「
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』ー玉藻前ー
瑯邪代酔に古今事物考を引て云、殷の妲己は狐の精なりと云々
その精本朝にわたりて玉藻前となり、帝王のおそばをけがせしとなん
すべて淫声美色の人を惑わす事、狐狸よりもはなはだし
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