第10話

 それはエヴァがヤコウに身体を触れるかどうかの距離まで寄せた時だった。その瞬間に一人の男、いや漢が立ち上がった。


それは義の為、正義の為、平和の為、そんな陳腐なモノの為ではないかった。


そこにあるのは漢の矜持。

もしここに悪魔がいればそっと耳打ちしただろう「力が欲しいか?」と。


しかしこの場にそんなものは存在しない。

しかしもっと巨大な力がそこにはある、それは……


人の思い


彼の背に背負うそれはとても重く強大だ。

もし膝をついてしまったらその重さに立ち上がれないだろう。

それでも彼は行くのだ、いや、彼等は。

一人の漢が見せた背中、そしてその背に惹かれた男達も立ち上がる。

それは一時の幻か、儚い夢、幻想か。

男が漢に惹かれ漢となる。

その漢の背にしかと見た嫉妬と言う名の登りドラゴン。

さぁいこうか、この背に宿る嫉妬と共に。

さぁいこうか、この嫉妬の翼と共に。

さぁいこうか、この漏れ出さん嫉妬の炎を纏ながら。

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